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透析から移植、そしてオストメイトになった私の体験談

【第8話・最終回】血液透析の導入とこれからの自分

2023.10.2

文:K.F

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学生時代からの腹膜透析、腎臓移植、膀胱直腸瘻などを経て、ダブルストーマの生活を受け入れることでようやく人生が拓けてきました。今回が最終回です。


腎臓移植から20年、主治医からの一言

21歳で生体腎臓移植を受けてから20年が経過し、仕事も順調で体調に大きな変化もなく過ごしていた2019年4月。定期外来で、主治医から思いもよらないことを言われました。

「そろそろ透析ですね。次の事は考えていますか?」

移植した腎臓の機能が低下してきており、GFRの値が20以下になると透析か再移植かを患者に検討し始めてもらうのが、その病院の方針とのことでした。
確かに以前と比べてクレアチニンの数値は高めだったり、毎朝の通勤で使っている階段がきつくなってきたりと思い当たることはありましたが、それは自分の体力が落ちたためだと勝手に決め付けていました。
急な話に私は全く実感が湧かず、少し反発する意味も込めて「全く考えていませんが、もし選ぶなら血液透析です」とだけ返事をしてその日は終わりました。

そして、思いのほか体調を崩すこともなく、病院から具体的な話も出ないまま10カ月が過ぎました。
透析はまだまだ先だと思い込んでいた私に、主治医からの一言がありました。
「K.Fさんが高齢なら、無理に透析を勧めないけど、まだ若いから将来のことを考えて言っているんですよ。」
どうやら自覚症状がなくても、数値上はいつ透析になってもおかしくない状態まできていたようです。
それまで心のどこかで「自分は大丈夫」と意地を張っていたのが、この主治医の言葉をきっかけに肩の力が抜け、透析導入を決意しました。

透析の選択肢としては、血液透析の一択しかありませんでした。ダブルストーマの私にとって、再移植・腹膜透析のどちらにしても、手術でお腹をいじられたくないという強い気持ちがあったからです。また、血液透析を導入している友人の元気な姿を見ており、あまり悪いイメージを持っていなかったことも理由の一つです。


血液透析を導入して

病院と会社の双方に血液透析導入の意向を伝えたのは2020年4月。世間では新型コロナウイルス感染症の流行で緊急事態宣言が発令された時期でした。
私自身も自宅待機からテレワークに移行し、体への負担が減ったことが良い影響をもたらしたのか透析導入の話は停滞気味でしたが、その間に導入のための準備は大抵終えることができました。

そして、2021年1月にシャント作製、2021年3月から透析導入となりました。
導入初日、いちばんの悩みのタネであった穿刺の痛みは、麻酔テープのおかげか先生の腕が良かったのか、想像より軽く済みました。
透析中、これで腎臓は働かなくなると思うと一抹の寂しさがある一方で、移植の初期には複数回の手術やたくさんの抗生物質を使ったにも関わらず、20年以上がんばった移植腎に感謝する気持ちもありました。
透析終了後は、軽い貧血を起こしたようなふらつきと頭痛に襲われ、不均衡症候群を実感することになりました。

さて、導入期の入院を終え自宅近くのクリニックで維持透析に入ったところでトラブルが起きました。足の指にあった靴ズレのような小さな傷が、以前から指摘されていた足の血流不足と動脈硬化によりなかなか完治せず、潰瘍の状態になってしまったのです。適切な治療が行えない場合は足指の切断まで考えなければいけない状態でしたが、透析クリニックの対応と大学病院との連携がうまくいき、全く新しい治療法を受けることができたおかげで、切断は回避、足指も完治しました。
この足指の治療・経過観察が終了した1月をもって、腹膜透析導入以来30年以上通院した大学病院を卒業したことで精神的に楽になり、新たなことに挑戦してみようという気持ちが湧いてきました。そのうちの一つが、この体験談の執筆です。


これからの自分と、忘れない言葉

現在、血液透析を導入して2年半程経過しましたが、ようやく透析とテレワークという生活のリズムに体が馴染んできた感じです。新型コロナウイルスの感染状況次第でテレワークから出社に切り替わる可能性もありましたが、今年の5月以降は会社側の配慮で完全テレワークとなりました。また近い将来、尿が出なくなった時点で尿管皮膚瘻を閉鎖できるので、意外なことでダブルストーマでは無くなりますが、その時は今よりも精神的・肉体的な負担が減り行動範囲が広がるのではないかと楽しみです。

今回、体験談の執筆という形で自分の病歴を客観的に振り返り、食事療法から腹膜透析、そして腎臓移植から思わぬ形でオストメイトになり、現在は血液透析……と、自分のことながらよく頑張っているなと感心してしまいました。
そして、沢山の医療従事者の方から言われた言葉の中でも、特に印象深く忘れられない言葉があります。
それは膀胱直腸瘻の治療と並行して受けていたリハビリの時でした。

K.Fさんは鉄の男だよ。

腎臓移植からダブルストーマになるまでの経緯を全て知っていた、当時の担当理学療法士からの言葉です。
今の私にその言葉が適当かどうかは分かりませんが、この先の人生何が起こっても「鉄の男」という言葉を忘れずに、生きていこうと思います。

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K.F

K.F
10歳で腎不全と診断され、13歳から約8年の腹膜透析の後、21歳で母親から生体腎移植を受けました。腎移植後のトラブル(膀胱直腸瘻)によりオストメイトでもあります。2021年3月、移植腎の機能が低下して血液透析をスタートしましたが、テレワークでの仕事と透析の生活にも慣れ、精神的・体力的にも余裕が出てきたのを機会に、体験談を寄せる決意をしました。

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