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出掛けよう!私たちの世界は広い。【第1回】
地中海に浮かぶ美しい島。マルタ共和国〜紹介編〜
2016.6.9
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「マルタ共和国」そこは私にとってずっと憧れの場所でした。
そう、ローマのアヴェンティーノの丘の上で、マルタ騎士団長の別荘の鍵穴を覗いたあの日から…。
透析と付き合うようになると、つい行動範囲が狭くなりがちだと思います。
それはいうまでもなく、週に3度の透析が精神的にも、物理的にも足枷になるから。
例えば遠出をするとして、めいっぱい使える時間は中2日の土日、または日月の2日間…そう考えてしまうのではないでしょうか。
だけど、「透析をしながら旅をする」って選択だってあるはずです。
そして、透析を削ることで時間を捻出するのではなく、むしろしっかり透析時間を確保することで、食事も美味しく摂れて元気になり、日常のパフォーマンスが上がるのも事実なんです。それは旅をしていても同じこと。
「毎日をめいっぱい生きていたい」それを目標にしている私がずっと憧れていた場所である「マルタ共和国」へ出掛けた時のことを、今日は少しじんラボさんのスペースをお借りしてお話したいと思います。
そもそも、「『マルタ共和国』なんて聞いたことがないけど、どこ?」と思う方がほとんどではないでしょうか。
それもそのはず、マルタは主にマルタ・ゴゾ・コミノの3つの島からなり、面積でいえば淡路島と変わらない程の小さな島国です。地中海の真ん中、イタリア半島の先、シチリア島のすぐ南側。もう少し南下すればアフリカ大陸が見える、そんな場所にあります。
マルタは「マルタ騎士団」の国。マルタ騎士団…十字軍、聖ヨハネ騎士団といえばロードス島での戦いが有名ですが、その後に彼らが居を構えたのがこのマルタなのです。
変化に富む海岸線は天然の良港であり、また要塞でもありました。
その地理的重要性からこの小さな島は、アラブ・イスラム帝国やノルマンに、またスペインに侵攻された歴史を持ちます。さらにナポレオンの占領やイギリスの支配、そしてイギリスからの独立と、マルタは「歴史の十字路」と言える土地なのです。
でも、その辺りの詳細は専門書なんかにお任せするとして、私が見てきたマルタをちょっとだけご紹介しますね。
「そのちいさな島国に一体何があるの?」
そう訊かれたなら、なんて答えようかしら。
抜けるような青い空。どこまでも深く蒼い海。人懐こい笑顔。
海の荒波に断崖が削られて造られた、奇観としかいいようのない景色。
はちみつ色のマルタストーンで造られた、はちみつ色の町。
誇りの高さを示すかのように聳える、はちみつ色の要塞。
中に入ればその絢爛な内装に驚かされる、はちみつ色のいくつもの教会。
また、5000年以上も昔のものだという、新石器時代に建造された神殿遺跡群もそのまま遺されているのです。もちろんこれは世界遺産。紀元前3600年からそこに在る「岩」。
それから…猫。マルタでは幸せな顔をした猫があちこちで伸びている。
マルタを語る上では、ワイルド過ぎる料理だってはずせない。新鮮な海の食材ももちろん良いけれど、うさぎ肉の素朴な郷土料理が個性的。
ああ、一言ではとても表せないけれど… 素敵な国でした。ほんとうに。
地中海性気候なのでとても温暖で過ごしやすく、陽射しは射すような強さだけれど風が吹けばとても爽やかで、そして、マルタは英語が通じるのです!
マルタの公用語は「マルタ語」と「英語」で、マルタ語は、アラビア語のチュニジア訛りに近い言語だそうです。でもアラビックではなくアルファベットで表記するのが珍しいところ。正直、そっちはさっぱりなんですが、ほとんどの方が(ネイティヴとはいえないけれど)英語を解します。ホテルやレストランの方だけでなく、タクシーの運転手からその辺を歩いているマダムまである程度は英語が通じるので、これは心強かった。
テレビではイタリアの放送局の番組を観ている方も多いので、イタリア語も解する方が多いようです。
ただ、イタリア語で話しかけてみると「少しは話せるけどあまり得意ではないんだ、英語の方がいいな」とおっしゃる方が大勢でした。
ちなみに一昔前、ヨーロッパの上流のご子息達に人気の短期留学先といえば「オックスフォード」や「ケンブリッジ」のサマースクールだったりしたわけですが、今はマルタも大人気だそうで…まぁ正直、こんな訛った英語を学んでどうするって気はするんですけどね。(笑)
でもわかります。だってここには、リゾートとして求めるものも全てがあるんですもの。
勉学を楯にしたヴァケーション。アジアの女性がセブ島あたりの語学学校へ行っちゃうようなものでしょうか。(笑)
そうそう、私がマルタに焦がれるきっかけになった、ローマのマルタ騎士団長の別荘の鍵穴のことをまだお話していませんでしたね。
マルタ騎士団長の別荘があるアヴェンティーノの丘はローマにある七つの丘のうちの一つで、私のお気に入りの場所の一つでもあります。この別荘は、中に入ることはできないのだけど別荘の鍵穴を覗くことができ、鍵穴を覗くとその向こうに広がるのは…。(この続きは、実際に旅にでるなりウェブサイトで見るなり、ぜひ自分の目で確かめてみてください★)
私はこの景色をみたとき、「この素敵な景色を独り占めできるのであろう、マルタ騎士団長さんって何者なのよ。大阪の次に大好きなこの永遠の都で、この最高の眺めを抱いていられる人は…」そんなことを思いました。歴史にはもともと疎くて、自分の足でその悠久の土を踏みながら、貪るように欧州史を漁った若かりし日。その頃から、マルタへの憧れが形成されていったのでした。
でもほんとうはね、透析を導入した時、とても悲しかったんです。
もう二度と、海外になんて行けないのかなって。
大好きな、永遠の都の地をまた踏む日はもう来ないのかなって。
実際、導入1年目は不均衡症候群の症状もひどくずいぶん苦しんで、旅行はおろか仕事もできない時期がありました。
だけど、「透析と付き合う」、「共に生きる」と覚悟を決めて、私は少しずつ順応していきました。
栄養と透析量と運動量、いずれも欲張ることで日常のパフォーマンスは向上していったのです。
そして、導入2年目には、またローマの石畳を踏むことができました。それで少しだけ、「ああ大丈夫。私は生きられる。」そんな自信がついたのです。
それから少しずつ、私は一度失った私を取り戻していって、今まで知らなかった新しい喜びもたくさん知って、普通に働き、普通に遊び元気に迎えた導入9年目の今年、遂に憧れの地マルタへ辿り着いたのでした^^
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