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生き活きナビ(サポート情報)

「治療食レストランと健康教室で
患者さんをもっと元気に!」
船橋市・大島記念嬉泉病院の取り組みを取材しました!
Part1

2015.3.19

文:よしいなをき

緑の文字の用語をクリックすると用語解説ページに移動するよ。

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先日、船橋経済新聞のWebサイトにて「船橋の透析専門病院に新施設−病院食レストランと健康教室併設外部サイトへ」(2014年11月20日付)という記事を見つけました。この「透析専門病院」というのは船橋市にある「大島記念嬉泉病院」で、記事によれば透析患者さんだけではなく、家族の方や一般の方でも病院食レストランや健康教室を利用できるとのことでした。透析食が提供される透析施設はよくありますが、治療食のレストランや健康教室が利用できる病院はなかなか無いと思います。

大島記念嬉泉病院

透析患者さんの治療のみならず、食生活と運動といった広い範囲での支援をする大島記念嬉泉病院の取り組みについて「じんラボをご覧のみなさんに紹介したい」と強く感じました。早速取材申し込みをさせていただいたところ、直ちに石川院長にご快諾いただき、所長と私の2人で大島記念嬉泉病院にうかがいました。

【医療法人社団嬉泉会 大島記念嬉泉病院】

院長:石川清隆
所在地:〒274-0812 千葉県船橋市三咲3-5-15
    TEL:047-448-3330
    FAX:047-448-3448
診療科目:内科・透析内科・腎臓内科・消化器内科・循環器内科・リハビリテーション科

血液透析を行う腎不全に特化した病院で、入院、または在宅・訪問介護、施設連携と、それらへの送迎透析を通じて透析患者の「生活丸抱えの医療・介護」を実施している。老老介護・独居の透析患者の全身管理、生活管理に特に力をいれている。

大島記念嬉泉病院

石川院長と共に石川院長と共に

車での訪問でしたが、民家に囲まれた6階建ての大きな病院なので迷う事なく到着しました。病院の敷地内へと進むと、所長がハンドルを切りながら、病院の窓の中に青い空が見えることに気付きました。辺りはすっかり暗くなっていましたが、病院の中からは明るい雰囲気が伝わってきます。

正面玄関を入るとすぐ右手は治療食レストラン「たね」、左手はさまざまな運動機器が並んだリハビリセンターです。1階のフロア全体がレストランとリハビリセンターになっており、壁一面青空が描かれた壁紙が貼られています。病院の外から見えた青空はこの壁紙でした。


石川清隆院長インタビュー

1階フロアに入ってすぐに石川清隆院長にお会いすることができました。そのまま応接室に招かれ、所長と私は石川院長のお話を伺いました。

よしい 食事や運動などは患者さんにとって人工透析と同じくらい大切なことだと思います。病院食レストランやリハビリ/健康教室の運営はまさにその実現だと思うのですが、この2つの施設を運営したいと思われた当初の院長の思いやきっかけなどお聞かせください。

石川院長 5年前に大島記念嬉泉病院に赴任した時、病院の雰囲気は"安静が一番"という感じでした。けれども高齢者の患者さんの場合だと1週間も安静にしていると、そのまま寝たきりになってしまうこともあるんです。もちろん安静も大事ですが安静の度合いがあります。例えば関節の痛みがあったとしても、テーピングで関節を保護したうえで、周辺の筋肉をリハビリすれば、痛みは少なく筋力を保持できるのです。しかし透析患者さんということになると、職員はものすごく慎重に扱う雰囲気が病院にありました。透析を受けている患者さんで透析中、肘や肩を痛がる方がいますが痛いからといって動かさないようにしていました。確かに肘を曲げたりすれば陰圧になるけれども、腕をひねる運動はできるんです。腕をひねる運動をすることで痛がっていた患者さんの痛みが軽減できました。最初はスタッフも半信半疑だったけれど、少しずつリハビリとしての体操を取り入れました。体を動かすことが患者さんの快方に向かうということがみんなも分かってきました。そこからリハビリ室を作って、ストレッチや筋力強化、自転車運動、マッサージなどをするようになったんです。それが取り組みとしての最初ですね。

所長 11月9日のオープニングセレモニーから3ヶ月が経ちましたが、患者さんたちの感想などはどうでしょうか?

