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食生活研究室

腎臓病・透析患者向け低カリウム野菜で食生活に彩りを
〜透析患者が自身の想いから開発した低カリウム野菜〜

2017.4.10

文:所長

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腎臓病・透析患者さんで、特にステージG4〜G5の方は「カリウム」摂取に留意する必要があります。
野菜や果物はカリウム含有率が高いため、茹でこぼしや水にさらすなどの工夫をしたり、食べたい気持ちを我慢している方も多いのではないでしょうか。

カリウムを気にせずに食べられる野菜や果物があれば…。
そんな患者さんの願いに応えようと、低カリウムレタスを販売している会社が、ドクターベジタブルジャパン株式会社外部サイトへです。

同社は5年前に「低カリウムレタス」の量産化に成功し、特許を取得。ドクターベジタブルのブランドで全国の5工場で生産し、デパ地下や有名スーパーなど1500カ所で販売しています。

低カリウムレタスを販売して最もリクエストが多かったのが「低カリウムトマト」だったそうです。そこで、千葉大学大学院園芸学研究科の丸尾達教授と共同研究を開始し、トマトの特性を活かした日射量に応じて養液をITプログラムで管理する「日射比例養液管理法」を用い、世界で初めて※1通常のミニトマトのカリウム含有量を半分以下※2抑えることに成功、量産化を実現しました。

※1 世界初:ドクターベジタブルジャパン株式会社調べ
※2 カリウム含有量
通常のミニトマト:290mg/100g(日本食品成分表2015年版(七訂))
低カリウムトマト:145mg/100g以下(検査:株式会社スペック)

小春日和の3月末、ドクターベジタブルジャパン株式会社マーケティング部の児玉由美さんと木下圭児技術本部長に案内していただき、低カリウムトマトの農園と低カリウムレタスの植物工場を見学してきました。低カリウムレタス、低カリウムメロンに続き第3弾となる低カリウムトマトの量産および販売は世界初とのことで、とても楽しみですね。


手作りの栽培システムで低カリウムトマトの
栽培に挑戦、若梅農園

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低カリウムトマトは、千葉県外房の横芝光町にある一般のトマト農家「若梅農園」で栽培されています。こちらの農園は通常のミニトマトも甘くて美味しいと大変評判だそうです。

早速ビニールハウスに入り、低カリウムトマトの栽培地へ。見学前の数日間は気温が大きく下がってしまったため、まだ赤く色づく前のトマトとご対面です。

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技術本部長の木下さんにまず低カリウムトマトの栽培についてご説明いただきました。

トマトの品種は、表皮が薄く糖度と酸度・うま味のバランスが良い「べにすずめ」という品種です。カリウムを抜く行程で酸度が下がりその分甘みを感じるようになり、より甘いトマトに仕上がりました。
日射量を計測して養液を流す栽培法を用いて栽培しています。
収穫までは約3ヶ月。成長に必要なカリウムを抑えているので通常よりも成長に時間がかかります。
トマトが成長し、3段目以上に実がつくようになるとカリウムのコントロールが効かなくなるため、通常の2/3くらいの高さでまでに成長を押さえています。

なるほど、色々工夫がされているのですね。
そしてこちらの栽培システムはなんと木下さんの手作り。
本格的に量産化がスタートするまでは、培地や養液を流すシステムまで社員の皆さんが愛情込めて手作りされていると知り、かなり驚きました。
トマトを見つめる目は子どもを見つめるお父さんのような眼差し。当然ですね。

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マーケティング部の児玉さんにもご説明いただきました。

トマト等の果菜類は成長の最終工程でカリウムを大量に必要とするため難易度が高く、低カリウムレタスと同様の手法を使っての栽培はうまくいかず、「日射比例養液管理法」にたどり着きました。

