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基礎知識

慢性腎臓病(CKD)治療、その現在地

2026.5.26

文:ndeco

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監修:横浜市立大学附属病院 腎臓・高血圧内科​ 診療講師 小林 竜 先生

緑の文字の用語をクリックすると用語解説ページに移動するよ。

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慢性腎臓病(CKD)の治療は、新しい薬の登場だけではなく、CKDが「どういう病気なのか」という考え方そのものが変わったことで、内容も大きく変わってきました。

CKDという考え方が国際的に整理されたのは2002年。それから現在まで、CKDの捉え方と治療がどのように変わってきたのかを見ていきます。

食事

運動

日常管理

2002–2005

CKDという概念の定着

CKDという共通の見方が広がる

バラバラだったさまざまな腎臓の病気を「慢性腎臓病(CKD)」という共通の枠組みで捉える視点が広がり始める。 早期発見して、定期的な検査などで経過観察するという発想の土台ができた時期。

血圧を整えて腎臓を守る

血圧や尿蛋白を抑える薬が、腎臓を守る治療の中心になる。

まずは塩分を控えることから

食事では、塩分やたんぱく質の摂り方に気をつけることが大切にされる。

運動はまだ慎重に考えられていた

腎臓に負担がかからないよう、運動は積極的にすすめにくい時期だった。

通院や服薬を続けることが基本に

血圧を測る、薬を飲む、通院を続けるなど、基本的な管理が重視される。

2010–2018

全身リスクとしての定着と新薬の芽

腎臓だけでなく、全身リスクとして捉える

腎臓の機能(GFR)と尿蛋白(アルブミン尿)を組み合わせて評価することで、腎臓の状態だけでなく、心臓病や死亡のリスクまでいろいろなリスクをまとめて見る考え方が整理される。CKDが「全身とつながる病気」として定着した時期。

腎臓だけでなく、心臓や血管も守る

腎臓に加えて、心臓や血管のリスクも一緒に考える治療が広がる。

食事と生活全体を見直す

塩分だけでなく、体重、血糖、脂質なども含めて整えることが大切になる。

無理のない運動を取り入れる流れへ

病状を見ながら、できる範囲で運動を取り入れる考え方が広がる。

早く見つけて、続けてみることが大切に

健診や尿検査で早く気づき、通院を続けることの意味が大きくなる。

2019–2022

現在の治療の潮流の決め手となる大きな転換点

進行を抑える病気へ

CKDは「見守る病気」から「介入して進行を抑える病気」へと大きく前提が変わる。今の「早期発見・早期治療」の流れは、この時期に分かったことによって強く後押しされた。

腎臓を守る薬が登場

SGLT2阻害薬により、腎臓を守る治療が大きく前進する。

早い段階から整える意味が大きくなる

薬だけでなく、減塩、体重管理、血糖管理なども早めに取り組むことが大切になる。

運動も治療の一部へ

運動は避けるものではなく、体力や生活を守るために活かすものへ変わる。

見つけて、早く対応する意味が変わる

検査や受診を続けることで、早く対応できる可能性が広がる。

2024–2026

多剤・個別化、多臓器連関

全身のバランスを見て、最適化する病気へ

現在、CKDは腎臓単体ではなく、心臓や代謝(糖尿病など)との深い関わりの中で捉えられている(CKM症候群)。病気のステージだけでなく、合併症の有無、年齢、体力の衰え、生活背景までを考慮し、一人ひとりに合わせた最適なケアを行う時代へと進化してきた。

薬を組み合わせて腎臓を守る時代へ

腎臓の状態や合併症に合わせて、複数の薬を組み合わせて使う時代になる。

一人ひとりに合った食事へ

一律の制限ではなく、年齢、体格、生活に合わせた食事の調整が重視される。

体力や生活を保つ運動へ

筋肉と身体機能を守ることが重視され、運動療法の重要度がさらに増す。

日々の管理と医療のフォローを続ける

薬、血圧、体重、通院、生活背景まで含めて、総合的に整えることが大切になる。


いま、CKD治療はどこまで来ているのか

CKD治療は段階的に進歩してきました。そして現在は、その延長線上にありながら、これまでとは質の違う段階に入っています。

2024–2026の現在地:組み合わせて守る時代へ

現在のCKD治療は、ひとつの方法に頼るのではなく、複数の手段を組み合わせて進行を抑える点が特徴です。

薬物療法では、血圧を下げる薬や腎臓を守る薬、血管リスクを下げる薬などを、状態に応じて組み合わせて使うことが一般的になってきました。また、食事や運動も一律に制限するのではなく、年齢や体格、生活背景に合わせて調整するなど、個別化が重視されています。

