生活の“可能性”を広げよう腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
【第12話・最終回】生活の“可能性”を広げよう
2018.12.17
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この連載の執筆テーマついての打ち合わせで「就職や結婚についても書いて欲しい」と所長に相談されました。けれど、それだけでは恥ずかしいので、最終回として「私の生活全般の考え方」についてお話をしたいと思います。
ハンディキャップを抱えながらの生活
透析をしながらですと、いろいろなハンディキャップを抱えながら生活することになります。まず透析自体がハンディキャップですし、併せて行う食事や飲水の制限、これらも大きなハンディキャップですね。その上、透析後の疲労感、倦怠感、それ以外のさまざまな体調不良…。
病院で言われる対応策は「除水量を下げる」、「飲水を減らす」などです。これらは透析中の負担の軽減のための対策ですが、除水が少ないからといって、不調が起きないのかと言われると…、起きますよね。
そんなこんなで日常生活もままならないのに、生活以外のことをするなんて…と悲観的になっている方も少なくないと思います。
そんな状態でましてや旅行だの、就職だの、結婚だの、なんてありえないとすら思いますよね。
自己嫌悪の毎日、私も最初はそんな思いを抱いたうちの1人でした。
就職と結婚
現実問題としてまず就職。元々お勤めしていて発症した方ならそのまま働き続けることもありますが、これから就職という方となるとハードルは一気に跳ね上がりますね。まともに雇用してくれる会社はそう多くないように感じます。
学校だってそうです。高校までは受け入れてくれるでしょうか。大学では、表立って口にはしませんが、卒論などを受け持つ教授は嫌がる人もいます。まして進学となると…。
結婚も同様です。嫌がる方、嫌がるご両親はいらっしゃいます。これは事実です。じんラボの「しゃべルーム(コミュニティ)」でも、身内からの理解が得られない体験を話している方がいらっしゃいます。
ただ、あきらめないでください。
まず、世の中は広いんです。就職にしても、結婚にしても、あまり気にしない方もいます。私の指導教授がそうでしたし、妻もそうです。その後職場に受け入れてくれた上司の方々も。この方々には感謝してもしきれません。
広い世界、こういった方がいるのもまた事実です。おかげで諦めていた大学院にも行けましたし、卒業もできました。その後は就職して今まで食い繋いでいます。
その中で結婚もしましたし、今は楽しく生活させてもらっています。
一歩進んで行動してみよう
もちろん私も最初からこんな理解がある方々に出会えた訳ではありません。この裏には「ダメ」と言って受け入れてくれない多くの方がいたのです。
就職活動の時には、その度に数10から100社宛近い応募書類を出しました。一歩進んで行動してみると、状況が変わることがあります。
もちろん、体調と相談してからです。こちらも慌てずゆっくり、体力、筋力を整えてください。
例えば除水量を減らすには、飲水のイン側だけでなく、汗などのアウト側を整えるのも手段です。そのためには体力をつけ、筋肉量を増やすことです。するとどんどん動けるようになり、食事や飲水の制限がより緩和されます。
少し行動できるようになると、思考や目が外に向くようになります。
そうしたら旅行でも計画してみてください。まずは日帰りの近場から、歩いて近くのお店へ行くのでもいいでしょう。段々距離と時間を延ばして、最終的に臨時旅行透析を受けるぐらいまで挑戦してみましょう。すると、ここで時間と距離の余裕が生まれます。
その次は就職したり、透析とは関係がない人とのお付き合いを始めてみましょう。透析だけの時代より、生活にハリが生まれます。また仕事や結婚生活などを全うするために、より透析に真剣に向き合うことができるようになり、治療に対するモチベーションも上がります。
生活に余裕を持ち、透析も自分の選択肢の1つに
私が言いたいのはつまり、生活にスラック(余裕)を持ちましょうということです。生活がいっぱいいっぱいの状態だと、最低限のこと以外何もできなくなります。
余裕が無いと、いろいろなことが自分の選択ではなくなります。時間はもちろんのこと思考や選択も、全て奪われてしまうことになるのです。
たった一つの一度きりの人生なのですから、透析も選択肢の1つにしちゃいましょう。透析は生きるための手段の1つなんです。決して目的でも目標でもありません。
「自分が自分の意思で望んだ人生を歩むために、透析受けてやっている」ぐらいに思っちゃいましょう。
出来ない理由を探すより、出来るにはどうしたらを考えると楽しいものですよ。
私のこの体験談が、読んだ方のお1人でも考え方のベクトルを変えることができたら幸いです。
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