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多発性嚢胞腎体験記

【第5話・最終回】悩みごととまとめ編

2016.3.7

文:関矢武明

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連載回数は5回でお願いしますと依頼され、そんなに書けるかなって思ったけど、何とか5回目の原稿も書き上がりました。最終回は何を書こうかと悩んだけれど、今困っていることと多発性嚢胞腎の闘病記のまとめを書くことにしました。


【悩みごと】

透析以外の診療

基礎知識で所長も「透析患者さんが他科を受診する場合」を書いていましたが、透析患者は透析施設以外での診療を拒否されることがたまにあり、歯医者や整形外科などで診療して貰えなかったという話は私も小耳に挟んでいます。透析患者は尿が出ないために薬の量が健常者とは異なり、止血の問題もあるので薬の処方を嫌がる医療機関が多く、私も透析施設以外の医療機関を探すのが一苦労です。

それに加えて自分の場合はくも膜下出血もしているので、診てくれる病院を探すことは一段と厳しさが増します。それに2〜3年前から地元の基幹病院が土曜日の診療を行わなくなり、普段から透析で早く仕事を切り上げてさせていただいているので平日は休めない環境の私は、透析以外の診察がことさらに厄介になり新潟県内では診察が受けられないことが多くなりました。大腸内視鏡検査は富山で、腎臓の充実性腫瘤の疑い、多血症の対応は東京で診てもらうなどして何とかしのいでいます。

土曜の診療が無くなった基幹病院に行けなくなり、くも膜下出血の予防での3年に一度の脳動脈のCT検査が出来ずに困っていましたが、CTとMRI撮影ができる個人医を地元で見つけることが出来たので、CTは県外に行かずに済んでいます。「基幹病院が土曜を休診するなんて考えられない話」と県外の医療機関は口を揃えて言いますが、それが新潟医療の現実なので仕方が無く受け入れています。でも病気が病気だけに仕方が無いでは済まされないので、県外も含めで土曜日に診てもらえる医療機関を常に探し続けています。

地元の基幹病院は家から1kmと近いのですが、平日と土曜は使えず救急搬送され入院する場合しか使い道が無いです。初めは地元の基幹病院の土曜日営業を市と県にお願いする陳情を考えましたが、現在は考え方を変えて地元の基幹病院に診てもらえないならば、地元の医師に縛られることなく、気兼ねなく県外の地元の病院より数段優秀な医師に診察してもらおうと肯定的に捉えています。交通費がかかるのが難点ですが、お金の続く限り県外での診療は続ける予定です。ちなみに東京には月に1度の割合で遠征競馬に行くので、土曜を使えば問題は少ないけれど、お金・体力・気力の続く限りでいつまで続けられるか不安ですが引き続き県外での診療を行います。


透析継続と透析環境

前年の診療報酬改定での引き下げで、平成19年は夜間透析が13%廃止縮小しました。今年28年度も診療報酬の薬価の引き下げが決まったので、現在夜間透析している立場としてはいつ本体が引き下げになるか、夜間透析が無くなり仕事が出来なくなる不安と闘っています。

現在は血流300mL/min、月曜日は4時間半で水、金曜日は4時間の透析を行なっています。本来なら週18時間、1日6時間の長時間(標準透析は4時間)で300 mL/min以上の高回転(標準は200mL/min)でQOLを上げるようにお願いしたいところですが、現在の自分の環境では無理とのことです。 長時間透析(週18時間、血流350mL/min)を勧めているドクターからはっきりと透析不足と言われていますが、透析条件の変えることの出来ない現在はしっかり食べずに食事制限を順守せざるを得ません。

長時間透析のような高度な質の医療を求めたいのは山々ですが、その前に最低限必要な夜間透析を継続してもらうことを私は重要視しています。 平成28年度の診療報酬の薬価の引き下げが引き金になり、診療報酬の本体部分の引き下げも視界に入り、今後の透析環境の悪化が懸念されています。現在は手厚くサポートされていますが、透析は金食い虫なのでいつ何時自己負担額が大きくなっても不思議ではありません。今後、診療報酬の薬価や本体部分が減額され、夜間透析の廃止や透析の自己負担額の増加が予想されることが不安ですが、しっかり働き、患者会の活動もして現状が維持できるように行動しています。


