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腎臓と生活習慣 ― 毎日の積み重ねが、腎臓の未来をつくる
2026.3.24
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最近、疲れやすい、夕方になると足がむくむ、喉が渇きやすい、朝すっきり起きられない、トイレの回数が増えた―。こうした変化は、年齢や忙しさのせいと思われがちですが、実は腎臓からのSOSサインであることもあります。
腎臓は、日々の生活習慣の影響を受けやすい臓器です。この記事では、腎臓と生活習慣の関係を知り、普段の暮らしを見直すきっかけをお伝えします。
もくじ
1. 腎臓は全身のバランスを司る「体の総務部」
腎臓は、体の中の水分・塩分・老廃物のバランスを24時間休まず調整しています。全身の状態をくまなく把握し、必要な調整を行うその役割は、いわば「体の総務部」です。
血圧、血糖、体重、食事、運動、睡眠など、日々の生活習慣と密接につながっている臓器だからこそ、生活の乱れが負担として積み重なっていきます。
2. 腎臓を疲れさせる生活習慣
以下の生活習慣が、あなたの腎臓を疲れさせているかもしれません。
喫煙
腎臓に対する喫煙の影響ははっきり分かっていませんが、喫煙は慢性肺疾患をきたし、がんや心臓病、脳卒中にかかりやすいことが知られています。もちろん高血圧のリスクも高めます。
過度な飲酒
喫煙と異なり、飲酒が直接的に腎臓の働きを低下させるという明確な根拠は、現在のところ示されていません。しかし、過度な飲酒は慢性腎臓病(CKD、以下CKD)の原因となる高血圧や糖尿病のコントロールを悪化させるリスクが高まります。そのため、お酒は適量に抑えることが大切です。
水分の摂り方
以前から「腎臓を悪くしないためには水をたくさん飲みなさい」と言われ続けていますが、実は必要量以上の飲水をすることが腎臓の機能の低下を防止するという明確な根拠は、現在のところ示されていません。水分摂取は、あくまで脱水や熱中症の予防のために重要とされています。
睡眠不足
睡眠不足は高血圧や代謝異常を招き、間接的に腎臓への負担を高める可能性があります。
便秘
腎臓の機能が低下すると便秘になりやすく、その便秘がさらにCKDを悪化させるという悪循環を招く可能性があります。
肥満(メタボリックシンドローム)
内臓脂肪の蓄積や代謝異常が重なるメタボリックシンドロームは、CKDを悪化させる主要な要因です。
運動不足
運動不足は肥満、高血圧、糖尿病などを引き起こし、CKDの進行を早める原因となります。
感染症
CKDを含む基礎疾患がある場合や高齢の方は感染症にかかりやすく、重症化しやすいことが知られています。また、感染症によっては腎臓の機能の低下、急性腎障害などを招く可能性もあります。
3. すぐにできる、腎臓を守る生活習慣
腎臓を守るためには、日々の「当たり前」を見直すことが一番の近道です。
禁煙
喫煙者は非喫煙者に比べてCKDが悪化しやすいため、禁煙は必須です。
適度な飲酒
お酒の飲み過ぎはさまざまな病気を引き寄せますし、血圧にも影響します。適正な量を守りましょう。
自分に合った水分摂取
CKDが進行している場合は水分の摂りすぎに注意が必要ですが、基本的には適切な量をしっかり摂ることが大切です。
睡眠時間の量と質の確保
朝、目覚めたときに「ぐっすり眠った」という感覚が得られる睡眠を心がけましょう。
便秘の管理
CKDがある場合、糖尿病による自律神経への影響や、食事・水分摂取量の低下、座りがちな生活習慣などによって便秘が悪化しやすくなります。そのため、主治医と相談しながら適切に管理しましょう。
適度な運動
適度な運動は尿蛋白を抑え、腎臓の機能の維持に役立つことが知られています。ただし、高血圧や心臓病などで運動が適さない場合もあるため、自分に合った運動量については主治医と相談しながら取り組むことが大切です。
感染症対策
CKDがあると、感染症のリスクは高くなり、病気の進行に伴ってさらに上昇します。ワクチンによる予防に加えて、日常的な感染症対策にも意識を向けましょう。
口腔内ケア
口腔内の細菌や炎症は、全身の炎症や感染症リスクを高めることが知られています。
歯周病は腎臓病とも関連が指摘されており、口の健康を保つことは腎臓を守ることにもつながります。毎日の歯みがきに加え、定期的な歯科受診を習慣にしましょう。
疲労感への気づき
腎臓の機能の低下からくる不調を、「年のせい」「睡眠不足」と誤解してしまいがちです。息切れ・だるさ・集中力低下を我慢せずに医師に相談し、定期検査結果で貧血もチェックしましょう。
血圧・血糖・体重のセルフモニタリング
血圧・血糖・体重は、自分では気づきにくい「血管への負担」を知るバロメーターです。喫煙・飲酒・運動・睡眠など、日々の生活習慣とも深く関わっているため、継続してチェックすることが重要です。
皮膚トラブル・かゆみ・乾燥へのケア
皮膚のかゆみや乾燥などのトラブルは、QOL(生活の質)だけでなく、睡眠などにも影響します。 日頃から保湿やスキンケアを行い、かゆみがあるときは我慢せずに相談しましょう。「慢性腎臓病関連掻痒症」と呼ばれるかゆみもあり、適切な医療を受けることが大切な場合もあります。
薬・サプリメントを自己判断で使わない
抗炎症薬(NSAIDs)や市販薬、健康食品は腎臓に負担となることがあります。新しく使う薬やサプリは必ず主治医に相談し、複数の医療機関を受診している場合は「お薬手帳」で情報を共有しましょう。
こころの健康を保つ
気持ちの不調は、睡眠・飲酒・喫煙・便秘・感染症リスクなど、さまざまな生活面に影響します。不安や落ち込みを一人で抱え込まず、必要に応じて心理職や相談窓口を活用することが大切です。
4. 検診で“腎臓チェック”していますか?
