じんラボリサーチ
【第3回】透析患者の未婚率は約70%?! アンケート結果から分かる「恋愛・結婚」への苦悩とは?
2017.3.27
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実施概要
調査目的
週3回、1回4〜5時間程度の透析療法を生涯にわたって受けなければならない透析患者の皆さんは、健康な方と一見変わらないことから、日々生活していく上でさまざまな苦悩に直面しても一般的には理解されにくく、抱える悩みや困りごとは尽きません。
そして透析に関わる医療業界や企業は皆さんが困っているその本音を知ることで、最新治療やケアの方法、さらには商品開発等のアイディアやヒントを得ています。ところが、透析患者さんにとっては当たり前と感じる悩みも、こうした関係者にはほとんど知られていない現実を私たちは目の当たりにしました。
そこで今回は、普段はあえて口にすることもないであろう悩みを、皆さんの貴重な声として届けていくため『透析患者さんの知られざる悩みや困りごと』をテーマにアンケート調査を実施しました。
調査方法 | WEBアンケート |
---|---|
調査エリア | 全国 |
調査対象 | 透析患者 男女 年齢不問 |
調査期間 | 2016年6月1日(水)〜2016年6月8日(水) |
回答者 | 透析患者 75名(うち有効回答:71名) |
調査対象詳細
性別 | ||
---|---|---|
男性 | 46 | 64.8% |
女性 | 25 | 35.2% |
年代 | ||
〜40代 | 28 | 39.4% |
50代 | 25 | 35.2% |
60〜65歳 | 12 | 16.9% |
66〜70歳 | 5 | 7.1% |
71〜75歳 | 0 | 0% |
76〜80歳 | 1 | 1.4% |
81歳〜 | 0 | 0.0% |
透析歴 | ||
1年未満 | 5 | 7.0% |
1〜2年 | 10 | 14.1% |
3〜5年 | 18 | 25.4% |
6〜10年 | 14 | 19.7% |
11〜20年 | 15 | 21.1% |
21〜30年 | 6 | 8.5% |
31年以上 | 3 | 4.2% |
(1)透析生活で日常的に困っていることや悩んでいることはありますか(n=71)
1 | はい | 55 (77.5%) | |
---|---|---|---|
2 | いいえ | 16 (22.5%) |
(2)下記の設問で当てはまる項目はどれですか(n=71)
当てはまる | やや当てはまる | あまり 当てはまらない |
全く 当てはまらない |
対象外 |
---|---|---|---|---|
家族・友人① 家族が病気に対してあまり理解してくれない | ||||
8 (11.3%) | 16 (22.5%) | 24 (33.8%) | 21 (29.6%) | 2 (2.8%) |
家族・友人② 友人等の集まりに行けない、または行くことに躊躇してしまう | ||||
19 (26.8%) | 23 (32.4%) | 13 (18.3%) | 16 (22.5%) | 0 (0.0%) |
仕事① 就職先がない、またはなくて苦労したことがある | ||||
29 (40.8%) | 12 (16.9%) | 5 (7.1%) | 14 (19.7%) | 11 (15.5%) |
仕事② 自分に対し周囲の配慮が足りないと感じることがある | ||||
10 (14.1%) | 21 (29.6%) | 22 (31.0%) | 13 (18.3%) | 5 (7.0%) |
旅行① 透析が理由で旅行を断念したことがある | ||||
36 (50.7%) | 20 (28.2%) | 10 (14.1%) | 5 (7.0%) | 0 (0.0%) |
旅行② 旅先での透析がもっと気軽に出来れば旅行したい | ||||
32 (45.1%) | 21 (29.6%) | 12 (16.9%) | 6 (8.4%) | 0 (0.0%) |
恋愛・結婚① 病気が障害で恋愛や結婚がうまくいかなかったことがある | ||||
18 (25.4%) | 8 (11.2%) | 8 (11.2%) | 19 (26.8%) | 18 (25.4%) |
恋愛・結婚② 病気が理由で恋愛や結婚を諦めてしまっている | ||||
19 (26.8%) | 5 (7.0%) | 6 (8.4%) | 19 (26.8%) | 22 (31.0%) |
生活① 他人には自分が透析患者であることをあまり知られたくない | ||||
12 (16.9%) | 12 (16.9%) | 15 (21.1%) | 32 (45.1%) | 0 (0.0%) |
生活② シャントを守るために我慢や努力をしていることがある | ||||
24 (33.8%) | 21 (29.6%) | 20 (28.2%) | 6 (8.4%) | 0 (0.0%) |
