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薬剤コーティングバルーン(DCB)
体験者に聞いてみました
2025.4.30
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皆さんは「薬剤コーティングバルーン(Drug-Coated Balloon: DCB)」をご存じでしょうか。
DCBは、シャントの再狭窄を防ぐための新しい技術です。経皮経管的血管形成術(PTA)のバルーンに細胞の増殖を抑える薬を塗っておき、バルーンが拡張すると血管壁にその薬が付着、浸透して、再狭窄までの期間を延長させることが期待されます。詳しくは、「【第11回】シャントの狭窄を防ぐPTA最新治療」で紹介しています。
今回は、日本メドトロニック株式会社との共催で、実際にDCBを使っている透析患者さん3名へインタビューを行いました。
シャントの管理方法やトラブル、DCBを使うことになった経緯や使用感についてお聞きしています。ぜひ、皆さんのシャントの管理や治療方針の参考にしてください。
もくじ

PTAを繰り返し受けていますが、今はあまりストレスなく透析生活を送っています。

閉塞を経験したことで、シャント管理により意識を向けています。

全身の血管の病気とも付き合いながら、趣味を充実させた暮らしを志しています。
❶ Aさん(60代女性)のはなし
PTAを繰り返し受けていますが、今はあまりストレスなく透析生活を送っています。
透析を始めるきっかけを教えていただけますか?
子供の頃から健康診断の時に尿タンパクが出ていて、年に数回は病院へ行っていました。20代の時に腎生検をし、IgA腎症という診断を受けました。2005年に慢性腎不全になり、2007年に血液透析を開始しました。
普段のシャント管理で気を付けていることはありますか?
日常的には、貼付用局所麻酔剤を貼る時に気をつけています。腕を洗い、消毒をしてから貼るようにしています。逆に透析が終わってからは、もう力も抜けてしまうので、それほど気を付けていません。本当は、透析当日にお風呂に入ってはいけないのですが、テープを貼ってシャワーだけ浴びています。また、痒くなることがあるので、引っ掻かないように気を付けています。
初めてのシャントトラブルがあったときの内容や治療、その時の気持ちを教えていただけますか?
血液透析を始めてから1年~1年半ほど経過したときに、シャントが閉塞してしまいました。シャントが閉塞することがあるという知識がなく、ある土曜日にふとシャントを触ったら全くスリルを感じず、月曜日に診察を受けてPTA(経皮的血管拡張術)を受け、血流量が戻りました。PTAを知らなかったので、診察を受けるまでは、不安で本当に生きた心地がしませんでした。
PTAの頻度やその思いを教えていただけますか?
最初に閉塞してしまった後は、透析クリニックとは別のPTAを受けた施設に3か月に一度の頻度で受診していました。そこの先生は血管径が2mm以下になったらPTAをしましょうというお考えでした。狭窄はしているものの2mmよりはまだ太いときは、次は1か月後と受診の頻度を上げて様子を見ていました。血管のためにはPTAの回数は少ない方が良いのかもしれませんが、受診の回数も増えますし、その度にドキドキしていました。次に転院した施設はシャント専門の先生がいて、透析とPTAのどちらもできる施設でした。シャントPTAの間隔は3か月や5か月の時もあれば、半年の時もありましたが、だんだん短くなっていたような気がします。その原因としては、血管がどんどん治ろうとして細くなってしまうタイプだからと説明を受けました。PTAを受ける時に大きな手術室で先生やスタッフの声が聞こえて、5人ぐらいのスタッフの方がいて、寒くて、すごくドキドキするような環境でした。麻酔も痛くて、バルーンも痛くて、「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせて終わるまで耐えていました。終わった後は力が抜けて、このまま家まで帰れるのかなという気持ちでした。その後、転勤に伴い、別の透析施設に通うようになりその施設も、透析とPTAが施設内で完結できました。そこでは、前日に入院して全身麻酔でPTAを受けました。麻酔で眠ってしまうと痛みは感じませんでしたが、手術の様子を知りたかったので本当は眠りたくありませんでした。現在、PTAをする際は、バスキュラーアクセス専門の施設に行っています。診察から手術が終わるまで1時間で、おしゃべりをしていたらいつの間にかPTAが終わっていて、痛みも本当に少ないです。そのため、今はPTAが以前ほど億劫ではなくなりました。PTAが終わった後はぐったりしてしまい、帰るのは大変ですが、前と比べると今の方が色々な面でのストレスが減っています。
薬剤コーティングバルーン(DCB)を使うようになったきっかけと、気持ちの変化を教えていただけますか?
