じんラボリサーチ
【第4回】透析患者の腎がん罹患率は通常の方の15倍以上! 患者もほとんど知らない透析療法に潜む危険因子とは?
2017.4.24
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透析患者の死亡原因
実施概要
調査目的
日本人の最も多い死因は 「がん(悪性新生物)」です。
がん罹患率(新たにがんと診断されること)は年々上昇傾向にあり、2012年の統計(国立がん研究センターがん対策情報センター 最新がん統計)では、日本人が生涯で何らかのがんに罹患する確率は男性63%、女性47%です。
がんは部位により罹患率は大きく異なります。2012年の部位別がん罹患率は、男性では胃、大腸、肺、前立腺が多く、女性では乳房の罹患率が突出している中、「腎がん」を含む腎・尿路は全体のわずか2.6%程度と非常に低く、あまり耳にする機会もないのではないでしょうか。
腎機能が低下していく腎臓病・透析患者からすると、細胞が増殖する「腎がん」は一見無縁に思われがちです。しかし、透析が腎がんの発症に深く関係していることはあまり知られていません。
そこで今回は、「腎がん」の認知度の低さに警鐘を鳴らすため、腎臓病・透析患者の「腎がん」に対する意識調査を行いました。
調査方法 | WEBアンケート |
---|---|
調査エリア | 全国 |
調査対象 | 透析患者 男女 年齢不問 |
調査期間 | 2016年7月1日(金)〜2016年7月8日(金) |
回答者 | 93名(うち透析患者83名(89.2%)) |
調査対象詳細
性別 | ||
---|---|---|
男性 | 64 | 68.8% |
女性 | 29 | 31.2% |
年代 | ||
〜30代 | 6 | 6.5% |
40代 | 34 | 36.6% |
50代 | 32 | 34.4% |
60代 | 18 | 19.3% |
70代 | 3 | 3.2% |
80代〜 | 0 | 0.0% |
腎臓病との関わり | ||
CKDステージG1〜G3 | 2 | 2.2% |
CKDステージG4(保存期腎不全) | 0 | 0.0% |
CKDステージG5(透析を受けている) | 83 | 89.2% |
腎移植者 | 8 | 8.6% |
透析歴 | ||
1年未満 | 4 | 4.3% |
1〜2年 | 10 | 10.8% |
3〜5年 | 16 | 17.2% |
6〜10年 | 16 | 17.2% |
11〜20年 | 32 | 34.4% |
21〜30年 | 10 | 10.7% |
31年以上 | 2 | 2.2% |
透析していない | 3 | 3.2% |
(1)あなたは腎がんの経験がありますか(n=93)
1 | 手術して摘出した | 12 (12.9%) | |
---|---|---|---|
2 | 投薬治療中 | 0 (0.0%) | |
3 | 経過観察中 (疑いあり、検査中含む) |
4 (4.3%) | |
4 | 経験がない | 77 (82.8%) | |
5 | 分からない | 0 (0.0%) |
既に腎がんを経験している患者の割合は全体の12.9%、罹患疑いで経過観察中の方を含めると17.2%と、患者の5〜6人に1人は腎がんを発症する可能性があるようです。
(2)透析患者の5人に1人が腎がんを発症するといわれていることを知っていますか(n=93)
1 | はい | 30 (32.3%) | |
---|---|---|---|
2 | いいえ | 63 (67.7%) |
(3)定期的にエコーやCTスキャンの検査は受けていますか(n=93)
1 | 透析施設で 定期的に受けている |
47 (50.5%) | |
---|---|---|---|
2 | 透析施設以外で 定期的に受けている |
21 (22.6%) | |
3 | 不定期で受けている | 5 (5.4%) | |
4 | 受けていない | 20 (21.5%) |
(4)あなたは腎がんについて調べたことはありますか(n=93)
1 | 調べたことがある | 36 (38.7%) | |
---|---|---|---|
2 | 全く調べたことがない | 57 (61.3%) |
透析患者は通常週3回通院しますが、腎がんを見つけるためのエコーやCTスキャン等の検査を定期的に受けていない患者は26.9%にのぼります。
また「腎がんについて調べたことはありますか」の問いには「全く調べたことがない」が61.3%と、透析患者における腎がん罹患率は通常の方の15〜20倍と非常に高いにも関わらず、その関心度の低さがうかがえる結果となりました。
では、なぜ透析患者が腎がんになりやすいのでしょうか。
実は透析患者にとって生命線である「透析療法」自体ががんの危険因子なのです。
腎臓機能が低下して慢性腎不全になると、腎臓は萎縮してきます。そこに透析を行うと、後天性の腎嚢胞(じんのうほう)ができてきます。嚢胞の中は尿毒症を起こすさまざまな物質が濃縮された状態にあります。その物質の中には発がん性のものも多く含まれているため、がんが発生しやすいと考えられています。この腎嚢胞が多発した状態を後天性多発嚢胞腎(ACDK、以下ACDK)と言い、ACDKの発生は透析期間に比例します。3年未満で44%、3年以上で79%、10年以上では90%と次第に高くなります。つまり、透析期間が長くなるほど発がんリスクも高まるのです。
腎臓は「沈黙の臓器」と言われており、腎臓病の多くは症状が現れるのが遅く、ほとんど無症状で病気が進行します。腎がんにおいても症状は非常に乏しく、症状が現れた段階では肺や骨などの他臓器に転移しているケースも少なくありません。そのため他のがん同様に早期発見が重要ですが、腎がんの多くが発見される画像検査によるスクリーニングを行っているのは透析施設の半数という報告もあり、必ずしも透析施設で検査を実施しているとは限りません。
透析療法の普及と進歩で患者は長生きできるようになりましたが、その反面透析による合併症も伴います。高血圧、不均衡症候群、透析アミロイドーシスなどが主な合併症ですが、透析腎がんもその一つといって過言ではありません。
腎がんは早期に見つかれば転移も少なく、根治が期待できるがんです。透析患者は腎がんになる可能性が高いことを認識し、定期的な検査を受けることが重要です。
参考サイト
- 国立がん研究センターがん情報サービス がん登録・統計[がん情報サービス](2016/7 アクセス)
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