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基礎知識

いざという時に備えて知っておきたいこと

2013.4.1

文:じんラボスタッフ

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透析療法は、断水・停電などでは維持できない 災害にきわめて弱い治療です。

命をつなぐ水と電気

血液透析には、どれくらいの水道水と電気が必要なのでしょうか?
透析液を精製するには、RO(逆浸透)膜、活性炭、各種フィルターなどを用いて清浄化した水道水が必要です。標準的な治療では、1回に4時間の透析を行います。毎分500mLの透析液を使用するので、およそ120Lの水道水が1人あたり1回の透析に必要です。

0.5L/分 × 60分 × 4時間 = 120L

当然透析液以外にも、配管の洗浄や治療の準備に水道水が必要です。
そして、透析液を精製したり、透析液を患者さんのところまで運搬したり、患者さんの血液を体外循環させて透析したりと、あらゆる作業に電気が使われます。手術室や透析室を持つ病院では自家発電設備の設置が義務付けられていますが、診療所において設置義務はありません。テナントビル内の診療所では自前で設置することは事実上不可能です。

これらのことから、災害によってインフラに被害が生じることを想定すると、大量の水道水と電気を要し、1〜2日おきに必要な血液透析を継続して確実に受け続けることができるのかどうか、たちまち大きな不安が立ち込めます。通信手段が断たれると、透析施設間の情報交換ができず、患者自身が孤立無援状態になりかねません。

予定の透析が受けられないと、水分や塩分、尿毒素が体内に蓄積し、電解質に異常が起こります。食事制限に沿った食べ物も入手困難になるでしょう。肺水腫、高血圧、心不全、高カリウム血症による不整脈など、命にかかわることも出てきます。

過去の災害時の状況を見てみましょう。

過去の災害時の透析医療状況①:2011年3月11日の東日本大震災

大きな被害を受けた宮城、岩手、福島3県において、特に被害が大きかった太平洋岸では、一部の透析施設で倒壊や流出・浸水で治療が不可能となり、これを免れた施設でも電力と水の供給は断たれ、透析医療の実施は困難となった。

宮城県の状況
震災翌日の朝9時、透析可能な病床は震災前のわずか14%
宮城県内透析施設53施設の被害状況
地震発生当日 9:00PM 停電 53施設(100%)
断水 48施設 (91%)
装置、建物、配管等被害 40施設 (75%)
地震発生翌日 9:00AM 透析可能 9施設 (17%)
使用可能病床 239床 (震災前1739床の14%)
宮城県内透析患者4700人の被害状況
震災で死亡 35人
行方不明 10人
震災関連死 23人
岩手県の状況
45の透析機関のうち、地震による致命的損壊施設0施設、停電・断水による透析不能14施設、津波被害2施設

岩手医大の大森聡の報告では、岩手県では45の透析機関の内、14施設が停電や断水で透析が不能となった。しかし、太平洋岸から内陸部への主要道路は確保されていたため、当初患者はそれらのルートを利用して内陸部の透析施設に移動し、さらに3日以内に42施設が稼働可能となったことから、透析需要に対しては県内でほぼ対応することができたという。

