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透析から移植、そしてオストメイトになった私の体験談

【第6話】出口の見えないトンネル〜膀胱直腸瘻の治療【後編】

2023.5.8

文:K.F

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腎臓移植後の社会復帰を決断してから判明した膀胱直腸瘻。その約1年5カ月にわたって入退院を繰り返す日々を前々回(前編)前回(中編)にわたってお話ししました。今回は尿管皮膚瘻の造設手術を受けてから退院までのエピソードです。


術後の新たな異変と再度の手術

異変に気付いたのは、尿管皮膚瘻の造設手術から1週間後のことでした。
普段通りベッドに座った際、左太腿あたりに筋肉痛のような痛みが走りました。その痛みは日を追うごとにひどくなり、とうとう寝返りも打てないほどの激痛となったのです。
整形外科での診察や画像診断の結果、膿瘍が骨盤の左側をつたって左大腿部まで及んでいることが分かりました。

体の表面に近い場所にできた膿瘍は針刺しによって取り除けましたが、左大腿部の筋肉に近い場所にできたものは手術でしか取り除けないという結論となり、前回の手術から約3週間後の2001年2月21日、左大腿部と骨盤周辺の膿瘍の除去手術を受けました。
この手術は膿瘍が広範囲に及んでいたために約10時間かかり、術後の私の体には6本もの管が入っていたそうです。

手術後はとにかく体力の回復を優先しました。主治医の許可を取り、病院食以外に差し入れなども積極的に摂るようにしました。結果、炎症反応の数値が徐々に下がり始めたり、リハビリの開始時期が早まるなど順調に経過し、手術から1カ月後には6本全ての管が抜けるまでに回復しました。

しかしここからが正念場。管が抜けたということは、膿瘍の出口が無くなったということを意味し、あとは膿を抗生物質で抑え込むか、針刺しによって取り除くしかありません。しばらくは状態が極端に良くなることも悪くなることもなく、場合によっては針刺しをする という状況が続き、次の決定的な治療法が見つからないまま4月を迎えたある日、それは起こりました。

人工肛門と皮膚の接合部から膿が流れ出てきたのです。
それを目にした瞬間、呆気にとられ、何とも言えない絶望感に襲われたことを今でもはっきり覚えています。


約1年半におよぶ治療・入院生活を乗り越えて

この現象を機に免疫抑制剤の量を調整することになり、まずは2種類ある免疫抑制剤のうち1種類の量を減らして様子を見ることになりました。ただし、腎臓の機能の数値次第で元の量に戻す、という条件付きでした。
ひとまず腎臓の機能の値に大きな変化は見られなかった点には安心したものの、「これで本当に治るのか? いや、退院すら出来ないのではないか?」と精神的に追い詰められていきました。

そして2001年5月11日、もう1種類の免疫抑制剤の量も極限まで減らした上での膿瘍の除去と、今までの人工肛門の場所では危険ということで、再度別の場所に造り変える手術を受けました。しかも今回は術後10本以上の管が入っていました。

しかし、この手術を境に徐々に改善の兆しが見え始め、それまでのような極端な悪化がなくなり、手術から約1カ月後には外泊できるまでに回復してきました。
8月に入ると、5月の手術以来10本以上入っていた管もいよいよ残り1本に。あとはこの1本を抜いても膿瘍の再発や発熱がなく、尿管皮膚瘻の管理を覚えれば退院、というところまで見えてきました。

そして2001年10月12日、ようやく退院となりました。

前年の6月に膀胱直腸瘻が分かってから続いた約1年半に渡る治療と入院生活は、大袈裟に言うと私の人生観を変えた出来事でした。ちなみに、この入院中に減らした免疫抑制剤の量は、2021年の血液透析導入まで変えることはありませんでした。

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K.F

K.F
10歳で腎不全と診断され、13歳から約8年の腹膜透析の後、21歳で母親から生体腎移植を受けました。腎移植後のトラブル(膀胱直腸瘻)によりオストメイトでもあります。2021年3月、移植腎の機能が低下して血液透析をスタートしましたが、テレワークでの仕事と透析の生活にも慣れ、精神的・体力的にも余裕が出てきたのを機会に、体験談を寄せる決意をしました。

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