じんラボリサーチ
【特別編】なぜ調査? 結果をどう見る?『透析を受けている人の「就労と暮らし向き」に関する調査』について聞いてみた①
2026.10.13
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2026年7月にじんラボにて実施した、透析を受けている人の「就労と暮らし向き」に関する調査の結果を、9月に公開しました。
じんラボリサーチ【特別編】働き方の変化を8割が経験 透析を受けている人の「就労と暮らし向き」に関する調査
「うまめ」と「さまめ」は、この調査について詳しく知るために、じんラボを運営する一般社団法人ピーペック理事の武田飛呂城に話を聞くことにしました。
うまめ
さまめ
武田さん! こんにちは!
武田さん
こんにちは。ピーペックで理事をやっている武田です。今日はよろしくね。
さまめ
ちょうど今、ふたりで調査結果の記事を読んでいたんだ。設問数も多くて、大がかりなアンケートだったよね。
うまめ
なんで今回のアンケートをとろうと思ったの?
武田さん
近年、社会保障に関する議論が盛んになって、国会や国の審議会・委員会等で医療費の自己負担について議論される場面が増えてきました。おふたりは「高額療養費制度」って聞いたことありますか。
うまめ
えっと…医療費が高くなりすぎたときに、1ヵ月にいくらまでって、支払う上限を決めてくれる制度だよね?
武田さん
そうです。2024年11月、その自己負担の上限額を引き上げる案が、国の審議会に出されました。でも、その引き上げ案は、治療を諦める人が出てきてしまうような、大きな負担を求めるものでした。
そこで、がんや難病の患者団体が、高額な治療が必要になった人が安心して治療ができなくなる上、現時点で治療を受けている人だけでなく国民全体にとってもセーフティネットとして機能しなくなると声を上げました。当事者へのアンケート結果や専門家の意見を集めて、国に引き上げ案の見直しを求めたのです。

武田さん
その後、当初案はいったん凍結された後、専門委員会等での議論が行われました。そして、医療費の年間上限新設など当事者の意見を反映した部分もあるものの、月額上限についてはすべての所得区分で引き上げられる形で、高額療養費制度は見直されました。また、2027年8月には所得区分の見直しなどが予定されており、さらに負担が増える人も出てきそうです。
高額療養費制度の見直しをめぐる経緯
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2024年11月
自己負担の上限引き上げ案が提示される12月に決定
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2024年12月〜
がん・難病の患者団体が引き上げの再検討・凍結を要望
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2025年3月
予定していた引き上げを全面的に見送り(凍結)
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2025年5月〜
専門委員会を設置して議論
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2025年12月
見直しの内容(月額上限の引き上げと年間上限の新設)が示される
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2026年8月
見直し後の制度がスタート
-
2027年8月
所得区分の見直しなどが予定
出典:厚生労働省『社会保障審議会医療保険部会 資料』『高額療養費制度の在り方に関する専門委員会 資料』、首相官邸『高額療養費制度見直しに関する患者団体との面会についての会見』、一般社団法人全国がん患者団体連合会『「高額療養費制度における負担上限額引き上げの検討に関する要望書」について』 作成:じんラボ
さまめ
そうだったんだ。病気の治療をしている人は、ただでさえ大変なのに、治療費の負担が増えると不安だよね。
武田さん
そうなんです。また、その議論のさなか、2025年12月8日の委員会では、事前の議論もほとんどないまま、厚労省が示した「高額療養費制度の見直しの基本的な考え方(案)」にこういう一文が入っていました。
「特定疾病に係る特例の在り方についても検討が必要という指摘があった」。
うまめ
特定疾病って、透析を受けている人も含まれるんだよね。
武田さん
そうです。人工透析等にかかる医療費について、自己負担を低減してくれている制度です。
「特定疾病」の特例とは
対象:人工透析を要する慢性腎不全/血友病の一部/血液凝固因子製剤の投与に起因するHIV感染症
出典:全国健康保険協会『高額療養費』、厚生労働省『第38回社会保障審議会医療保険部会 資料2 高額療養費制度について』 作成:じんラボ
さまめ
ん? 高額療養費全体の話だと思って聞いていたけど、いつのまにか特定疾病の制度まで…?
武田さん
まさにその感覚でした。当事者委員を含め、複数の委員から、委員会で全く議論されていない項目が論点として提示されていることなどに反発があり、この一文は削除されることになりました。
うまめ
それで、一件落着になったの?
武田さん
いいえ。今年(2026年)に入り、特定疾病については改めて検討の対象として公の文書に書き込まれます。それが、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会による、通称「春の建議」です。
うまめ
なんか聞き慣れない言葉が増えてきたね…。
武田さん
ごめんごめん。二人は「骨太の方針」って聞いたことがあるかな?
うまめ
ニュースで聞いたことがあるかも!
さまめ
政府がその年の重要な課題や、国の予算・重要政策の方向性を示す方針のことだよね。
武田さん
よく知っていましたね。「春の建議」というのは、その「骨太の方針」を視野に入れて、財政制度等審議会がまとめた意見書のことです。そこには、特定疾病の制度について「当該制度の効果検証や対象者の実態把握等も踏まえつつ、見直しの必要性を含め検討していくべきである。」と書かれていました。
さまめ
これから検討していくべきだと、断定されてしまったの?
