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夫婦間生体腎移植 〜繋がる想い〜

【第4話】ついに夫婦間生体腎移植へ・前編

2015.12.24

文:横山真三

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オペに向かう妻 この時の写真は全てピンボケになりましたオペに向かう妻 この時の写真は全てピンボケになりました

移植までの日々

ついに移植の日程が決まり手術に至るまでを振り返ると、妻からの提供を受けることに対して悩みに悩み、自問自答を繰り返し、時に自己嫌悪に陥っていました。それでも進んで来られたのは、妻の強い想いがあったからに間違いありません。

思えば妻は透析をしている私と結婚し、17年の歳月を共にしてきましたが、透析をしていない私、つまり健康な姿の私を全く知らないのです。「移植した姿がどう変わるのかが楽しみ」と言った言葉の重さに私は全力で応えるために「この先はもう元気になることだけを考えて、絶対驚くほど元気になってやる! 」と誓い移植の日を待ちました。


一足先に入院

手術予定日の8日前に私が一足先に入院して手術に備えます。この期間の検査などはほとんどなく「自己管理パンフレット」による看護師さんとのマンツーマン指導がほとんど毎日行われました。

この頃は移植を目前にしてついつい感傷的になりがちでしたが、この年の名古屋は例年にない降雪に見舞われたのです。それは南国育ちの私にとってこれ以上ない気分転換になる出来事でした。何度も外へ出ては携帯で動画や写真を撮影し、宮崎に残る子供達へ送ることに夢中になった術前の日々でした。

病院の外の雪景色病院の外の雪景色


妻の入院

手術3日前、ついに妻が入院してきました。妻が入院するということは子供達にとっては両親共に不在となるということで、それが移植手術のためであるということ、母親から父親へ移植を行うということを意味します。生まれた時から透析をしている父親しか見てきていない子供達は、多くを語らなくてもその意味をしっかり理解しているようでした。

そして私たち夫婦が不在の間、両家の両親は勿論のこと、沢山の方々のお力添えや、まわりの方々の協力があったからこそ安心して手術に臨めたことに感謝しています。

いよいよ妻が入院してきて、表面上は冷静に普段通りの自分でいようと努力しましたが、私の内心では言葉にできない思いが一杯でした。

その翌日から移植に向けて免疫抑制剤の服用が開始となりました。免疫抑制剤の服用は移植を受ける者にとって大変重要なことですので、服用開始からしばらくは厳しくチェックを受けます。時間になると看護師さんが薬を持って来てくれて、飲んだ後の包装は廃棄せずに看護師さんに返して確認してもらわなければいけません。このような服用管理は術後もしばらく続きます。


最後の透析

手術前日、ついに20年に及んだ透析にひとまずピリオドを打つ日がやってきました。この20年の間に結婚も経験し二人の子供にも恵まれ、透析を通じて多くの仲間とも知り合うことができ、決して悪い20年ではなかったな…など、いろいろな思いが駆け巡る中、透析に呼ばれました。

手術を明日に控え、宮崎から駆けつけてくれた姉と一緒に妻も透析室まで送ってくれました。目を真っ赤にした姉は私の手を握り「長い間本当にご苦労様やったね…」と。そして妻はニッコリしながら「最後の4時間、しっかり噛みしめて、思い出に浸ってきないよ! 」とあくまで明るい言葉をかけてくれ、私はベッドの上で泣き笑いをしながら準備しました。姉と妻が透析室を去ると、左腕から延びる2本の赤いチューブ、赤く染まったダイアライザ、リズムよく回り続けるポンプ、全てが愛おしく思えてきました。そしてありがたくて「この透析で俺の命を繋いでくれていたんだ…」とあらためて感謝の気持も湧いてきました。

さすがに眠ることができずに時間は過ぎていき、回収30分ほど前に再び姉と妻が来てくれました。

妻と共に、最後の透析妻と共に、最後の透析

この最後の透析の担当看護師さんも偶然宮崎出身で、回収前に夫婦の写真を撮っていただきました。回収を進める技士さんと看護師さんを感慨深い気持ちで見つめながら透析を終えました。

さすがにこの日の夜はなかなか寝つけませんでした。

次回は『ついに夫婦間生体腎移植へ・後編』です。

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横山真三

横山真三
26歳で透析導入となり途中腹膜透析(CAPD)も経験しました。CAPDもノントラブルで経過しましたが、腹膜を守るために8年で終了し再びHDへ。縁あって透析室の看護師さんと結婚して17年間、妻からは常に腎臓提供を申し出てくれていましたが、妻の体にメスを入れることなど考えられず、気持ちだけもらっていました。
そんなある日「この方たちなら妻を任せることができる! 」という心から信頼できる先生方との出会いに恵まれ「夫婦間生体腎移植」へ踏切ました。現在移植後4年を順調に経過しています。

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