今までコンスタントに3か月ごとにPTAを受けてきましたが、8月の定期診察の時に先生から「実はDCBというものがある」と教えていただきました。DCBを使用してPTAの期間が延びた人の割合も教えていただき、「一定の割合で効かない人もいるけど、やってみますか?」と聞かれ、先生を信頼していたので使用することにしました。なぜDCBを使うと狭窄するまでの期間が延長できるのかも先生の説明を受け理解できました。今までのPTAと今回使ったDCBで痛みの違いは感じませんでした。現在、DCBを使ってから5か月経っていますが、先生も「効果があったみたいだよ」とおっしゃられています。普段は特に意識していませんが、DCBでPTAの回数が減ったら良いなと思っています。
これからのシャントとの付き合い方を教えていただけますか?
シャントが命綱だということはよくわかっていますが、日々のことなので慣れてしまって、少し大切にするのを忘れていたのかもしれません。DCBを使用してPTAの間隔が伸びたので良かったですが、診察に行って何もしないで帰っていいのかなと思うこともあります。しかし、やはりPTA回数は少ない方が血管には絶対良いと思いますし、DCBの説明を受けたときに「誰が思いついたのかな、すごいよね」とDCBにも興味を持ちました。
最後に今後の個人的な楽しみなどを教えていただけますか?
2007年に透析を導入してから、いつ海外旅行に行けなくなるかわからないと思い、毎年1か国ずつ行っていました。しかし、コロナ禍と転勤により、2018年を最後に行けていません。その間に在宅ワークもあり、体力も少し衰えていますが、もう一度海外旅行に行って自由に遊びたいと思っています。
❷ Bさん(50代女性)のはなし
閉塞を経験したことで、シャント管理により意識を向けています。
透析を始めるきっかけを教えていただけますか?
父も透析をしていたので遺伝的なものもあるのかと思いますが、小学校の尿検査で、たまに尿タンパクが引っかかっていましたが、あまり気にしていませんでした。20代の時に、熱とともに赤ワインのような真っ赤な尿が出てしまいました。
大学病院に入院し、腎生検によってIgA腎症と診断されました。その時期から透析になるまでの25年間、月に1回、大学病院を受診していました。私は突然ではなく、少しずつ腎不全になったので、ものすごく透析というものが嫌で、ものすごく怖かったです。最後の方は、クレアチニンの値が上がるたびに診察室で先生に慰められながら、泣いたりもしました。40代でとうとう透析が必要となり、現在に至っています。
普段のシャント管理で気を付けていることはありますか?
シャントを作成した時に、なるべくシャントの音を日常的に聞くようにと言われていましたが、スリル音が怖くて聞けず、触るのも怖かったです。閉塞を経験してからは、触るようにしていますし、寝ている時に枕を伝わって聞こえるシャントの音を気にするようにしています。シャント肢で重いものを持たないように、と言われていたので、重いものを持たないように意識していました。透析生活も長くなってきて、自分なりに少しずつ重いものも持つようになってきましたが、すごく重いものは持たないように気をつけています。
初めてのシャントトラブルがあったときの内容や治療、その時の気持ちを教えていただけますか?
最近経験した閉塞にばかり気が向いていたので、あまり覚えていませんが、透析を初めて5年位の時に少し血管が細い箇所があったのでPTA(経皮的血管拡張術)をしました。PTAに関してはどのようなことをするか、痛みを伴うという知識はありました。
PTAの頻度やその思いを教えていただけますか?
