慢性腎臓病（CKD）と、気持ちや行動を切り替えるリフレーミング

考え方や行動、ものの見方は、経験や思い込みの影響を受けています。

同じ犬を見ても、過去の経験によって行動や感情反応^※はまったく異なります。例えば、犬に追いかけられた経験のあるAさんは犬を怖がって避けてしまいますが、犬が大好きなBさんは、初対面の犬でも平気で近づけるでしょう。これらは、経験からくる「思い込み」（心理的枠組み）がもたらすものです。

しかし、例えばAさんがBさんと話をして犬に対して恐怖以外の感情を持ったら、次回同じ犬に遭遇した場合、避けずに違った行動を取るかもしれません。

そこで、物事をどのような心理的枠組みで捉えるか、その枠組みに変化を促すことで、感情や行動に変化をもたらすテクニック「リフレーミング（reframing）」についてお話しします。

※ストレスなど何かを感じた時に、心と体に自然と起こる一連の反応。不安、イライラ、恐怖、落ち込み、緊張、怒り、罪悪感、感情鈍麻、孤独感、心拍数の変化、発汗など。

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リフレーミングとは

リフレーミングには枠組みを再構築するという意味があります。置かれた状況や問題、現象などをそれまでとは異なる角度から捉え直すことで、感情や行動に変化を促すためのテクニックです。

リフレーミングは、うまくいかなかった体験の繰り返しで意欲や自信を失っているような困難な状況において有効です。新たな視点から解釈し直すことで、心の苦痛を和らげ、行動の改善につなげ、困難を乗り越えやすくします。

さまざまなリフレーミング方法

言葉のリフレーミング

言葉の選び方を変えることで、印象や意味合いを変える方法

例
「頑固」→「芯がある」「信念がぶれない」
「～しなければならない」→「～したい」「～を選択する」

時間軸のリフレーミング

今のできごとを、過去や未来の視点で捉え直す方法

例
「今は苦しんでいる」→「あの経験はこれからの私を強くするためだった」

解体のリフレーミング

全体ではなく一部分に着目したり、特定の側面を切り取って見直すことで、捉え方を変える方法

例
「全部ダメだ」→「でも○○は得意だ、△△はあと少しでできた」

wantのリフレーミング

欲求（want）に焦点を当てることで、行動の動機付けを変える方法

例
「毎日ウォーキングをしないといけない（義務感）」→
（体調を整えて楽しい生活をするために）→
「毎日ウォーキングをしたい（欲求）」

仮説のリフレーミング

「もし〇〇だったら」と仮定して考えて視野を広げる方法

例
「落ち込んだ」→「◯◯さんなら、趣味に没頭して前向きになるんだろうな」

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ポジティブシンキングとリフレーミング

ポジティブシンキングとリフレーミングは似ている部分もありますが、それぞれ異なるアプローチです。

ポジティブシンキングは、希望を持つために常にポジティブな考え方を選び、ネガティブな感情を直接的に打ち消すことです。リフレーミングは、問題自体を解決するのではなく、感情や行動に影響を与えるために、問題に対する自分の見方や解釈を変えることです。

具体例でその違いを見てみましょう。

ポジティブシンキング

「次はうまくできるはず、気にしない、なんとかなるさ!」

→ 明るく前向きに考えて、気持ちを切り替えようとする。

→ 「事実」をあまり見つめず、「楽観的な感情」で上書きしようとする。

リフレーミング

「注意されたということは、上司は自分に期待してくれているということかもしれない」

→ 同じ出来事の「意味づけ」を変えることで、視点や感情を整理する。

「ミスをしたのは残念だが、自分の弱点に気づけた」

→ 現実から目をそらさず、「別の見方」によって前向きに捉える。

このように、ポジティブシンキングは、一時的に前向きな気持ちになれるものの、深い理解や行動の変化にはつながりにくいという特徴があります。一方、リフレーミングは現実を否定せずに捉え方を変えるため、気づきや成長、より深い理解へと結びつきやすいと言えます。

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早速、リフレーミングを取り入れてみましょう

言葉の選び方を変える「言葉のリフレーミング」で、かんたんな練習をしてみましょう。

かんたんな「言葉のリフレーミング」例

出典：学研辞典編集部 (編集)『ボジティブことば選び辞典』Gakken（2021/6/3）

いかがですか? 新たな視点から物事を捉え直すコツがちょっとお分かりいただけましたでしょうか。

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慢性腎臓病（CKD）生活の中でのリフレーミング例

CKDをもつ方の「あるある」をリフレーミングしてみました。

ご本人が自分の考え方を変えるための捉え直しと、医療者やご家族、友人などの周囲の方が、元気づけるために声をかける場合の2パターンをご覧ください。

食事の悩み編

1）CKDの食事療法の調理が面倒で大変だ。
本人	食事療法は自分の体を守るための大切な手間だし、新しい調理法を学んでスキルを上げるチャンス!
周囲	調理は面倒だよね。でも、面倒でもやっているということは、自分の体のことをとても大事にできているってことだよね。
2）家族や友人との外食で、同じものを食べられないのが悲しい。
本人	自分の体としっかり向き合うことが最優先。自分に合ったメニューを見つける探求だと考えることにしよう。
周囲	悲しくなる気持ちも分かるよ。でも、食べるものが違っても、一緒に食事できること自体が「ごちそう」だよね。
3）塩分を控えた食事が美味しくない。
本人	素材本来の味、だしの風味、香辛料の奥深さをより楽しめるようになる、新しい味覚の冒険ができるぞ。
周囲	薄味に慣れたら、素材の味がわかってきて美味しく感じるようになると思うよ。それまでに、少し時間がかかるかもしれないね。
4）CKDの食事療法について、周囲の理解を得にくい。
本人	いろいろ分かってもらうタイミングかもしれない。病気や食事療法のことを、私なりの言葉で伝える練習をしよう。
周囲	分かってもらえないと思うとつらく感じるかもしれないね。もしかしたら、周りも気を使ってくれているのかもしれないよ。話してみると伝わることもあるよ。