石川院長 今現在は、治療食レストランではお昼しか出していないので「朝、昼、晩と3食、食べたい」という患者さんもいます。味や安全に食べられるということでは評判がいいのかな。できればこれから朝昼晩に対応できるようにはしたいですね。

よしい 今後の展望としては、いつ来ても食事が食べられるようなサービスを考えられているのですか?

石川院長 これはまだほんの手始めで、治療食レストランや健康教室といった取り組みだけで終わるのではなく、さらにいろいろな計画を考えています。

1階のフロアの奥がリハビリ/健康教室、手前が治療食レストランといった配置ですが、正面玄関から入るとちょうどその間を透析患者さんが通るようになっています。ここを広場という意味で「ピアッツア大島」と名付けています。ピアッツアはイタリア語なんですが、イタリアではピアッツアで大道芸とかをやっています。ここでは患者さんにも大道芸をやってもらえたらと考えています。

所長 患者さんが大道芸ですか? それは面白そうです。…よしいさん、大道芸にチャレンジしてみたら?(笑)

よしい えっ! う、う〜ん…(苦笑)

石川院長 患者さんを寝たきりにさせない工夫が必要なんです。高齢者では本格的な大道芸は難しいかもしれないけれど、92歳のおばあちゃんで「私は歴代の天皇陛下の名前が言えます」っていう人がいらしたので、ピアッツア大島でガマの油売りのように、大道芸として語ってもらえないかお願いしてみました。その方はとたんに照れちゃって、未だにお返事をいただいていませんが、神武天皇から平成天皇までと数が多いから実際にしゃべってもらうと、見ている人は「おおっ!」って驚かれるのではないかと大変期待しています(笑)。
8〜10分の大道芸をしてくれた人には、レストランの半額食券350円分を渡す仕組みにしているんです。2回やってくれた方は1回無料で食べられる訳です。

よしい ピアッツア大島で芸をすると食事が食べられるという仕組みは良いですね。…私も何か練習してみようかな(笑)。

石川院長 目がご不自由な高齢者でも口達者な方なら子供の相手だってできる。患者さんも何かの役割を持ってご自分が主役になることはとても大切なことだと考えています。

透析のような治療を長く受けていると、患者さんの気持ちが次第に受け身になってしまう。長くいる患者さんは一見、人が良さそうでも、…まあ、…ちょっと態度が悪かったり…(苦笑)。理学療法士がリハビリでマッサージをしてあげても、「あんたのはちっとも効かない」とかそっけない言葉で返してしまう。違う言い方だってできるはずなのに…。治らない病気から透析という生涯続く治療を受けているうちに、次第にサービスを受けて当たり前と思うようになってしまうのかもしれません。本当は地域への貢献といった社会的な役割が患者さんにあったら、少し気持ちが変わってくるように思うんです。

そこで大道芸だったりね、サイクルマシンを漕いだり、体を鍛えたりして、自分が主役になって何かを始めるようになると、今度は自分が何かをする立場になるから、少しは相手のことや周りのことも考えてくれるようになるんじゃないかなと考えています。

所長 今話されたことは他のクリニックや病院でも、頭を悩まされている医療者の方が多いと思います。「透析患者さんはわがまま」ということはよく聞く話ですが、根本的なところから取り組もうとされている話は初めて聞きました。こうした発想はどのようなことから湧いてくるのですか?

石川院長 私の子供が自閉症なんです。子供が小学生の頃は、週2日しか医療業務ができませんでした。家族交代で学校に行って、子供のそばにいないといけなかったんですよ。

どうもその時の自分の気持ちが、透析患者さんの気持ちとオーバーラップするんですね。透析のために生きるイコール子供のために生きる、というように重なり合う。「自分の人生はずっと子供の面倒をみているだけだ」と考えるのはよくない。「子供と一緒にいられる時間が与えられた」と思うようになったのです。どちらも考え方を変えるきっかけのようなものが大事。透析もそうで、1回4時間、週3回の時間を盗られたと思うこともできるが、何か他のことだってできるのです。例えば透析の時間を使って外国語をマスターすると考えることもできる。