以前は半年に1度、ここ数年は1年に1度PTAを受けていました。そして、去年初めて閉塞を経験しました。噂には聞いていましたが、非常に恐ろしかったです。どこかで自分が閉塞する訳がないと、少し甘く見ているところがありました。それまでは、PTAを受ける基準も、定期的に受診して血管が少し狭いから広げようか、という流れでした。しかし、去年の夏、夜中に起きてトイレに行った後に、うまく歩けず転んでしまいました。翌朝起きたら、腕が筋肉痛のような痛みで、すごく痛くておかしいなと思いました。実家にいたので、いつもの病院ではなかったのですが、連絡してすぐに近隣のクリニックで受診しました。閉塞してしまっていたため、スタッフさんがマッサージをしてくれました。マッサージは非常に痛く、大騒ぎをしましたが、それで血流がもとに戻りました。翌日いつもの病院に受診しましたが、血流が戻っているのでPTAは不要と言われました。それまで透析中もあまり血圧が下がることもほぼなく、問題のない透析生活を送ってきていましたが、今思えば夜中に転倒したときに、血圧が70台ぐらいまで低下してしまっていたのだと思います。それが閉塞のきっかけだったのだと思います。さらに、2回目の閉塞が去年の暮れにありました。透析から帰ってきたら腕が痛く、時間が経つにつれてますます痛くなり、パンパンに赤くはれてシャントの音が無くなっていました。次の日、朝一で受診したら血栓が詰まっていて午後から手術となりました。どちらの閉塞も、原因は血圧ではないかと思っています。降圧剤が効きすぎることがあるので、その時は閉塞を心配します。
DCB(薬剤コーティングバルーン)を使うようになったきっかけと、気持ちの変化を教えていただけますか?
DCBは少なくとも2~3年前から自然に私の人生に入ってきてくれました。特に驚いたり、大きな期待をもって使い始めたわけではなく、本当に自然な形で使い始めました。DCBを使う前は半年に1度PTAをしていましたが、DCBを使用することでPTAまでの期間が2倍になり、1年間持つようになりました。昨年は血圧低下による閉塞があったので、PTAのタイミングが変則的になっていますが、DCBは私には非常に効果があったと先生もおっしゃっていましたし、私もそう感じています。DCBはいつのまにかお守りのような、なくてはならない存在になっています。透析を今後も長く続けていくために、長期的にみて血管を大切にしていきたいと思っています。PTAを繰り返すことは血管への負担となると感じているので、DCBを使うことは私の血管への愛情です。
これからのシャントとの付き合い方をおしえていただけますか?
去年、2回の閉塞を経験しているのがトラウマになっているので、スリルを気にして生活したいなと思います。衛生面も、これまで以上に気をつけていこうと思います。また、自分が受けている治療についても、詳しく知りたいと思うようになりました。詳しく知ることができたら、よりシャントを身近に感じて、シャントを大切にしようという思いも大きくなりそうです。
最後に今後の個人的な楽しみなどを教えていただけますか?
透析を始めて年月も経っていますが、すごく楽しい日々でした。透析の時間は辛いですが、それほどQOLが変わったとは感じていません。保存期に食べられなかったものも食べられるようになりましたし、友達付き合いも変わりなくできています。以前は旅行透析を使って国内や海外へアクティブに旅行へ行っていましたが、コロナを機会に全く行っていないので、また行けたらなと思います。だんだん年を取ってきて、あの時の気力はあるかなという心配は少しだけあります。あとは、犬を飼っているので、犬中心の生活になっていますが、今後も一緒に楽しくやっていければなと思います。もしかしたら楽しいと思い込んでいるだけかなと、今思ったのですが、それでもいいかなと、生きていればいいかなと思っています。
❸ Cさん(60代男性)のはなし
全身の血管の病気とも付き合いながら、趣味を充実させた暮らしを志しています。
透析を始めるきっかけを教えていただけますか?
