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わかりやすい臓器移植法

2013.4.1

文:だいちゃん

緑の文字の用語をクリックすると用語解説ページに移動するよ。

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皆さんは、「臓器移植」という言葉を聞いたことがありますか? 言葉だけなら聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。そして、「臓器提供カード」というものの存在についても、

「聞いたことはある。」
「所持しようと思ったことはある。」
「実際に所持している。」

さまざまな方がいると思われます。しかし実際には、やはりどこか

「死亡後とはいえ、自分の臓器を提供するのは嫌だ。」
「自分の家族の遺体は綺麗なまま火葬したいから傷つけるのは嫌だ。」

このように考えている為に、“臓器提供”そのものに抵抗がある方も多いと思われます。

この記事を書いている私自身は臓器提供を待っている側の人間です。そのような人間が何を言っても、私利私欲の為に臓器が欲しいだけだろ、などと思われるかもしれません。しかし、まず臓器提供の根本の法律(つまり、決まりごと)である、

「臓器移植法」

について私なりに書かせていただきたいと思います。

イメージ


改正臓器移植法が施行されました

1997年に成立した臓器移植法は、心臓停止後に加え、脳死から臓器提供ができるようにした法律です。

しかしながら97年の法律では「臓器提供者が生前に、文書で提供の意思を示している場合に限っている」等、提供に至るまでの条件が厳しかったため、臓器提供は思ったほど多くは可能になりませんでした(年平均で7件未満)。

アメリカでは年間に6000件程度、脳死患者からの臓器提供が行われているのに対し、日本はまだまだ遅れているのが現状です。そのため臓器移植希望者がアメリカなど海外に渡航し、海外で臓器移植手術を受ける例が多くみられます。当然海外では日本の健康保険はきかないので、旅費や手術費を合わせると数千万円もの費用がかかることも珍しくありません。

そういった臓器移植の必要な患者さんやその家族の負担を減らすため、かつ臓器が少しでも提供されやすいよう、今回の法改正となりました。

法律が改正されてからというもの、徐々にではありますが臓器提供者が増え、他人からの臓器提供が必要な手術が行われる回数が増えてきているようです。

同法が改正される前は13年間で脳死による臓器提供者は86例でしたが、改正後は約1年で60例近くも提供がありました。その多くは本人が書面で意思を示す機会がなかったものの、家族が承諾したもの、つまり法改正が行われる前なら患者さんは提供を受けることができないケースがほとんどです。

また、内閣府の世論調査では、40%以上の方が臓器提供をしても良いと回答しており、少ないとは言え約5%の方が意思表示カードに提供すると記入しています。

参考までに、こんなニュースもありました。

“脳死下の臓器提供条件を大幅に緩和した改正臓器移植法が2011年7月17日に全面施行されてから、17日で丸1年。本人意思が不明でも家族承諾により脳死での提供が可能になったことで、年間提供数は急増。移植でしか助からない200人以上の患者の命を救うことができた。”
−改正臓器移植法施行1年 家族承認で急増 245人に提供 15歳未満1例、浸透なお課題−外部サイトへ
産経ニュース2011.7.17より一部引用

以前よりは増えてきたとはいえ、まだまだ一般の方へ知られていないのが現状です。そこで、まず臓器移植法というものがどういうものなのか、どう改訂されたのかを知っていただく為に、改正前と改正後の臓器移植法について説明します。


改正のポイント

改正の大きな3つのポイントは以下の通りです。

  • 親族への優先提供が認められた
  • 本人の臓器提供の意思が不明の場合、家族の書面による承諾があれば臓器提供が可能になった
  • 15歳未満の小児から臓器提供が可能になった
現行法(改正前) 改正法 施行日
親族に対する優先提供 ○当面見合わせる(ガイドライン) ○臓器の優先提供を認める 平成22年
1月17日
臓器摘出の要件 ○本人の書面による臓器提供の意思表示があった場合であって、遺族がこれを拒まないとき又は遺族がないとき ○本人の書面による臓器提供の意思表示があった場合であって、遺族がこれを拒まないとき又は遺族がないとき
又は
○本人の臓器提供の意思が不明の場合であって、遺族がこれを書面により承諾するとき
平成22年
7月17日
臓器摘出に係る脳死判定の要件 ○本人が
A 書面により臓器提供の意思表示をし、かつ、
B 脳死判定に従う意思を書面により表示している場合
であって、家族が脳死判定を拒まないとき又は家族がないとき
○本人が
A 書面により臓器提供の意思表示をし、かつ、
B 脳死判定の拒否の意思表示をしている場合以外の場合
であって、家族が脳死判定を拒まないとき又は家族がないとき
又は
○本人について
A 臓器提供の意思が不明であり、かつ、
B 脳死判定の拒否の意思表示をしている場合以外の場合
であって、家族が脳死判定を行うことを書面により承諾するとき
小児の取扱い ○15歳以上の方の意思表示を有効とする
(ガイドライン)
○家族の書面による承諾により、15歳未満の方からの臓器提供が可能になる
被虐待児への対応 (規定なし) ○虐待を受けて死亡した児童から臓器が提供されることのないよう適切に対応
普及・啓発活動等 (規定なし) ○運転免許証等への意思表示の記載を可能にする等の施策
出典: 厚生労働省:政策レポート(臓器移植法の改正について) 外部サイトへ (2012/1 アクセス)

