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食生活研究室

腎臓病・透析患者さんも無理なく減塩食を楽しめる!
口内で塩分を後付けする減塩新技術”ソルトチップ”

2020.11.2

文:s.yuri

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日本人は塩分過剰…塩分摂取量の7割は調味料から

減塩商品がよく見かけられるようになったり、食育や食生活の見直しに関する啓発イベントが開催されたりと、減塩の動きが広まっています。厚生労働省の「平成30年国民健康・栄養調査」によると、2018年の食塩摂取量の平均値は10.1g(男性11.0g、女性9.3g)で、1995年(13.2g)以降は減少傾向にあります。しかし、厚生労働省が定める1日の塩分摂取量の目安は男性7.5g未満、女性6.5g未満であることを踏まえると、現代人はまだまだ塩分過剰なのです。

人は塩分の7割近くを調味料から摂取しているのをご存じでしょうか?醤油や塩、味噌をはじめ、ドレッシングやソースなどにも塩分は多く含まれています。

▼調味料の食塩相当量例(実際の量は商品によって異なります)

調味料 大さじ一杯あたりの
食塩相当量
小さじ一杯あたりの
食塩相当量
精製塩 17.9g 6g
顆粒和風だし 3.7g 1.2g
うすくち醤油 2.9g 1.0g
こいくち醤油 2.6g 0.9g
だし入り味噌 2.5g 0.8g
オイスターソース 2.1g 0.7g
ウスターソース 1.5g 0.5g
和風ドレッシングタイプ調味料 1.1g 0.4g
めんつゆ(ストレート) 0.6g 0.2g
ケチャップ 0.6g 0.2g

出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

上記の表から見てわかるように、日本人にとって身近な調味料は少量でも塩分を多く含んでいます。日本食品標準成分表には記載されていませんが、コンソメ(固形タイプ)は1個で2.3g、顆粒ガラスープは小さじ一杯で1.3gです。

塩分を摂りすぎると腎臓に負担がかかってしまうため、腎臓病・透析患者さんの1日の塩分摂取量は6g未満が望ましいとされています。しかし、単純に食塩の量を減らし、減塩商品を導入すれば良いわけではありません。

減塩料理の風味に満足できなければ、調味料を追加してしまい塩分過剰になる可能性があるほか、食事の満足度が下がって食欲が低下し、ひいては体力の低下を招く恐れがあります。また、現在よく目にする減塩商品は、食塩(塩化ナトリウム)の代わりに塩化カリウムを使用しているケースが多く、カリウム制限のある透析患者さんには注意が必要です。こうした面を踏まえると減塩食を作るのはとても大変なのです。


じんラボアンケート:6割が塩分管理に悩み…

じんラボは塩分管理に関するアンケートを実施。63名の方から回答をいただき、うち39名という6割以上の方に悩みがあることが分かりました。

悩みの詳細(複数回答可)としては、「外食の際、メニュー選びに悩む」が最多の28名で、次いで「減塩商品の価格が高い(18名)」、「塩分計算が面倒(18名)」、「一日の塩分摂取目安量(6g)を超えてしまうことが多い(16名)」、「減塩料理の味が物足りない(10名)」でした。

具体的な悩みとしては、以下の声が挙がりました。

「家での食事は家族で全員分まとめて作るので、私の分だけ減塩にするというのを面倒がられます。特に子供達は育ち盛りなので、味付けの濃いものを好みます」(50代男性/長野県/透析歴11~20年)

「既製品の塩分量が計算しにくい」(80代女性/福岡県/透析歴3~5年)

「塩分を考えると、好きなスナックやおせんべいをあまり食べられないのが悩みです。あと外食のときにメニューと塩分でいつも葛藤してしまいます。何も考えずに食べたいものを純粋に選びたいです」(40代女性/東京都/透析歴1~2年)

「塩分がナトリウム計算、一袋あたり、100gあたりと計算が非常に面倒に思う」(40代男性/石川県/透析歴6~10年)