腎臓病のリスクがある方にとって、腎臓チェック(尿蛋白とeGFR)はとても重要です。
早期発見につなげる年に1回の検診
日本腎臓学会は、健康な方でも年に1回の定期検診を推奨しています。高血圧や糖尿病がある方は、腎臓への負担がかかりやすいリスクグループです。毎年検診を受けることで、過去の数値と比較して「いつから、どの程度のペースで低下しているか」も把握できます。
腎臓チェックで大切な2つの数値
腎臓を知る2つの大切な指標(数値)
健康診断などの検査項目のうち、腎臓のチェックは主に「尿蛋白」と「eGFR」の両方で行われます。
| 尿蛋白 | 腎臓のフィルターからたんぱく質が漏れ出した、腎臓のSOSサイン。 |
|---|---|
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| eGFR | 日本語では推定糸球体濾過値という、腎臓の”元気度”、あるいは腎臓の残っている機能(%)を指す。血液検査の血清クレアチニン値などから計算する。 |
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尿蛋白とeGFRを確認するには尿検査と血液検査が必要です。健診によっては尿検査が検査項目に含まれていない場合があります。そんな場合に尿検査をする方法を3つご紹介します。
1. 40歳以上75歳未満の医療保険加入者であれば「特定健診(メタボ健診)」を併用する
お住まいの市区町村から送られてくる「特定健診」の受診券を確認してください。特定健診には基本的に尿検査が含まれています。
2. かかりつけ医(内科・泌尿器科)で受診する
糖尿病がある方の場合は、より精度の高い尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)に変更しても良いでしょう。
3. 薬局などで「尿検査キット」を購入する
あくまでもセルフチェックですので、できれば医療機関で受診しましょう。
なぜ、腎臓の機能の低下は早期発見が大切なの?
1. 腎臓は「再生しない」臓器だから
腎臓は一度壊れてしまうと、元の状態に戻りにくいです。そのため、機能の低下が見つかった時点で、残された機能をどう守るかが大切になります。早期発見は、「これ以上悪くしない」ためのスタートラインです。
2. 症状が出た時には手遅れになりやすいから
腎臓は悪化しても、かなり進行するまで目立った症状が現れません。症状が出たときにはすでに病状が進み、透析などの治療が必要になるケースがほとんどです。
3. 脳卒中や心臓病のリスクを避けるため
腎臓の機能が低下すると、全身の動脈硬化が進行しやすくなります。その結果、腎臓だけでなく、脳卒中や心臓病などの重大な病気を引き起こすリスクも高まるため、早期の治療が重要です。
4. 適切な介入で進行を遅らせることができるから
CKDの早期段階であれば、食事療法や薬によって病気の進行を緩やかにし、腎臓の機能を維持できる可能性が高くなります。
5. まとめ:腎臓を守るということ
腎臓は、私たちの生活習慣と密接につながり、日々の積み重ねに大きく影響を受ける臓器です。 喫煙・飲酒・睡眠・運動・食事・感染症対策など、どれも特別なことではなく、今日から少しずつ取り組めるものばかりです。
腎臓の不調は気づきにくいこともありますが、生活を整えることは腎臓だけでなく、全身の健康を守ることにもつながります。
本記事はBoehringer Grant ‘Connections’の助成を受けて作成しました。
参考
- 一般社団法人 日本腎臓学会『CKD診療ガイド2024』(2026/3アクセス)
- 一般社団法人 日本腎臓学会『患者さんとご家族のためのCKD療養ガイド2024』(2026/3アクセス)
- 健康日本21アクション支援システム(厚生労働省)『睡眠と生活習慣病との深い関係」(2026/3アクセス)
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