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管理栄養士の栄養サポート体験談~あるある話~

【第1話】痩せすぎ注意! 腎臓病食の蛋白質制限あるある話

2023.11.20

文:高山菜々子

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管理栄養士の栄養サポート体験談~あるある話~①

はじめまして。在宅訪問管理栄養士の高山菜々子と申します。
特別養護老人ホーム、病院勤務を経て、現在は腎臓病食サポート事業をしています。
病院勤務時代には、循環器と透析センターの担当で 3,000 件以上の栄養指導を行いました。透析患者さんのご家族とお話しした際、食事療法の混乱と、毎日の食事作りで疲弊した姿を目の当たりにして、実際に料理を作る家族を応援したいと思い、病院を退職・独立。家族全体をみてサポートする在宅訪問管理栄養士になりました。
さまざまな腎臓病患者さん、透析患者さん、そのご家族に出会う中で気づいた「あるある話」をご紹介していきます。
私の体験談が、腎臓病の当事者やご家族のお役に立てれば幸いです。

太っていても痩せすぎていても、人に知られるのはなんだか恥ずかしい「体重」。私たち管理栄養士や医療職にとっては、患者さんの栄養状態を把握する大切な指標のひとつです。通院していると、体重を確認する機会が増えるのではないでしょうか。
今回は、そんな体重に関するお話です。


あれもダメ、これもダメ…食事療法の情報で混乱

腎臓病と診断されて、多くの方がまず初めにすることは、「腎臓病について調べる」ではないでしょうか? 今はインターネット検索や本などから、手軽に調べられます。腎臓病とはどんな状態で、どんな治療をするのか、どうやったら良くなるのか。
その情報の中で、必ず食事療法も出てきます。
一般的な腎臓病の食事療法については、蛋白質制限や塩分制限など、摂取を控えるべき食材や料理の情報が多く出てきます。低蛋白ご飯や減塩しょうゆなど特殊食品の販売や、定期購入できる宅配弁当の情報なども出てくるかもしれません。
病院で栄養指導を受ける機会があれば、管理栄養士から気をつけるポイントを指導されたりします。
たくさんの情報から、「あれも食べちゃダメ、これも食べちゃダメ!」「特別なものを食べなきゃいけない!」と、不安を煽られるように感じる人もいると思います。
それらの情報は、腎臓病の食事療法としては間違っていないかもしれません。ですが、1人1人の体や生活スタイルに合った情報なのかは、情報を受け取る側が冷静に判断する必要があります。


蛋白質を制限すると、エネルギー不足になりやすい

腎臓病食の特徴として、蛋白質制限があります。具体的には、高蛋白食品である肉・魚・卵・大豆製品などを食べられる量が、慢性腎臓病(CKD)のステージに応じて少なくなります。
ですが、蛋白質はエネルギー源でもありますので、蛋白質を減らすとエネルギーも同時に減ってしまいます。
摂取するエネルギーが不足すると、体に貯蔵されていた脂肪や体蛋白(筋肉や血液)がエネルギーとして燃えてしまいます。腕や足などの筋肉が減って体力や免疫力が低下してしまうばかりでなく、体を構成していた蛋白質を代謝していくので、食事で頑張って蛋白質を減らしていても、肉や魚を食べたのと同じ状況になってしまうのです。その結果、血液検査の腎機能の数値を悪化させてしまう人をたくさん見てきました。
家族や友人から「がんなのではないか?」と他の病気を心配されるほど、激痩せしてしまう方もいます。

蛋白質制限に気をとられて、気づけばエネルギー不足となって痩せていた…

蛋白質制限に気をとられて、気づけばエネルギー不足となって痩せていた…

これが”腎臓病食の蛋白質制限あるある”です。

いろんな情報を受けて混乱し、「あれもダメ、これもダメ」と思ってしまい、食事量を極端に減らしてしまう。体重が減りすぎてしまい、医師や管理栄養士から体重を増やすよう指導されて、さらに混乱した人達が「どうすればいいの⁈」と、私のもとにやって来るのです。


食事療法で何を優先すればいいのか?

腎臓病の食事療法では、考えることがいくつもあり、混乱しますよね。
私が栄養指導や腎臓病食講座でお伝えしているのは主に4つです。
①高エネルギー、②減塩、③低蛋白質、人によっては④カリウム対策です。
さらに優先順位もあり、基本は①②③④の順で考えるようお伝えしています(個々の状態によって順番は入れ替わります)。1番に考えるべきは「高エネルギー」で、糖質と脂質でしっかりエネルギー補給をすることです。

ところが、日本では「低カロリー=健康」の風潮があり、エネルギー補給の考えを妨げます。飽食の時代のなか、生活習慣病にならないような食事が一般的に良いとされ、カロリーを減らすことには意識が向きやすくなっています。逆に「油や砂糖でカロリーを摂る=悪、不健康」のような思考になりやすく、エネルギー補給がつい後回しになってしまうのです。
今までの食事から腎臓病食へ移行すると、こういった考え方の変化にも混乱してしまうのでしょう。

私のサポートでは基本的に「食べてはダメ」とは言いません。慣れ親しんだ食生活があるし、量に気をつけたり、調理の工夫をすれば、たいていの物は食べられるからです。
「あれもダメ、これもダメ、どうしたらいいの⁈」という方に、本当に食べてはダメなのか、1つずつ確認していきます。食べられる食材や料理、どのくらいなら食べてもいいか、どうやったら食べられるかを説明するようにしています。

日常生活でどのように取り入れるかは、個人差があります。食事療法をきちんと知って、自分の体と生活スタイルに合った食事の判断力が身につくと、「な~んだ、食べられるじゃん!!」とみなさん言われます。具体的な判断基準がわからなかっただけなんです。

まずは、食事療法の土台となるエネルギーを、油などでしっかり摂る。適正体重を維持する。
その上で、ご自身の段階に応じて、蛋白質などを減らすことにチャレンジしてくださいね。

蛋白質制限を気にするあまり激痩せしていく腎臓病患者さんが本当に多い! というあるある話でした。

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高山菜々子

高山菜々子
在宅訪問管理栄養士。
特別養護老人ホーム、病院勤務を経て、現在は腎臓病食サポート事業をしています。
病院勤務時代に、循環器と透析センターの担当で3000件以上の栄養指導をさせていただきました。透析患者様のご家族とお話しした時に、食事療法の混乱と、毎日の食事作りで疲弊した姿を目の当たりにしました。実際に料理を作る家族を応援したいと思い、病院を退職・独立して、家族全体をみてサポートする在宅訪問管理栄養士になりました。

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