続いて若梅農園の若梅直樹代表に、今回生産に至った経緯や生産に携わる想いを語っていただきました。

腎臓病・透析患者さんにはカリウム制限があり、野菜を多く食べられないということはまったく知りませんでした。ドクターベジタブルさんと出会い、熱い想いをお聴きするうちに低カリウムトマトの生産に挑戦したい気持ちになりました。野菜を思う存分食べられない患者さんのために少しでも役立つなら自分も嬉しいですし、患者さんにも喜んでくれたら本当に嬉しく思います。

image 若梅さん、木下さんとの3ショット

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写真の葉の茶色い部分はカリウムが不足している証。トマトがカリウムを欲している印だと、若梅さんに教えていただきました。

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そしてトマトの青い筋。筋がくっきりたくさん入っているトマトが美味しいトマトなのだそうです。
赤くなり収穫するにはあと10日〜2週間ほどかかるそうですが、きっと美味しい低カリウムトマトに育ってくれるはずです。

image 出荷時はこのようになります。

事前に試食させていただいた時には本当に甘くて美味しいトマトで驚きました。
患者仲間にも食べてもらったところとても好評でした。
低カリウムレタスにも言えることですが、この低カリウムトマトは美味しさの点で、カリウム制限をしている腎臓病・透析患者のみならず一般の方にも選ばれる商品になり得ると思いました。


低カリウムレタスを栽培している
横芝光植物工場を見学

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次はトマト農園から車で10分程の低カリウムレタスを栽培している横芝光植物工場へ。
この植物工場は、ジャスダック市場に株式上場するエージーピー(AGP)の工場で、ドクターベジタブルのフランチャイジーとして2014年から工場を運営しています。外からは緑は見えず、ここが本当に野菜の産地かと思ってしまう外観ですが、工場内では何段ものラックの上でレタスが育っていて、1日に4000株を市場に送り出しています。

低カリウムレタスは、腎臓病・透析患者が摂取制限されているカリウムを減らして生産している特殊なレタスです。出荷される低カリウムレタスのカリウムの含有量は一般的なリーフレタス※3の5分の1以下。カリウム摂取制限で、野菜に含まれるカリウムを減すために茹でこぼしや水にさらすといった手間をかけなくても、生のシャキシャキとしたレタスをそのまま楽しむことが出来ます。

※3 2015年 日本食品標準分析表(七訂)掲載のリーフレタスとの比較
100g当たりカリウムの含有量:
リーフレタス(490mg)
低カリウムレタス(98mg以下)

ドクターベジタブルの植物工場は、閉鎖環境で太陽光を用いずに蛍光灯やLEDなどで栽培する「完全人工光型」の工場です。環境をAI等でコントロールして、植物にとって理想的な環境を創り出しています。工場内は、害虫はもちろん雑菌や細かな塵もシャットアウトしたクリーンな栽培環境なので、栽培期間中に農薬などを使用していません。

また、高品質を実現するため食品工場と同レベルの衛生管理を徹底しています。工場内部に入る時には食品工場同様、長靴に履き替え、手洗い、消毒、マスクに手袋などで完全防備し、最後にはエアーシャワーで見えないほこりなどを風で吹き飛ばします。

その徹底した生育環境、衛生管理された工場内の見学は、場内で働いている社員の皆さまと同じように、クリーンスーツ・手袋・マスクを着用し、エアーシャワーを浴びての見学となります。

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木下さんに行程をご説明いただきながら見学しました。

image ウレタンのシートに種を蒔いて発芽の状態。

image 1週間程経ったら小さなカップに移します。

image 約2週間後の状態。

image トレーごと1日分ずつ移動します。

image 葉が大きくなるにつれてトレーも大きくなっていきます。

低カリウムレタスは、秋田県立大学の小川敦史教授が開発した技術を応用し、ドクターベジタブルが持っている大量生産技術の特許を使用して栽培しています。実は小川教授も透析患者で、自身の「野菜を食べたい」という思いがきっかけとなり、低カリウム野菜の研究を開始しました。

