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透析クルーズ体験記【第1回】
ツアーと透析の概要

2017.2.20

文:萩元幹生

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アメリカ系の旅行会社が手掛ける、海外客船内で透析を受けながらクルーズ旅行ができる「透析クルーズ旅行」というものがあるのをご存知ですか?
透析に移行して以来好きな海外旅行をほとんど断念していましたが、このような道が開かれていると知り、多少費用が嵩みますが旅行仲間の賛同を得て2015年、南ヨーロッパを巡る2週間余のツアーに参加しました。

乗船したのはローヤル・カリビアン・インターナショナル社の新造船 Anthem of the Seas号(約17万トン)です。イギリス・ロンドンからスペイン・カナリア諸島、ポルトガル・マデイラ島を周航しました。

この透析クルーズは、米国フロリダ州が本社でこの領域では最大手であるDialysis at Seaという透析専門事業者がクルーズ船に透析に必要な機材を持込み、スタッフが同乗することにより航海中船客の透析の需要に応える仕組みになっています。


気になる透析環境

透析が行われる場所は、船の第3デッキ(船全体では16階)にあるメディカルセンターです。
4つの病室のうち2室を透析室(2名用)に転用しています。
この旅で透析を受ける患者は乗客8名(女性3名)で、うち東洋人は私だけでした。

透析装置はドイツに本社を置くフレゼニウス社のFresenius 2008K、日本のものよりも大型で輸液ポンプの音が少々うるさく、時折故障するようで予備機が2台ありました。

ダイアライザも同じくフレゼニウス社のOptiflux F160NRですが、これが体質的に合わない患者は自前のダイアライザを必要本数持ち込む必要があります。私の場合は主治医の配慮で旅行前からクルーズで使用されるものと同種のもので慣らし運転をしてもらいました。

造血ホルモンは患者が用意しますが温度管理が手間なので、私の場合は旅行出発直前に旅行期間中効果が持続するものを主治医に投与してもらいました。

透析用の針は日本のものと違い金属だけでできており、それが斜めにカットされた針先はゲージサイズより太く見え視覚的にも恐ろしいし、いわゆる穿刺の痛みは刺激的でした。

透析に必要な大量の浄水は、船から海水を半透膜法で淡水化したものをさらに浄水器で浄化して使用しています。


クルーズ船の透析スタッフ

全員米国籍の医療スタッフは以下の通りでした。

腎臓医 Jay 中東レバノン系、ハワイ在住、40代男性
看護師 Jordan フランス系白人、コロラド在住、40代男性
Anna Maria 前者の妻で南米コロンビアから帰化、前夫と強引に別れて渡米した情熱家
Anabelle フィリピンからの移民でテキサス在住、50そこそこ、とても優しい
臨床工学技士 Donna ミネソタ在住、30代前半白人女性、エネルギッシュな典型的なアメリカンウーマンで、穿刺が一番うまいということで、一手に引き受けていた

医師は平服ですが、看護師と技士は同じデザインの濃紺のユニフォームを着用していました。
そしてアメリカではこの臨床工学技士をME(Medical Engineer)でなくPCT(Patient Care Technician)と呼称するそうです。

彼らは、いずれも居住地で病院またはクリニックに定職を持ち、チャンスがあると休暇を利用して透析クルーズに参加しているそうです。いわば寄せ集めの即席チームですが、初対面同士のような感じは少しも見せなかったのには敬服しました。

スタッフが皆米国籍なので、当然使える言語は英語のみでした。添乗員に1〜2度お世話になりましたが、あとは自力でなんとか対応しました。
添乗員は原則的に透析室への入室は許されておらず、透析が開始されて落ち着くまでと、終了のしばらく前からドアの外で聞き耳を立て、必要により会話を手助けしてくれます。
透析中に一度軽い不整脈が発生し、船医にお世話になった際の医務室での会話は、ほとんどが難解な循環器系の用語でほとほと閉口しましたが、添乗員がスマートフォンにダウンロードした語彙の豊富な英和辞典のおかげで何とか乗り切れました。

透析スタッフの就労状況ですが、船上の透析治療は火木土だけなので、あとは乗客と同様に寄港地観光などを楽しんでいました。遊びと仕事が両立できる稀有なケースだと感じました。
今回はたまたまですが、透析日は1日を除いて終日航海だったので、患者も透析スタッフも健常者と殆んど同じように陸上の観光を楽しめました。

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「大西洋のハワイ」を訪ねる旅

今回のメインの寄港地、カナリア諸島やマデイラ島は大西洋の南、アフリカ大陸の西側に位置していて「大西洋のハワイ」とよく言われているようですが、雰囲気は対極にあるように思えます。
ハワイは緑滴る楽園ですが、こちらはほとんど全島が火山爆発の跡で、いたるところに地獄絵図のような景色が広がっています。それでもリゾート地としてもてはやされているのは、温暖な気候と「陽光」のためです。それは長くて暗くて寒い冬を強いられるヨーロッパ人にとっての楽園なのでしょう。
ということで、冬場に訪ねたらもっと“らしさ”が味わえたのではないかと思います。

乗船したのはローヤル・カリビアン・インターナショナル社の新造船でした。この会社はエンターテイメントの設備や用具の開発には非常に熱心で、今回も空中ダイビングが体験できる強力な風洞や、巨大なクレーン付き展望台等が導入されていました。 一方、高齢の乗客にとってはアクティビティよりも大事な食事の方は残念ながらパっとしませんでした。
この船は、約17万トンの大型船で揺れもなく快適に走りますが、4,900人もの乗客を乗せるので、寄港地での乗り降りや船内飲食施設での混雑などを考えると、9万トンクラスの船が丁度手頃ではないかと思いました。

今回のクルーズでは6回の透析の透析を受けましたが、透析とそれにかかるサービスの費用は487,500円、別途医療情報処理費用として32,000円が必要でした。クルーズそのものの費用はまた別になります。
全米各地からロンドンまでのスタッフ往復交通費や、クルーズ費用(医師は1人部屋、その他のスタッフは2人部屋)、2つの病室の借用料、機材の輸送費、水の使用料、さらにはスタッフの給料などを考えると、経営的にペイできるのか、いささか疑問ではあります。

次回は、透析の様子をお届けします。

萩元幹生

萩元幹生

昭和一桁の最終年、東京都に出生。
若い頃に発症した痛風との長い闘いで腎機能不全に陥る。
透析歴は2年8カ月。
現役時代に国際関係業務に従事したこともあり、海外旅行経験は豊富。
クルーズは今回を含め13回経験しており、主要な海域は概ねカバー。

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