治療や通院の悩み編

1）検査結果が悪いと落ち込み、自分がダメな人間だと思ってしまう。
本人	検査結果は、体が助けを求めているサインだから、どうしたら改善できるのかな。
周囲	落ち込む気持ちは分かるよ。検査結果の値の変化に気づけたってことは、前に進めるってことだよね。
2）通院の時間的拘束や交通費、待ち時間などが負担に感じる。
本人	病気を放置せずに済んでいるし、通院と診療は、専門家が私の体をしっかり診てくれる貴重な時間。
周囲	定期的に自分の体と向き合うチャンスだと思ってみるといいね。負担ではあるけれど、大切な自分時間だね。
3）食事や血圧管理などの自己管理のプレッシャーでストレスを感じる。
本人	自分の体を自分で守るスキルを身につけている途中。こんな面倒くさいことやってる私って素晴らしいよね。
周囲	全部きちんとできなくてもいいと思うよ。できた分だけ、ちゃんと自分のことを大切にしたってことだからね。
4）「どうせ透析になる」と言われると、雑に扱われているような気分になる。
本人	「透析は人生を続けるための手段」だって、知らない人もいるのかもしれない。でも、私の価値は、病気になったこととか、治療を受けていることで決まるもんじゃないんだ。
周囲	「どうせ」に続く言葉は、あまりいいものはないよね。そんな言葉で、あなたの価値がブレることはないよ。気にしない、気にしない。

生活の悩み編

1）家族に負担をかけていると感じ、申し訳なく思う。
本人	支えてくれる家族のみんなに「ありがとう」を伝える良い機会だと考えてみよう。
周囲	あなたの事を大切に思っていて、負担とは思っていないんじゃないかな。あなたが元気でいてくれることが一番大事。
2）慢性的な病気であり完治が難しいことから、将来への不安や絶望感がある。
本人	付き合っていく病気になったことは、自分の体や人生をもっと大切に、丁寧に生きるきっかけなんだって捉えよう。
周囲	その気持ちは、あなたが自分の病気ときちんと向き合えてるってことだよ。
3）以前のように人付き合いができず、孤独を感じる。病気のことを話すと、距離を置かれてしまいそう。
本人	新しいつながりが生まれるタイミングかもしれない。新しい出会いを大切にしよう。
周囲	具体的に、孤独や疎外感を感じるようなことが何かあったのかな? これから出会う人の中には、気兼ねなく付き合える人もきっといると思うよ。
4）趣味やレジャーなど、以前よりできないことが増えてしまった。
本人	体を労わりながら楽しめることや、今まで興味がなかった新しい趣味に出会える可能性に目を向けてみよう。
周囲	無理に以前と同じようにしなくても大丈夫だよ。今は、自分に合ったペースで、新しい快適さや喜びを見つける時期なんだと考えてみない?

仕事・学業・社会生活の悩み編

1）病気への理解がない人に心ないことを言われるのがつらい。
本人	本当に理解してくれる人の大切さがよく分かるようになるんだろうな。つらいときは、その人に頼ろう。
周囲	分かってくれない人もいるかもしれないね。でも、ちゃんと見てくれている人もいて、心ない言葉を言う人は、ほんの一部だよ、きっと。
2）仕事仲間や地域の役割などで、迷惑をかけてしまうのではないかという罪悪感がある。
本人	仕事って、一人で抱え込まず、チームで助け合うのが当たり前だから、できる範囲で貢献して、いい関係を築くことを考えよう。
周囲	罪悪感なんて持たなくていいよ。「頼る」という気持ちを忘れないでね。誰だって、時には助けが必要になるものだよ。
3）拘束時間が長かったり、体力が必要な仕事ができなくなったことで気後れし、焦る。
本人	そのときどきで、違う生き方がある。これからは、もっと賢く、効率的に、そして自分を大切にしながら貢献しよう。
周囲	体力的に合わない仕事を無理して続けるより、自分の体調に合った働き方を考え、長く無理なく働ける環境を見つけることは大事な選択だよ。
4）外見でわからない病気だから、「怠けている」と誤解されそうだ。
本人	誤解は、自分や病気自体が悪いのではなく「知らないこと」から生まれる。小さな対話を重ねて偏見を変えられるといいな。
周囲	あなたが人知れず頑張っていることを、あなた自身と、ちゃんと見てくれている人が分かっているから大丈夫だよ。

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あなたの「リフレーミング」を教えてください!

腎臓病や糖尿病に関わる当事者と医療者の方々から、自分や他人の感情や行動に変化を促すために実際に行っているリフレーミングをお聞かせいただき、実践的なアイデアとして皆さんに共有するためのアンケートを実施中です。

この記事のリフレーミング例を参考に、ぜひご協力お願いいたします!

リフレーミングというテクニックに当てはまらなくても、あなたが普段されている「ちょっとした言い換え」でも大丈夫です。どうぞお気軽にご記入ください。

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― with Kidneyプロジェクト 開催中のアンケート ―

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