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透析の友・本の紹介【1】吉村昭著・『冬の鷹』

2013.4.1

文:よしいなをき

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紹介する本:吉村昭著・『冬の鷹』

私の場合、困ったことに必要な本が手元に無いということがよくあります。大概の場合、自分が好きな本だったりするのですが、これが大体手元に無いのです。何故かというと、自分が気に入った本は人にあげてしまうことが多いのです。何かの機会でプレゼントしてしまうことが多いのです。今回、本の紹介は第一回ということで自分の好きな本であるいしいしんじさんの『麦ふみクーツェ』を紹介しようと思ったのですが、やはり手元にありません。これは若きモデルの卵であるYさんという方にプレゼントしてしまいました。この本についてはまた別の機会に紹介するとして、今回は吉村昭さんの歴史小説『冬の鷹』にしようと思います。

吉村昭著・『冬の鷹』

この本は、私はもちろん大好きな小説なのですが、なぜか手元には残っています。私がシャントの手術を最初にした2005年の4月に、入院した大学病院で読んでいました。

『冬の鷹』は、日本で初めて西洋の医学書である『ターヘルアナトミア』を翻訳し『解体新書』として表した前野良沢、杉田玄白の物語です。中学の日本史の教科書にも出てくる有名な二人ですが、長崎へ遊学してオランダ語を勉強している前野良沢はともかく、杉田玄白はa、b、cすら知らないレベルです。というか鎖国中の日本ですから西洋の言葉を知っている人は限られていました。当時、日本でオランダ語が分かるのは長崎の出島に務める通詞(当時の通訳をする役人)くらいです。最初はこの二人に中川淳庵という若い学者が加わり、3人で翻訳事業を始めます。しかしすぐに頓挫してしまいます。前野良沢すら100くらいの単語しか分からないのです。彼らは『ターヘルアナトミア』冒頭部分からの翻訳を試みますが、何が書かれているのかまるで見当が付きません。しかし、ターヘルアナトミアには図版があり、人体のパーツパーツから少しずつ少しずつ理解できる単語を増やしていこうとします。こういうレベルから始めて、翻訳事業を成し遂げていきます。

歴史的には、『解体新書』の翻訳は杉田玄白一人が注目されていくことになります。前野良沢は、『解体新書』の翻訳そのものがまだまだ拙く、出版することには抵抗がありました。しかし時代は自由な雰囲気が溢れる老中田沼の時代から、老中松平の倹約時代に入ろうとしていました。杉田は先見の明があったと言えます。前野は愚直ですが頑固な性格でもありました。二人は一時的にではありますが仲互いをしてしまい、翻訳事業の盟主は前野から杉田へと変わり、前野は事業そのものから手を引きます。中川淳庵は若くして癌で亡くなってしまい、杉田一人が日本を代表する西洋医学者として表舞台に立つことになります。前野良沢はその後、一人、語学の道へと踏み分けていくことになります。

私は入院時に何故この本を持って行ったのかというと、当時、入院した東京医科歯科大学には『ターヘルアナトミア』と『解体新書』の原書がありました。大学の図書館に保存されていたんです。どうにか読ませてもらえないかと図書館司書の方にお願いしたところ、教材用のレプリカだったら良いということになりました。

レプリカとはいえ、当時と同じ印刷方法、製本方法で作られたものです。雰囲気は十分に味わえました。医学的内容は理解することは難しかったですが、体内解剖図である図版の部分を閲覧しました。図版の解剖図は当時の秋田藩の小田野直武という武士階級の人が筆で描いています(『ターヘルアナトミア』原書では銅版画で描かれていますが、当時の日本ではまだこの技法は理解されていません)。日本芸術史の中に登場する秋田蘭画の代表作家です。当時、日本最高峰の洋画家を、発明家の平賀源内が紹介しています。

また、小説の中でも取り上げられている長崎通詞の紹介文の箇所を確認しました。ここには、「前野某という侍が、毎日のようにしつこく質問してきた」といった内容のことが確認できます。この記載があったことから、前野が翻訳事業から脱しても、彼がいなかったら事業そのものが成り立たなかったことが理解できます。

大学病院には、実は意外なお宝が保存されているということです。私は当時、担当医の先生に、解体新書のレプリカを見せてもらってきたよ、というとその先生は、自分の所属する大学にそんな貴重なものがあるのかと大変驚いていました。

今回は、入院先で意外なものに出会えるという話でした。

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よしいなをき

よしいなをき
透析歴7年になります。透析はしていますが普段はスポーツ自転車に乗って 体を鍛えています。 仕事は、平凡なサラリーマンですが、透析の時間を利用して、ブログを書いたり、小説を書いたりしています。透析は月、水、金の夜間にしているので、その時間にメッセージや、 コメントなど頂けるとうれしいです。

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