武田さん
そうです。そこで、当事者支援団体として何かできないかを考え、「対象者の実態把握等も踏まえつつ」とあったことから、まずはじんラボを通して、アンケートによる実態把握を当事者発信でしていくことが重要なのではないかと考えました。
うまめ
それでアンケートをやったんだね! でも透析を受けている人たちの調査って、他にもたくさんあるよね?
武田さん
はい。例えば一般社団法人全国腎臓病協議会(全腎協)と公益社団法人日本透析医会は、共同で「血液透析患者実態調査」を行っていて、1972年から約5年ごとに実施されています。代表性という点では他に類を見ない調査で、私たちはそのような調査はできません。
武田さん
私たちが目指したのは、そうした代表的な調査を補完することです。じんラボはWebを中心に情報発信しているので、今回のように必要なときに機動的にアンケートを実施できますし、利用者が比較的若いことから、今回の回答者も50代以下が60.6%と、就労世代の声を厚く集めることができました。7月1日から27日までの1カ月弱の間に、221名の方が調査に協力してくれたんです。
さまめ
たくさんの人が協力してくれたんだ。
武田さん
協力してくれた皆さんのおかげで、実態把握の一助になることができたと考えています。
うまめ
調査結果で、心に残ったものはある?
武田さん
透析後、体調が回復するまでの時間(Q8)と透析後の体調(Q9)ですね。透析後、普段の体調に戻るまで7時間以上を要する人が34.8%いました。また、透析後の強い疲労感やだるさが「いつもある・よくある・ときどきある」と答えた人は72.9%いました。
透析は、週に3回、4~5時間ずつの時間拘束があって大変だと思ってはいたのですが、単純な時間拘束だけでなく、透析による疲労感や体調不良の時間も含まれることを感じ、仕事を続けていくのは大変だと改めて実感しました。
さまめ
しかも、透析自体は4~5時間でも、病院までの往復や待ち時間なども入れると、1回当たり5~7時間くらいかかるんだよね。
武田さん
そう。週3回の透析と考えると週15~21時間程度の時間拘束がある上に、いま話したような体調不良を抱えてしまったら、本当に大変です。
さまめ
時間帯のデータも見たよ。就労している人の46.8%が夕方(17時)以降の透析、就労していない人では2.4%。
就労状況別 透析を受ける時間帯
夕方以降:就労していない人は2.4%。分母:施設血液透析利用者のうち時間帯が特定できた206名
武田さん
働くために透析を受ける時間を選んでいるのかなと思います。ただ、夜間透析は施設側の負担が大きく、実施をやめる施設もあることが国の調査で報告されています。働けるかどうかが、通える範囲の施設の事情に左右される面もあります。
うまめ
本人が頑張りたいと思っても、施設の事情でできないこともあるってこと?
武田さん
就労が難しいことの一つの要因ではありそうですね。実際、国民全体への調査と比較したところ、30代から50代の働き盛りの世代で、いずれも透析を受けている人の方が、就業率が低いという結果になりました。特に50代の就業率は、国民全体では50~54歳が87.0%、55~59歳では83.9%と高い数値であるのに、透析を受けている人は50代全体で70.5%と、13~17ポイント程度の大きな開きがありました。
年代別の就業率 本調査と全国の比較
全国は総務省「労働力調査」2025年平均。全国は5歳階級(例:50〜54歳、55〜59歳)のため、2区分の値を幅で示しています。
さまめ
そんなに大きな差があったんだ。
武田さん
はい。そして今、ピーペックの代表でじんラボ所長の宿野部武志が、この結果を持って国会議員の皆さんを訪問しています。
うまめ
所長が、議員さんのところに?! 報告書を公開して終わり、じゃないんだね。
武田さん
報告書を出すだけでは何も変わりません。制度を考え、決める人たちの手元に、この数字を直接届けるところまでが今回の仕事だと思っています。
さまめ
議員さんとどんな話をしてるんだろう? 所長に聞いてみたいな。
うまめ
気になるね。多くの人が協力してくれた結果が、国に届いていく瞬間だもんね!
武田さん
ではちょっと、所長を呼んできましょうかね。
うまめ
ありがとう! 待ってる間に、僕たちにできることは?
武田さん
まずは報告書をじっくり読んでみてください。調査の詳細や分析・考察を載せた報告書は、ピーペックのサイトで確認できます。
そして、また次に調査が必要になったときに、さらに多くの人に協力してもらいたいと思っています。
さまめ
わかった!
うまめ
次にアンケートをやるときは、協力してくれるようみんなに頼むよ!
武田さん
ありがとうございます。頼もしいですね。
次回は、じんラボ所長・宿野部武志が、この調査結果を持って国会議員を訪ねた記録をお届けします。
「しゃべルーム」で、経験や気持ちを話してみませんか
じんラボの会員コミュニティ「しゃべルーム」に、本調査に関するトピックを立てました。透析をしている人の就労と暮らし向きについて、ご自身の経験や気持ち、この記事を読んで感じたことなど、引き続き“こえ”をお聞かせください。
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