福島県の状況
原発事故の避難地区にある4施設では、患者や医療者の退去が求められ、浜通りの医療圏では最大1500人の透析患者が圏外に一時的に避難を要した

福島県では地震・津波・停電・断水に加え、福島原発事故が大きな影響を与えた。おぎはら泌尿器と目のクリニックの荻原雅彦の報告では、浜通り地区の4施設が原発事故の避難地区にあり、患者や医療者の退去が求められた。浜通りの医療圏では最大1500人の透析患者が圏外に一時的に避難を要したという。東京女子医大秋葉隆らの報告では、約1000人の透析患者が居住する福島県いわき市内では、停電と断水で多くの透析施設で透析困難となり、受け入れ能力を超える患者が一部の施設に集中し、最短1.5時間透析などが行われる状態に陥った。また、原発の近隣地区に避難指示や屋内待機指示が出されたことや、ガソリン不足などから患者やスタッフの通院が困難となり、さらに物資の市内への流入が減少し、医療材料のみならず生活物資が不足し、近日中に全市的に透析医療の継続が困難になると予測された。こうした状況を打開するために、市内最大の透析施設は透析患者の広域集団避難を呼びかけた。呼びかけの一方、避難先として東京都、新潟県、千葉県の透析施設と折衝を進め、3月17日に千葉県に約50名、新潟県に約150名、東京都に約380名が一部スタッフと伴にバスで集団移動した。東京に移動した患者は東京都区部災害時透析医療ネットワークに加盟する都内の透析施設で分散して外来、あるいは入院透析治療を受け、当面の患者の住居(避難所)は東京都が日本青年館や代々木オリンピック記念青少年総合センターなどを確保した。千葉県へ移動した患者は亀田総合病院を中心に治療を受け、新潟県に移動した患者は新潟大学が中心となり、県内13か所の透析施設で治療を受け、宿舎などは新潟県庁が手配した。

秋澤 忠男『災害時透析医療の特殊性と昭和大学病院の役割 (特 集 災害拠点病院として昭和大学病院の果たすべき役割) 』昭和医会誌 第72巻 第1号〔30-33頁, 2012〕 より引用して一部改変

過去の災害時の透析医療状況②:1995年の阪神大震災

  • 約50施設が一時的に透析不可能
  • 数千人単位がかかりつけの透析施設で透析不可能
  • 兵庫県44施設からの587人の患者を大阪府83施設で受け入れ
  • ほとんどの地域で3~4日以内に電力復旧
※阪神大震災当時は、対応をコーディネートする組織はなく、ほとんどが施設間の1対1の交渉を行うか、患者が自力で移動した。
※『阪神・淡路大震災教訓情報資料集(内閣府)』では、兵庫県南部地震直後、阪神・神戸地域の透析施設45箇所のうち、21施設が機能不能となり、県内全体で約3000人の患者に影響があったと報告されている。

以上のことを踏まえて、万一、水、電気、通信手段などが途絶えた場合を想定して、自分が何をすべきで、自分で何ができるのかを考え、いざという時でも落ち着いてしっかり行動できるよう、必要な知識を身に付けておきましょう。

災害からあなたを守るのは、あなた自身が取り組む防災対策です。

じんラボが調べた役立つ資料一覧

災害はいつ、どこで、どのような規模で起こるのか誰にも予測できません。あなた自身が災害に備えて、自分自身を守れるように日ごろから心構えや準備をしておきましょう。災害時には自分自身の適切な行動も大切ですが、同時に医療施設、医療関係機関、自治体、各防災機関との連携プレーも非常に重要です。ここでは地方自治体や、病院、公共団体などで作成された防災マニュアル等をご紹介します。平常時から繰り返し読み込んで頭の中でシミュレーションしておきましょう。また、かかりつけ透析施設に相談し、地域の関連する機関の情報を集めて、場所や連絡先、災害時の対応方法を把握しておくとよいでしょう。


透析患者 災害対策マニュアル(2010年8月 東京都区部災害透析医療ネットワーク)
pdf:2MB

透析患者 災害対策マニュアル
(2010年8月 東京都区部災害透析医療ネットワーク)

東京全体の透析施設のおよそ2/3がこのネットワークの会員になっています。平常時から整理しておくべき、必要な情報が書き込めるようになっています。血液透析患者、腹膜透析患者、在宅血液透析患者別に、平常時や、災害時、透析中に災害が起こった場合の心得や対応方法まで具体的に記載されています。東京都以外にお住まいの方も必見です。
このマニュアルをプリントアウトし、自分に必要な情報を書き込んでおき、日ごろから何度も読み返しながら常に携帯しておくとよいでしょう。


参考サイト

参考

  • 山川 智之『透析医療における災害対策 (特集 震災と在宅ケア)』日本在宅ケア学会誌 15(2) 2012-02 p.3-7
  • 秋澤 忠男『災害時透析医療の特殊性と昭和大学病院の役割 (特 集 災害拠点病院として昭和大学病院の果たすべき役割) 』昭和医会誌 第72巻 第1号〔30-33頁, 2012〕
 
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