さらに近年は、腎臓だけでなく、心臓や血管、代謝も含めて一体で考える流れが強まっています。CKDは、全身のバランスの中でとらえる病気へと変わりつつあります。

「治療する病気」から「つきあう病気」へ

この変化を一言で表すと、CKDは「治療する病気」から「つきあう病気」へ変わりつつあると言えます。

以前は、悪くならないように気をつけ、進行したら対応するという側面が強い病気でした。
現在は、進行を遅らせるために、生活と治療を組み合わせながら長く安定した状態を保つことが中心になっています。

その中で、薬だけではなく、食事や運動、日々の管理の意味も大きく変わってきました。


これからのCKD治療

CKD治療はこれからも、いくつかの方向に進んでいくと考えられています。

たとえば、腎臓の働きを回復させる再生医療や、新しい薬の開発など、将来に向けた研究も進んでいます。一方で、より早い段階で見つけるための検査や、一人ひとりに合わせた治療、生活全体を支える医療といった変化は、すでに始まっています。

また、腎臓の状態が悪くなる前に気づき、進行を防ぐという意味での「予防」の考え方も、これまで以上に大切になっています。こうした動きは、予防医学と呼ばれる分野の広がりとも重なっています。

たとえば、日本では学校検尿によって、子どもの段階で腎臓の異常に気づくしくみがあります。近年は、このような早期発見の検診制度をさらに活かし、将来の腎臓病や心血管疾患のリスクを減らしていく取り組みも検討されています。

すべてがすぐに変わるわけではありませんが、CKD治療は今も少しずつ前に進み続けています。

これからのCKD治療を支えるキーワード

ここ数年の薬の進化

腎臓を守る作用をもつ薬(SGLT2阻害薬など)により、CKDの進行を抑える治療が大きく進みました。現在は複数の薬を組み合わせる治療が広がっています。糖尿病関連腎臓病(DKD)の治療において、SGLT2阻害薬に加え、腎臓の炎症・線維化を抑える新薬(フィネレノン)や、体重・血糖・心臓をまとめて改善するGLP-1受容体作動薬も、腎臓を保護する効果が示された薬として位置づけられました。

CKM(Cardiovascular-Kidney-Metabolic)症候群

腎臓、心臓、代謝(糖尿病や肥満、脂質異常症など)を一体でとらえる考え方です。それぞれが影響し合うため、全身を見ながら管理することが重視されています。2023年に米国心臓学会(AHA)が正式に提唱した概念です。

再生医療

傷んだ腎臓の機能を回復させることを目指す医療です。まだ研究段階のものも多いですが、将来の治療として期待されています。京都大学iPS細胞研究所は、iPS細胞から作った「腎前駆細胞」をCKDマウスに移植し、腎機能の低下や線維化を抑える効果を確認しています。現在は安全性確認などの非臨床試験を進めており、数年以内の臨床試験(治験)開始を目指しています。

腎臓リハビリテーション

運動・食事・心のケアを組み合わせて、腎臓病の悪化を防ぎながら、今の生活をより良く、長く楽しむための総合的なサポートです。CKDの進行をゆるやかにし、QOL(生活の質)を保つことを目的としています。


本記事はBoehringer Grant ‘Connections’の助成を受けて作成しました。

Boehringer Grant


参考リスト ※すべて2026/5アクセス

1. ガイドライン・基本文献

2. 主要臨床試験(薬の転換点)

3. 総説・国際的な位置づけ

4. 日本のデータ・政策・ガイドライン

5. 生活習慣・運動・予防

  • 日本腎臓リハビリテーション学会 (編集)『腎臓リハビリテーション診療ガイドライン(改訂第2版)』南江堂2026/4/3

6. 最新概念・研究(CKM・未来医療)

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