【家族・友人】・【仕事】・【旅行】・【恋愛・結婚】・【生活】 という5つの分野においての代表的な項目で、抱える悩みとして最も「当てはまる」との回答が多かった分野は【旅行】でした。
透析患者と旅行
「透析が理由で旅行を断念したことがある」の問いに、半数以上の50.7%もの方が当てはまると回答しました。
当てはまる | 36 (50.7%) | |
---|---|---|
やや当てはまる | 20 (28.2%) | |
あまり当てはまらない | 10 (14.1%) | |
全く当てはまらない | 5 (7.0%) | |
対象外 | 0 (0.0%) |
また「旅先での透析がもっと気軽に出来れば旅行したい」には、当てはまる、やや当てはまる が合わせて74.7%と、患者の多くが気軽に旅行先で透析が出来ないことに苦悩を感じていました。
当てはまる | 32 (45.1%) | |
---|---|---|
やや当てはまる | 21 (29.6%) | |
あまり当てはまらない | 12 (16.9%) | |
全く当てはまらない | 6 (8.4%) | |
対象外 | 0 (0.0%) |
透析施設自体は全国各地にありますが、以下の条件がクリアになって初めて旅行先での透析を受けることが出来るのです。
- 臨時透析の受け入れをしている
- 予定している日時に空きがある
- 普段行っている透析条件(血流量、透析時間等)の受け入れが可能
通常の旅行の手配にこの透析施設探しの手間が加わるので、旅行自体が億劫になってしまうのです
透析患者と恋愛・結婚
【旅行】以上に深刻な悩みを抱えている分野が【恋愛・結婚】です。
「病気が理由で恋愛や結婚を諦めてしまっている」に、当てはまると回答された方は26.8%。
当てはまる | 19 (26.8%) | |
---|---|---|
やや当てはまる | 5 (7.0%) | |
あまり当てはまらない | 6 (8.4%) | |
全く当てはまらない | 19 (26.8%) | |
対象外 | 22 (31.0%) |
一見少なく感じますが、このアンケートに回答した患者の年齢層は50歳以上が60.6%、残りの約40%のほとんどは40代と考えられます。全体の31.0%が対象外(既婚者)なので、当調査における透析患者の未婚率は69.0%ということになります。
2015年の総務省「国勢調査」によると、25〜49歳までの未婚率は以下の通りです。
25-29歳 | 30-34歳 | 35-39歳 | 40〜44歳 | 45〜49歳 | |
男性 | 72.50% | 46.50% | 34.50% | 29.30% | 25.20% |
---|---|---|---|---|---|
女性 | 61.00% | 33.70% | 23.30% | 19.10% | 15.30% |
一般的な未婚率と比較しても、40代の透析患者の未婚率は倍以上です。
では、なぜ透析患者に既婚者が少ないのでしょうか。
人工透析は、腎臓病が進行した際に行う延命治療ですが、その病状や治療方法などの正しい知識は一般的にあまり知られていないため、「残された寿命が短い」「患者家族は看病が大変」などの誤ったイメージが先行しているようです。また患者は毎日制限のある生活を送らなければならず、もし患者のパートナーとなった場合の負荷はゼロではありません。こうした理由から、透析患者をパートナーとして受け入れることは敬遠されがちです。
しかし、愛情から来るお互いを尊重しあう気持ちがあれば、負荷を乗り越えるだけの関係性を築くことは十分に可能です。その関係性を築くためには、受け入れる側だけではなく患者自身の努力が大きく影響します。
生涯にわたる治療や制限のある生活から、患者がマイナス思考になることは少なくありません。ネガティブな思考は容姿や話し方、表情にも影響するため第一印象が悪くなり、せっかくの出会いの機会を自ら逃しているのではないでしょうか。一度悪印象を与えてしまうと、透析患者というハンデを抱えながら印象を好転させることはなかなか難しいでしょう。その結果「どうせ透析患者だから…」と自信をなくし、さらにマイナス思考に…、という負のスパイラルに陥ってしまいます。
自身の病気を受け入れ、正しく向き合い、ポジティブに生きること
ポジティブに生きることは患者にとって決して容易なことではありません。しかし患者と感じさせない前向きなエネルギーは、関わった人に「その人と向き合いたい」「病気を正しく知りたい」と思わせる原動力になります。
身体的な障害があっても、それが恋愛・結婚においての“障害”とさせない患者自身の生き方こそが、生涯のパートナーと巡り合うためのカギとなります。そのパートナーとの出会いは、守るものが出来る責任感、仕事への活力、苦悩へ立ち向かう力、チャレンジする気持ちなど、さまざまな気持ちや行動を起こし、それらは必ず社会にも還元されることでしょう。
参考サイト
- 総務省統計局「平成27年国勢調査 抽出速報集計結果」 (2017/3アクセス)
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