「昼食によく弁当を買って食べますが、塩分表示を確認しても、食べてみるとそれ以上に辛く感じることが少なくありません。塩分表示を信頼していいものかと思ってしまいます」(60代男性/京都府/透析歴6~10年)

悩みはないと回答した方の理由(24名、複数回答可)としては、「薄味の食べ物が好きだから(16名)」が最も多く、ほかには「あまり外食をしないから(10名)」、「自炊でうまく塩分管理できているため(5名)」が目立ちました。

「透析導入時期に同じ病棟の高齢の女性から『塩気は水を呼ぶから気をつけな』とアドバイスを受けた。当時はよくわからなかったが徐々に実感することがあり、注意するようになった。先輩のアドバイスは貴重だと思う」(70代男性/神奈川県/透析歴21~30年)

「長年の薄味に慣れたせいか塩っぱいものは食べられません」(60代男性/東京都/透析歴21~30年)

悩みはないと回答された方の中にも「たまに塩辛いお煎餅をバリバリ食べたくなる」とこぼされた方や、「お醤油は取り寄せているが、減塩、低カリウム低リンのお味噌で良いものがなかなかない」という声を上げる方も複数見られました。

このように、減塩を意識した生活を長年送るのはなかなか難しく、時に塩味の強い食べ物を食べたくなることもあるようです。

塩分制限が必要でも、無理なく食事を楽しみたいー。神奈川県川崎市に本社を置く慶應義塾大学発のベンチャー株式会社LTaste外部サイトへ(エルテイスト)は減塩に悩みを持つ患者さんの気持ちに寄り添い、腎臓病・透析患者さんもストレスなく、そして効率よく塩味を楽しめる「ソルトチップ外部サイトへ」を開発。今年(2020年)8月に販売を開始しました。


食べ物の塩分はほとんどが“無駄”?
口内にソルトチップを貼り付け「塩味の後付け」で減塩に成功

実は、食品に含まれる塩分のほとんどが舌に触れない“無駄な塩分”です。

舌には、「味蕾(みらい)」と呼ばれる味覚を感じる器官が数千個と存在します。味蕾に接した唾液の食塩濃度で塩味を感じられるのですが、舌に触れない食べ物内部などに含まれる塩分は塩味に関与しません。つまり過剰で無駄な塩分なのです。

味覚のしくみ

研究の過程でその点に気づいたLTasteの代表・東和彦さんは、塩味を感じるために必要な塩分だけを口内で得られれば、大幅に塩分摂取量を減らすことができると構想。医師や管理栄養士と連携を取りながら研究開発を重ね、腎臓病患者さんにサンプルを試してもらって改良するなど実に6年費やし、今年8月、「ソルトチップ」の販売開始に結びつけました。

ソルトチップ

ソルトチップは、口内の上あごに貼り付けて塩味を後付けする、新しい減塩サポート食品です。7.5mm四方、厚さ1mm、重さ0.1gの微小チップに0.04gの食塩が含まれています。ソルトチップを舐めることで塩が溶け出すため、塩を使っていない料理でもほど良い塩味が感じられ、食事を楽しむことができます。

ソルトチップの装着方法はいたって簡単です。無塩(または減塩)料理を食べる前に、舌の先端にソルトチップを載せて上あごにソルトチップを軽く押し付けるだけ。あとはソルトチップをなめながら食事を楽しみましょう。
ソルトチップに含まれる食塩0.04gはわずか食塩3~4粒分ですが、ソルトチップを舐めたり唾液を経由したりすることで味蕾が塩分を感知し、十分な塩味を感じることができます。

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ソルトチップを貼る位置は自分が舐めやすいと思う場所で大丈夫です。探して調節しながら使ってみてくださいね。