[2] 親族に対する優先提供

つまり、腎臓の病気を患っている子供を抱えている親御さんが遺言書などに、

「自分が死んだときは息子に移植してくれ。」

などと書いていたとしても、以前の法律ではそれは不可能でした。しかし、2010年1月17日からは、臓器を提供する意思表示に併せて、親族に対し臓器を優先的に提供する意思を書面により表示できるようになったため、それが可能になりました。親族としては知らない誰かにあげるよりも、せめて自分の家族へ提供したいと考えるのが一般的ですよね。

[2] 臓器摘出の要件

本人が書面による臓器提供の意思があった場合、つまり臓器提供カードなどで意思表明をしていた場合に、まず臓器提供の第一条件をクリアです。しかし、次にその意思表明者(臓器提供カードを持ってい人)の親族がOKを出さなければ、その人から臓器を取り出して臓器提供をすることは出来ませんでした。

ここまでは良いのですが、本人の意思が不明であった場合、つまり「臓器提供カードに記載不備があった」「臓器提供カードを持っていなかった」などの理由があれば、たとえ生前に「私が万が一死亡した場合には臓器を提供します。」と口頭で発言していた場合でも、臓器提供は不可能でした。せっかく救えるはずだった命が、たった紙切れ一枚の記載不備で助からなくなっていたわけです。

しかし、改正後は以前の条件はそのままですが、本人の意思が不明な場合でも親族がOKを出せば臓器提供が可能になりました。つまりたとえ本人が臓器提供カードを所持していなくても、親族が生前に亡くなった自分の親族が臓器移植をしたいといつも言っていたなど、そのような意思を親族が受け継ぐことが出来るようになりました。

つまり、臓器移植カードがなくても、亡くなった方の親族が臓器提供を承諾するか、断るかを選ぶことが出来るようになったのです。

[3] 臓器摘出に係る脳死判定の要件

以前は、「臓器提供の意思表示」と「脳死時の臓器提供の意思表示」両方、書面や臓器提供カードなどで意思表示をしていて、尚かつその方の親族がOKを出さないと臓器提供が出来ませんでした。文章を読んでみても伝わるかもしれませんが要するに、

「脳死状態の人から臓器提供を行う」のはかなりハードルが高かったのです。

しかし、改正後は、本人の意思表示が不明な場合でも、親族が脳死状態の自分の親族から臓器を提供するかどうかを決めることが出来るようになりました。上記には書きませんでしたが、これは以前よりも親族に精神的負担をかけるような法律になってしまった、という側面もあります。

[4] 小児の取り扱い

以前は、15歳未満の子供の臓器を摘出することが出来ませんでした。なので、心臓病を抱えた15歳未満の子供は海外で臓器提供者を待つしかなかったのです(海外では日本の法律は一部を除いて提供されませんので、海外では臓器移植が可能でした。しかしながら、当然のように保険が効かないため、心臓移植には1億円以上ものお金がかかっていました。)。

[その他]

以前は、何も規定のなかった「虐待されて死亡した児童」から臓器摘出が不当にされないように配慮されるようになりましたが、本人による事前の意思表示がなくても臓器提供できるようになったため、身寄りのない人など、脳死後移植を反対できる親族のいない人は、事前に拒否の意思表明をしていなければ、脳死になるとそのまま他人の判断で勝手に臓器提供者になってしまう可能性があります。


臓器移植の意思表示

運転免許証、健康保険証、日本臓器移植ネットワークのウェブサイト、フェイスブックなど、臓器提供カード以外のところで臓器移植の意思表示が出来るようになりました。


臓器移植について考える

下記サイトを参考に臓器移植についての知識を深めてみませんか?


最後に

臓器移植というものは、様々な人間の感情の交わる繊細な問題であります。また、死生観や倫理観から臓器移植問題から目を背ける方もいらっしゃるかもしれません。

成人病などが蔓延していたり、この不景気で過酷な労働を低賃金で強いられている人が多いという理由からも、これからもっと臓器移植の必要な方が増えていくのではないでしょうか。

確かにデリケートな問題ではあります。しかし、この記事がきっかけでもいいです。少しでも「臓器移植」というものについて考え、知識を深めてみるのはいかがでしょうか。

だいちゃん

だいちゃん
フリーライター1984年生まれ♂ 人工透析患者でありながら健常人以上にパワフルに活動するスーパー障害者。年間500冊を超える書籍を読む読書マニア。お笑い好き。座右の銘は『障害は個性』
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