40代で糖尿病と診断されました。それから約14〜15年はなんとか持ちこたえていましたが、状態が急激に悪化し、すぐに入院し透析をしなければならない状態になりました。考える暇もなく透析に突入しました。
普段のシャント管理で気を付けていることはありますか?
乾燥している時期は、皮膚に痒みが起きていました。別の患者さんがクリームを塗っているのを見て、先生に依頼し、クリームを処方してもらって痒みを抑え、掻かないようにしています。普段はスリルの音をたまに自分で聞くぐらいで、できるだけ気にしないようにしています。でも音が全くしないときや、異常を感じたときは、早めに病院で診てもらっています。ただ自己判断では難しいことが多いです。
初めてのシャントトラブルがあったときの内容や治療、その時の気持ちを教えていただけますか?
シャントを初めて作成した2か月後に、技師さんが、「音がしていない」と、異常に気付きPTA(経皮的血管拡張術)を受けることになりました。透析の施設ではPTAを受けられなかったため、PTAを受けられる別の施設を紹介してもらい、受診しました。先生からとにかく最初に「手術は痛い」と刷り込まれましたが、確かに本当に痛かったです。
PTAの頻度やその思いを教えていただけますか?
PTAをした後は3か月おき(場合によっては2か月)に受診していますので、1年に複数回診てもらっている状態が7〜8年続いています。そして、1年に2度程PTAを受けています。診察の流れとしては、先にエコーで診てもらい、先生の診察を受け、PTAをするもしくは次回の受診予約をします。透析のクリニックでも、何か異常を感じたときは診てもらい、受診すべきかアドバイスをもらっています。
薬剤コーティングバルーン(DCB)を使うようになったきっかけと、気持ちの変化を教えていただけますか?
初めてDCBを使ったのは2024年の冬ごろです。先生からは、その1年以上前からDCBのことは聞いていました。しかし、DCBに限らずですが、私が新しいものに対して慎重な性格なので、初めてDCBのことを聞いた時点では、新しい製品(DCB)は大丈夫なのかな?と心配で、今までと同じPTAで良いと思っていました。そのころからもう1年程経過したので、DCBも広く使われるようになっただろうし、もう大丈夫かな、そろそろDCBを使ってみようかなと思いました。まだDCB使ったばかりなので(2025年初にインタビューを実施)、DCBの効果が私にあるのかはわかりません。DCBを使用したからといって、普段のPTAと違うことは何も感じませんでした。今回、初めてDCBを使ったので、次のPTAまでの期間がどのくらい伸びるのか楽しみです。
これからのシャントとの付き合い方を教えていただけますか?
脳梗塞も経験していますので、シャントだけでなく全身の血管が衰えてきているのではないかということで、頸動脈や足の静脈など全身の検査を受けています。検査結果は黄色信号ですので、今のうちに何らかの対処ができればと思っています。日常生活を頑張っていても動脈硬化はどうして進むのか、と不思議に思いながら検査結果を見て過ごしています。1日1日気をつけながら過ごしています。
最後に今後の個人的な楽しみなどを教えていただけますか?
私の趣味は将棋と天文ボランティアです。将棋は、高校生の時に「歳をとってもできるから」と思い、始めました。歳もとってきましたが、将棋の駒さえあればいつでも、どこでもできるので、これからの人生でさらに楽しんでいきたいなと思っています。天文ボランティアは、博物館で月に1〜2回開催される星空観察会というイベント(博物館の望遠鏡で月や木星や土星を観察する)で、サポートをしていました。コロナの時期は休止していましたが、最近イベントも復活したので、またサポート出来たらと思っています。ロマンにあふれています。
おわりに
DCBを使用することのできる資格を持つ医師は年々増えており、今後、より多くの施設で使用できるようになると予想されます。
皆さんの中には、Cさんのように、新しいものに慎重な方もいるかと思います。
DCBに限らず、ご自身の治療方法について不安や不明な点があれば納得がいくまで医療者と相談し、適切に理解したうえで選択しましょう。
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