塩分を20分の1低減!
減塩の具体例と相性のいい料理とは

ソルトチップを使うことでどれくらい塩分をカットできるのか、具体例を見てみましょう。

まずは、塩おにぎりを2つ食べた場合で比較してみます。塩おにぎり1つの食塩はおよそ1gなので、2gの食塩を摂取することになります。一方でソルトチップを使う場合はおにぎりに塩を振る必要がなくなるため、2つ食べても食塩量はソルトチップ1粒に含まれる0.04gのみで、20分の1まで減らすことができるのです。

野菜炒めで比較した場合は、通常であれば豚肉に含まれる食塩のほか、醤油や鶏がらスープの素といった調味料の食塩が加わって食塩相当量は1.6g(1人前)ほどになりますが、無塩調理してソルトチップを使うことで0.1gまで減らすことができます。

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ソルトチップは特に和食と相性が良く、例えば煮物や焼き魚、目玉焼き、唐揚げ、とんかつ、炒め物、おにぎりなど幅広い料理に活用できます。塩の味付けだけでなく、ソースなどの調味料の代用としても活躍します。

ソルトチップが溶け切るのは1個あたり約5分間。1品ずつ使用するのにちょうどよい時間なので、塩味以外の料理を食べる際にも邪魔しません。もしソルトチップが溶け切る前に取りたい場合は、歯ブラシなどでこすることで簡単に取り外し可能です。


使い続けやすい価格も魅力

体のことを考えて減塩を始めても、金銭的な負担が大きいと続けづらくなります。食塩の代替品を使っても塩分量を減らすことはできますが、それでも減らせる塩分の量にはどうしても限界がありますし、先述したように減塩商品の中には腎臓病・透析患者さんは注意が必要な塩化カリウムが入っているケースが多いのが実情です。

その点、ソルトチップは1袋(20粒入り)税込み690円と低価格。使用量によって差は生じますが、4袋でおよそ1カ月分の食事に活用できるため、1カ月分は2760円と金銭的な負担が少ないのが魅力です。価格が高いと日常的に使うにはハードルが高くなってしまうため、価格を抑えたそうです。

原材料はほとんどが塩で、口内にしっかり装着させるために粘着成分でコーティングされています。塩化カリウムは入っていませんし、ストレスなく大幅に塩分をカットすることができることから、腎臓病・透析患者さんの大きな味方と言えるでしょう。

ソルトチップの取り扱い上の注意

  • ソルトチップは乾燥に弱いため、包装袋の中で保存してください。
  • 一度の食事中に複数個使用しても問題ありませんが、総塩分摂取量にご注意ください。
  • お子様やご高齢の方は、喉に詰まらせないようにご注意ください。
  • チップが溶け切る前に外したい場合は、歯ブラシなどでこすってください。
  • 薬を服用中あるいは通院中の方、妊娠中の方は、医師にご相談の上ご使用ください。

6年間の開発期間 ― 販売開始までのモチベーションは

ソルトチップは、LTasteの代表・東和彦さんが所属していた慶應義塾大学・三木則尚教授の研究室で生まれました。この研究室は、人工腎臓を体に埋め込めるまで小型化し、透析治療の負担をなくすことを目的とした革新的な大型プロジェクトに取り組んでいます。

あるとき東さんは、人工腎臓プロジェクトの共同研究者である東京医科大学病院の菅野義彦主任教授との雑談から、腎臓病患者さんが厳しい塩分制限に苦しんでいる現状を知りました。
独自に行ったアンケート調査では、半分以上の腎臓病患者さんが薄味の減塩食に不満を感じていること、そして1日の塩分摂取量(6g未満)を守れていない方がかなり多くいることが分かったのです。「食事面で制限がある人にも、おいしくご飯を食べてもらいたい」その気持ちがソルトチップの開発のきっかけでした。

LTasteの代表・東和彦さん

発売に至るまで要した6年。モチベーションを保つのは大変ではなかったかと伺うと、「うまく進まなかったこともありましたが、その時は菅野教授の紹介でサンプルを使用してくださった患者さんのことを思い出しました。ソルトチップが完成したら使ってくれる方の顔が実際に浮かんでくるのはとても大きかったですね」と東さんは笑顔で語りました。
現状、減塩の手段は限られており、塩分制限のある方は薄味に慣れるか我慢するしかありません。そのため、患者さんは全く新しいソルトチップの技術に期待し、その声に東さん自身が励まされていたのです。