今にして思えば子供と一緒にいられるのは神様からのギフトと思える部分もある。無理やり出会った不幸を自分の味方に変えることもできるんです。治る病気、治らない病気、どう感じるかはその人次第です。100%満足して死ぬ人はいないですよね。たとえ負け戦だったとしても、それをどう捉えるかはその人の考え方次第です。

所長 私も3歳の頃から長くこの病気と向き合ってきました。今の話を聞いて、まさに私が考えていたことと同じように感じました。私も透析を受けていることを強みにしたいと考え、今の仕事に取り組んでいます。

石川院長 お2人のような若い患者さんは元気だし、ピンチをチャンスに変えようという気持ちがあるから心配ないですね。ですが高齢者の多い地域だと心配事も多いんです。

例えばこの辺りにあるファミレスなどに家族で食事に行ったりすると、 高齢者も同じものを食べなければいけません。油っぽくて、塩辛くて、薬が必要になるような食事を食べている。これじゃあ病気になるのは当たりまえです。本当はファミレスで高齢者向けの食事が提供されれば良いんですが、でもそうしたメニューは無いですから…。地域の人たちの健康問題を根本から考えたら大切なことは食事と運動にある。それが治療食レストランとリハビリ/健康教室を作った一番の理由です。

でも本当はもっと広い範囲で患者さんをカバーしなくてはいけません。今の高齢化は街全体が老いていくのです。都市の高齢化はスピードが速く老老介護が当たり前になっています。行政ではこれがカバーできず、地域の病院がカバーしていくしかないんです。どこまでできるかという問題はありますが、我々ができることを常に考えていく必要があります。

よしい 治療食レストランは、腎臓病食と一般の方向けの健康食のメニュー構成ですが、工夫されていることはなんですか? また、病院内での栄養指導での工夫はなんでしょうか?

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治療食レストラン『たね』で出される腎臓病食とヘルシー食(画像クリックで拡大)

石川院長 栄養士によると、塩分が少なくてもよく煮込むことで味が濃くなるそうです。レストランで「激うま」と言っているものはそれで実現しているんですよ。後は盛りつけや高級感のある食器を使って、病院で食べる食事とは違った、レストランで食べる「特別感」を出しています。

基本的な食事の摂り方の考えは「1、2、6」と私は患者さんに伝えています。1日の摂取量でリンが1g、カリウムが2g、塩分が6gを超えないように指導しています。でもこれを厳密にやっていくのは大変なので、透析と透析の間になる2日単位で考えれば良い。これはレストランではなくて入院患者さんの場合だけれど、病院で出す食事は刺身やうなぎもあります。「1、2、6」を2日単位で考えれば倍くらいの量で調理ができるからメニューにも幅が出せる。もちろん刺身やうなぎが出た翌日はね、リンもカリウムも抑えたメニューを出すようにしています。

それから、もう少し言うと体重の増加については「2、3、5」と伝えています。

よしい 「2、3、5」ですか?

石川院長 透析間の体重増加については「できれば2kg、最大3kg、5kg以上は一大事」で管理する、と患者さんには指導しています。「1、2、6」と「2、3、5」、こうやって簡単なことを繰り返すだけです。難しい言葉で指導してもダメで、簡単な言い方をすればきちんと伝わります。

所長 患者さんへの食事や体重管理の指導はどの病院やクリニックでも苦労されていることだと思いますが、大島記念嬉泉病院ではさまざまな工夫をされているのが分かります。

石川院長 うちでは食事の影響が強いカリウム、リン、カルシウムに関しては毎週血液検査をやってデータをお渡ししています。それだけやってもちゃんと聞いてくれるか分からないですが…。でも、それくらい頻回にすると患者さんは検査結果を持ち帰って、いつでも自分の食べた食事を振り返ることができます。2〜3週間に1回の血液検査では足りません。何を食べ過ぎたのかは本人が一番知っていることですから。それから体重を量るときは栄養科の職員が患者さんに声をかけます。

よしい 栄養科の方が体重を見るのですか?

石川院長 きちんとした考えで食事を出したりするわけですから、体重が増えすぎちゃった責任は、患者さん半分、栄養科半分と考えているのです。そこで患者さん一人一人に栄養科の職員がコメントを伝えるのです。

よしい それは「今日は食べ過ぎだから、もっと気をつけましょうね」というように指導するのですか?

