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透析と我が人生

【第5話・最終回】人生最後の旅路~透析とともに~

2025.6.2

文:立山連峰

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草原のベンチ、青空

透析中の不都合な事態

私が通う病院の透析システムは高度なオンラインHDF(血液濾過透析)ですが、それでも半年を経た頃から背中・足の搔痒感が激しくなり、当時まだ新薬として承認されたばかりのそう痒剤の静注投与を始めました。約6週間の静注で効果を感じましたが、困ったことに、このそう痒剤には便秘症の副作用があり、透析の除水と相まって便秘が常態化してしまいました。便秘症が続くと腸内に宿便が増え、朝の体重測定で見かけ上は体重増となり、結果、脱水量が増えます。大量の脱水はとかく透析後に倦怠感を起こすため、困りものです。対策として、植物繊維の多い食材を意識して摂り、定期的に下剤を服用し、なんとか宿便を作らないようにしています。

便秘イメージ

ある日、便秘が続いていたので前夜に下剤を服用して透析に臨んだところ、透析中に関わらず初めて強い便意をもよおしました。残り時間をなんとか我慢していましたが、血圧が一気に上昇。もはや我慢も限界となったので、看護師に透析システムを終了してもらえないかと話しました。すると「トイレなら針を付けたままで行けますよ」と言われ、透析を急遽終了することなくトイレに駆け込み、また安心して透析を続けることができました。


1回4時間の透析について

令和5年9月末から始まった私の透析は、この話を執筆した時点で8ヵ月が経過しています。高いレベルの透析システムで血液は浄化されていますが、本来なら毎日24時間(週168時間)休みなく働く腎臓の代わりを、1回4時間(週12時間)の透析でまかなうのは無理があり、たとえ透析後でも、以前の健康だった時の体の状態には戻れません。

「食事制限がほぼなくなる」という1回6時間以上の長時間透析があります。1回4時間では浄化不足と思う一方、私にとっては一日の約1/3を透析についやす生活や長時間の拘束は受け入れがたく、現在の透析時間を選んでいます。

一般的には、透析を導入するとミネラル(リン・カルシウム)の代謝バランスが崩れやすく、末梢動脈疾患(PAD)のリスクが高くなるようです。発症した場合は足の血流不良、しびれや痛み、歩行困難、潰瘍の症状が出るため、車椅子生活の可能性も考えられます。いつまでも自立した生活が出来るように食事管理(特にリン過剰摂取の抑制)の徹底するとともに、下肢動脈の血流を促すために毎日最低でも40分以上の散歩を欠かさないようにしています。

手足の動脈が狭くなったり、詰まったりして動脈硬化症が生じること。


人生最後の旅路

会社を定年退職してから早20年が経過しました。政府は数年前から「人生100年時代」と唱えています。若い頃には「定年後はのんびりと豊かな老後」を夢見ていましたが、嚢胞腎の発覚によりその夢も色あせたものになってしまいました。

今79歳にして、人生、最後の旅路のスタート地点に立った心境です。これまでの79年間から見れば、残された時間は長いとは思えません。男性の平均寿命まで後わずか2年となりますが、家族のためにも、まずは傘寿(80歳)をクリヤーし、その次は平均寿命をクリヤーし、欲を言えば米寿(88歳)を目指したいものですが、先のことは神のみぞ知ることでしょう。

指定難病での透析により、生まれてはじめて身体障害者1級として公的に認知されたお陰でいろいろな社会福祉政策の恩恵にあずかり、生かされている自分を想う時、日本の障害福祉と医療に感謝すると共に、与えられた残りの人生を悔いなく有意義に生きたいと思います。

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立山連峰

立山連峰
40歳で初めて自らの腎臓の異常を知ったものの適切な手立てもなく、ただタンパク・塩分の食事制限と長い投薬の人生を過ごしてきましたが、高齢になるに伴い腎機能の低下から体調が悪化、もはや生と死の狭間とも思える時間に居た自分にとって透析以外の選択肢はありませんでした。しかし、透析によって体調の快復を実感し、生かされている喜びを感じるこの透析生活は、違和感の無い日常の姿となっています。新型コロナに感染するも事前の度重なるワクチン接種によりこうした基礎疾患のある高齢にも関わらず重症化せず後遺症もなく完治しました。今は、来年、傘寿(80歳)を無事迎えられることを願っています。

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