「研究者が自ら開発した商品を使ってくれる人に会い、意見を聞くことはなかなかできません。それに対し、私はテスト段階から実際に使ってもらえる人に会えて、多くの声を直接頂けたのはとても幸運でした(東さん)」


画期的な減塩アイディアに先行発売直後から大注目

医師や管理栄養士とも連携し、現場のニーズをしっかり把握しながら開発を進めました。ソルトチップの発想は、2016年度の慶應義塾大学医学部健康医療ベンチャー大賞(社会人部門優勝)をはじめ数々の賞を受賞しました。その画期的な減塩技術は、多くのメディアにも取り上げられています。

改良を経て、2020年6~7月にクラウドファンディングでソルトチップを先行販売。販売開始からわずか6時間で目標金額を達成し、300人以上もの購入者から「美味しく減塩できるようになった」「とても良い商品」といった声が届いたそうです。
同7月には、ソルトチップを3日間使用して食塩摂取量がどれだけ変化するかを知る「無塩生活キャンペーン」を実施。すると、平均で1日1g近くの減塩に成功しただけでなく、中には3g近く塩分摂取量が減少した方もいました。食事内容は参加者の自由にしたため、この結果に監修医からは「素晴らしい効果」と太鼓判を得たそうです。

LTasteの代表・東和彦さん

現在は公式サイトでのネット通販のみ外部サイトへですが、薬局や病院での販売も検討しています。10月現在で取り扱いを始めたクリニックがあるほか、関東圏の薬局とソルトチップ取り扱い開始の話を進めています。

「新型コロナウイルスの影響で想定よりも時間がかかりそうですが、一度使ってもらえればきっと多くの方が気に入ってくれることを確信しています。より多くの方に使っていただき、減塩に困っている方の少しでも役に立てるようこれからも頑張っていきたいです(東さん)」

LTasteのお問い合わせ先

株式会社LTaste外部サイトへ
〒212-0032 神奈川県川崎市幸区新川崎7-7
かわさき新産業創造センター225号室
ソルトチップ公式オンラインストア:https://store.ltaste.co.jp/外部サイトへ

【取材後記】

取材にあたり、東さんからソルトチップのサンプルをいただいたので、ライターの私とじんラボの宿野部所長でソルトチップを試してみました。
私はシンプルに白米で使用。装着はとても簡単でしたし、とても小さいチップなので装着の際はもちろん、食べている最中も邪魔に感じることはありません。使用感に関しては、しっかりとした塩味が口の中に広がりました。本当にこの塩味で塩分が0.04gなのか、と一緒に使用した家族も驚いていました。包装袋が市販サプリメントよりもコンパクトなので、外食や旅行先への持ち運びも手軽です。

宿野部所長は和食で使用しました。所長は以前、下の歯の裏に装着するタイプ(改良前)を試したことがあるそうですが、食事中の気になる感じが改良前より大幅に軽減されて、快適にかつおいしく・しっかりと塩味を味わったそうです。

「健康で美味しいを当たり前に」というミッションを掲げるLTaste。実は、ソルトチップのほかにも「醤油チップ」「甘みチップ」の開発も進めており、来年をめどに販売予定とのこと!食事管理が必要な方に寄り添った研究開発に、今後も目が離せませんね。

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s.yuri

s.yuri
じんラボのライター。大学卒業後、地元紙で主に教育や警察、司法、スポーツ、地域ネタを追いかける社会部記者として働き、その後夫の転勤に伴いゆるいフリーランスでライター・編集者として活動してきました。
学生時代から医療福祉に関する執筆に関わりたいと思っていたのが、十数年の時を経てじんラボでご縁をいただました。透析や腎臓病の勉強を重ね、少しでも元気の出る情報をお届けします。

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