石川院長 そんなこと繰り返し言っていても患者さんはなかなか聞かないですよね(笑)。透析施設というのは劇場型診療で全部筒抜けですから、そこを有効に使います。例えば、体重のコントロールがしっかりできている患者さんには、それこそみんなに聞こえるように「素晴らしいですね! しっかりできていますね!」って大きな声で褒めます。でも、体重が5kg、6kg平気で増えてくる患者さんにはあえて耳元で囁く。「大丈夫?」くらいをボソッと言うと、患者さんは「なんで自分だけ囁くんだろう? 」ってちょっと不安になってくる。自然に数日後には本人から栄養指導を受けに来てくれます。

所長 治療食レストランは患者さんだけではなく、家族の方も喜ぶと思います。腎臓病や透析用の食事の作り方はなかなか実物を見る機会がないですし。

石川院長 教育的な目的はありますね。患者さんは入院すればどんなものを食べればいいか、なんとなくは分かるんだけれど、家族の人が病院の食事を食べる機会はなかなか無いでしょう。治療食レストランでこういうものだと分かれば作りやすくなりますね。

今、地域の医療に取り組んでいると老老介護の問題があちこちで出てきています。患者さんに限らずその家族の人たちも何らかの疾患の予備軍です。腎臓病食はすべての治療食の基本だと私は考えています。塩分も控えめだし、カロリーも考えてある。高血圧、コレステロール、糖尿病、心臓病、脳梗塞と、腎臓病食を食べることでこれらの症状が緩和されることは十分ありえることです。ただ、肝臓病だけは腎臓病食ではダメで、これに野菜や果物を加えてビタミンや、良質な蛋白質を摂る必要があります。でも、これは基本の食事に加えるだけだからそんなに難しいことではないです。

所長 大島記念嬉泉病院の今後の取り組みや計画していることなどありましたらお聞かせください。

石川院長 ピアッツア大島をもっと賑やかにしていきたいですね。縁日のような、いるだけで楽しくなる場所を目指したい。ちょっと立ち寄ってみたら楽しかったと思える、暖かみのある場所にしたいです。高齢者の多い病院だから明るい雰囲気の病院にしていきたい。透析という重い治療をしに行って帰るだけの施設にとどまらず、元気と開放感を吸って今日も元気で良かったとホッと一息ついて、また来院するのが楽しみになるような思いで帰っていただけるような、そんな施設にしたいんです。

普段、白人女性のスタッフが患者さんにお弁当を配ったりしているけれど、この人に英会話サロンを任せて、近所の若い人たちにも立ち寄ってもらえる病院にしたいです。健康教室は解放している時は無料で使えるようにしているので「あそこに行けば体も鍛えられるし、健康な食事も食べられて、英会話サロンもできる」と地域の人たちが立ち寄ってくれて賑やかになってくれればと思います。老老介護といった問題を抱えた地域にある病院として、賑やかな場所、楽しめる場所を提供するのが我々の使命です。

所長 なるほど。病院の外から見えた明るい空の壁紙の理由が分かったように思います…。

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リハビリ/健康教室ではさまざまなトレーニング器具があり、患者だけでなく一般の方も利用できる

【取材記者感想】

大島記念嬉泉病院の取り組みは単純にサービスの提供ということではなく、長く透析治療を続けていかなくてはならない患者さんの精神的な自立を目指していると感じました。治療という受け身の生き方ではなく、生きることに前向きなれるような工夫があるのです。もし「透析施設は透析だけをする場所」だと患者さんが考えてしまったら透析施設はとても寂しい空間となってしまいます。もちろん患者さんにとって透析を受けることはとても大切なことですが、その大切な場所をさらに楽しく賑やかな場所にして、患者さんが透析を受けながらも楽しく生きることができるようにしたい、そして地域から愛される病院に育てようという石川院長の強い思いを感じました。

次回のPart2では治療食レストラン『たね』のメニューの実食レポートと、リハビリ/健康教室の体験レポートをお送りします。お楽しみに。
よしいなをき

よしいなをき
透析歴7年になります。透析はしていますが普段はスポーツ自転車に乗って 体を鍛えています。 仕事は、平凡なサラリーマンですが、透析の時間を利用して、ブログを書いたり、小説を書いたりしています。透析は月、水、金の夜間にしているので、その時間にメッセージや、 コメントなど頂けるとうれしいです。

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