カリウムは植物を大きく成長させるのに欠かせない栄養素です。不足すると植物の生長がストップしてしまうため、種を播いてから一定の段階までは通常のレタスと同じカリウムの入った肥料を使用して生育します。その後、最終段階で硝酸カリウムを硝酸ナトリウムに置きかえたカリウムの入っていない特殊な肥料を使用します。するとレタスは「カリウムを吸収している」と錯覚して大きく育ち、カリウムが低減されたレタスに育つというわけです。

image 収穫されました。

image 葉に養液がつかないよう慎重にトレーから外し、根を落とします。

image 収穫レタスは色の黒いところ(食しても問題ない部分)等を
トリミングして、包装をします。

植物工場で同じ環境で育てていると言っても、レタスは生き物なので個体差があります。毎日収穫前にはカリウム含有量の簡易検査を行い、一定値をクリアしなければ出荷が出来ません。その他に大きさ、色、形状などもチェックしてパッキングされます。
その後、異物混入を防ぐため金属探知機を通し、ようやく工場を出て出荷となります。カリウムの含有量や生菌数などは、簡易検査の他、定期的に専門機関での検査も実施しています。

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通常のレタスは種を播いてから収穫まで約30日ですが、低カリウムレタスは42日かけて育てます。ゆっくり、じっくりと育てることで苦味やエグミが少なくなり、甘みを感じられるおいしいレタスになるそうです。

また、種まきの日程を調整し、土日にはスタッフがお休みできるような栽培計画を実施している点も注目です。同社では将来的に透析患者の就労支援なども行っていきたいと考えているそうです。


機能性野菜がもたらす幸せ

それにしても驚いたのは、働いている人の数が多いことです。
種を蒔いてから42日間育て、通常のレタスが含有しているカリウムの約1/5になり、出荷までかなり人手がかかっています。
低カリウムトマトの農園でも思いましたが、双方ともまさに「手作り」という感じでした。

今回見学した低カリウムトマトと低カリウムレタスは、腎臓病・透析患者の食生活に潤いを与えるものだと思います。また、冷蔵保存で2週間程度保存ができることや、水洗いせずに使用できる点などを考えると災害等の非常時にも有用です。

そして実際に食べたことのある方はお分かりかと思いますが、とても美味しいレタスです。洗わずに使えるので時短になりますし、このレタスを使ったレシピ外部サイトへ(ドクターベジタブル「低カリウムレシピ」)を参考に日頃の食事に活用されてはいかがでしょうか。

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現在では、ありがたいことにさまざまなメーカーから低カリウム野菜が販売されるようになりました。
これからは品質をしっかり見極めていく段階になり「全国低カリウム野菜研究会外部サイトへ」も発足しました。

カリウム制限のある腎臓病・透析患者が普段食べたくても食べられなかった野菜や果物。低カリウムの品種がもっと増え、楽しむことができたらどれだけの人が笑顔になるでしょうか。

待望の低カリウムトマトは、まず首都圏の百貨店を中心に50店程で4月中旬頃販売予定です!
詳しい販売店に関しては、下記までお問い合わせください。

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【商品名】低カリウムトマト 【内容量】1パック150g入り 【産地】千葉県

1パック当たり150グラム入りで、価格は500〜600円程度(販売店によって異なる)を想定されています。
今後は栽培面積を東京、名古屋、大阪に拡大し、年内に全国500店舗で販売を目指しているそうで、これからが本当に楽しみです。

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低カリウムレタス、低カリウムトマトに関するお問い合わせ

ドクターベジタブルジャパン株式会社外部サイトへ
〒101-0044 東京都千代田区鍛冶町1-6-1 日東合同ビル6F
フリーダイヤル:0120-0831-82
メール:info@drvegetable.jp
所長

所長
株式会社ペイシェントフッド代表。社会福祉士。透析歴29年。 14年間勤めたソニー(株)を退職後、福祉職を経て、同社を設立。 長い年月にわたり「治療を受ける」という「受け身の立場」で医療と関わってきましたが、腎臓病を経て、透析を受ける当事者として、その経験・想いを「腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのために」役立てられないかと一念発起し、起業しました。 「じんラボ」はみなさんと一緒につくりあげていくコミュニティです。どうぞよろしくお願いします!

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