不良透析患者のため

競馬が趣味で東京には1ヵ月に1回は遠征競馬に出向いていることは申し上げましたが、そのお蔭で土曜日の午前中に東京で受診ができている訳です。 競馬で稼いだ時の土曜日は、歌舞伎町で飲んでしまい体重増加が抑えられない不良透析患者です。 祝勝会の酒の肴は蛋白や塩分が多く飲水も多くなり、薬を飲んでいてもリンの数値が上がってしまいます。

競馬をやめて慎ましやかな生活を送れば良いのですが、競馬の無い人生、つまり自分の生活のQOLをさげることは考えられません。長時間透析をしていれば対応出来そうですが、残念ながら私はその環境を持ち合わせていません。 主治医は「食べ過ぎ」としか言わないし、現在の透析の診療所には栄養士が在籍しないので、土曜に祝勝会をしても水分や蛋白の過剰摂取を防止する対策を誰にも相談できません。これが現在一番の心配事なので、相談できる環境を整えるために根回ししています。


【多発性嚢胞腎闘病記のまとめ】

多発生嚢胞腎が発症してからの病気

多発性嚢胞腎でくも膜下出血を発症してから16年、透析して10年になると色々な病気を併発します。

  • 私が併発した主な病気
  • 嚢胞感染
  • 不均衡症候群
  • 胃潰瘍
  • 逆流性食道炎
  • 充実性腫瘤の疑い
  • 細菌性胃腸炎
  • 多血症

自分の闘病はある意味終わりの無いゲームと同じで、次から次へと新しいボスキャラが出てきます。「くも膜下出血」って最強のボスキャラを倒したと思ったら、「嚢胞感染」って新しいボスキャラに破れ、手強い「透析」ボスキャラと対戦中。そして現在は「多血症」と言う名の新しくメッチャ強いボスキャラと戦う羽目になりました。 でも病気と闘っている間は良いのですが、知らず知らずに病気以外の医療制度や医療環境を整えることに時間を取られる場合が最近多く出てきて難儀しています。皆さまには私のように病気以外のことに時間が取られず闘病が出来ることを祈ります。


条件に合わないと処方されないことや薬が高いこと、頻尿になることなど乗り越えなければならないハードルはありますが、現在は治療薬「サムスカ」があることは朗報です。私の保存期の時には無かった薬なのでその体験談を書けないことは心苦しいですが、皆様それぞれ専門医の指導を受けて透析導入を遅らせることが出来ると良いですね。

多発性嚢胞腎の病状は十人十色なので、他人と比べるなと嚢胞腎を最初に診ていただいた主治医から口が酸っぱくなる程言われました。自分の体験談が参考にならない方も多数いると承知していますが、くも膜下出血と透析をしても社会生活が送れることを知ることで気が楽になる方がいれば、体験談を書く依頼を受けて良かったと思っています。 では何かご要望があれば書くのはやぶさかではないけれど、今回で約束の5回目の投稿なのでこれで一先ず筆を置かせていただきます。

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関矢武明

関矢武明
1999年3月21日の春分の日にくも膜下出血の一次破裂が分からず入院。精密検査で大騒ぎ中の腹部エコーで多発性嚢胞腎が発見されそれ以来闘病しています。多発性嚢胞腎は遺伝の場合が大多数ですが、私の周りの親族には多発性嚢胞腎患者が存在せず、くも膜下出血と多発性嚢胞腎が分かるのに時間がかかり、発見がもう1日遅かったら死んでいたと言われました。
多発性嚢胞腎の保存期は2005年の2月3日までの約6年間で、嚢胞感染のため腎機能が一気に低下し2005年2月4日より血液透析導入しました。
現在日中はサラリーマンをしていて、月水金の夜間透析をしながら闘病生活を送っています。

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