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管理栄養士である私が、透析患者になった

【第5回・最終回】透析22年目にして思うこと

2021.5.31

文:もみじ

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2000年6月28日の第1回透析を私の第二の人生のスタートとするなら、もうすぐ22年目。成人式を終えて社会人1年生といった時期です(笑)。フルタイムの仕事を退職し、自由な時間ができたので、この機会を一つの節目としてこのじんラボの体験談連載に応募しました。患者一人ひとりそれぞれの人生があり、「透析」といっても千差万別ですから、一人の患者、かつ管理栄養士の私の経験なんて星の数ほどあるうちの一つに過ぎませんが、書きながら過去を振り返るよい機会となりました。


シャントの管理

透析導入で一番初めにやることは、シャント作成術です。何がなんだかわからないまま、とにかくシャントを作るところから準備を始めることが多いと思います。

幸いなことに、私は初めて作ったシャントをずっと使い続けています。シャントは命を繋ぐためにはなくてはならない大事な血管なので、少しでも長く使い続けるために、日頃からの自己管理が必要です。
私は、寝る時と起きた時に必ずシャントの音(スリル)を確認します。手で触る、耳を近づけて聞く(聴診器があればより一層いいです)、内出血があるか?痛みは?と、よく観察します。血圧が低い時期(最近、年単位で低血圧と高血圧の繰り返し)は、シャントが閉塞しやすくなるのでとても怖いです。一昨年の6月には、透析帰りの車内で急激に低血圧になり、5~6回吐いてしまいました。
そのためか一気に脱水となり、シャントに血栓ができたのです。当日はぐったりしていたので気づくのが翌朝になってしまったのですが、朝起きたらスリルが聞こえず、触らなくても、いつもの血管の太さ(盛り上がり)がなくなっていたのに気づきました。初めての体験だったのでとても焦ったのを覚えています。

その日の午前中に血管外科を受診し、最初に血栓をヘパリン(抗凝固薬)の注射で溶かしましたが、これがめちゃくちゃ痛い(泣)。先生が「これちょっと痛いからね!」という言葉を最後まで聞くか聞かないうちから、猛烈な痛みが!比較的我慢強い私でも「痛い!」と叫ぶほどでした。午後には緊急の経皮経管的血管形成術(PTA)をしてなんとか回避できましたが、医師からは「詰まったらすぐに来なさい!あと1日過ぎていたら、血栓は溶けなかったよ」と念を押されました。

とにかくシャント側の腕を気にしながら生活しています。腕時計はやめてリングウォッチに変え、バッグは斜め掛けやリュックを選ぶようになりました。重い荷物も持たないようにしていましたが、最近腕力がなくなってきたので、少しは鍛えないといけないですね。
時々、夏の服装のことを聞かれます。透析導入直後は、アームカバーなども使っていましたが、今は真夏でも年中長袖です。汗はほとんどかけなくなって、蚊にも刺されなくなりましたし、すっかり慣れました。シャントを保護する意味でもいいかもしれません。シャントは個人差があって、透析導入後1カ月で作り直す方もいらっしゃいます。日々の管理が大事です。

高血圧になった今は血管がパンパンに張っている感じで、いつもは触れにくい上腕上部の血管がかなり強く触れられるようになったので、「あれ?ここも穿刺できるかな?」と、次の穿刺場所をスタッフと一緒に検討しています。同じところを穿刺していると、そこだけ血管が硬くなっていくので、刺せなくなることがあるのです。次はどこに刺すか?を常に考えています。

また、ドライウェイトを上げることに抵抗する患者さんがいますが、心胸比などを参考にまめにドライウェイトを調整することも必要ですね。

一口メモ:シャントの管理

シャントの状態は個人差があり、透析導入してまもなく作り直す方もいらっしゃいます。長持ちさせるためには、とにかく日々の管理が大切です。シャントの管理について、詳しくは「シャントは大切な相棒! 〜日常生活での守り方」をご覧ください。


無尿になるということ

透析導入直後は尿が出ていましたが、1年経過する頃からほとんど出なくなりました。そのため主治医からは、「利尿剤はもう使わなくていいね」と言われ、少しの絶望感を覚えた記憶があります。尿が出ないということは、飲んだ水分が体内に溜まること。そっか、水分管理をしなければ、と自覚しました。

親や友達と一緒にいて「トイレ行ってくるね。行く?」と聞かれると、「私はいいよ」と即答します。周りの人には説明するのも面倒なので、話していません。逆に得したことはたくさんあります!高速道路を車で走っていて、渋滞時のトイレの心配をすることがなくなったこと、そして、夜中にトイレに起きる心配がなくなったこと…です!(笑)

以前、高齢の親が「夜中にトイレのために数回起きるから寝不足だ」と訴えていました。そんな中、私は心の中で、「私は大丈夫だよな」と、どこか勝ち誇ったような気分になっていました(笑)。

しばらくはトイレに行く夢を見たりしていましたが、すっかり慣れました。便秘にはならないように、めちゃくちゃ気を付けています。あと、女性は尿道炎、膀胱炎になりやすいです。何回か残尿感や不快感が出たときがありますが、その時は主治医に相談して、抗生剤をもらい克服しました。


これまでも、そしてこれからも
透析とつきあう人生を楽しく豊かに~

振り返ると、あっという間の22年でした。大きな手術を2つ、そして一昨年は白内障の手術をしました。いろいろなことがありましたが、振り返ればいつも多くのスタッフに恵まれ支えられ、優しく接してもらったお陰で、私の透析人生はとても有意義で実りのあるものとなりました。この場をお借りして、御礼申し上げます。
全国の透析患者数は、約34万人。私のような管理栄養士で、かつ透析患者が他にいらしたら、どのような思いをされているかお会いしてお伺いしたいものです。

「管理栄養士って、毎食、料理本にでてくるような食事をしていて、計算もしながら作っているんでしょ?」とよく聞かれますが、そんなことはなく、みなさんと一緒です。
職業柄、無意識に考えていることはありますが、失敗もしますし、疲れていたら盛り付けもいい加減になりますし、お皿を洗わなくて済むよう1皿にまとめちゃいます。仕事となればもちろん別ですが、家族もいるので家での食事はそんなものです。

そこで、普段の料理の写真をお見せします。かっこいい料理は、書店などで他の管理栄養士さんの例を見てほしいです(笑)。

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貴重な一杯を味わう

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バレンタインはいつも手作りクッキー

透析患者の食事管理は、とても難しく感じるため投げやりになる人も多いと思います。そのため、管理栄養士としてやれることがこれからもまだまだあると思っています。これまでの経験を踏まえて、できるだけ患者の目線で食に関する情報を発信していき、多くの患者さんと出会えれば嬉しいです。
最後に、このような機会を与えてくださった「じんラボ」の関係者の皆さんに、心から感謝申し上げます。

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もみじ

もみじ
福島県出身。1982年、女子栄養大学卒業。管理栄養士。結婚し子育てしながらでも働ける公務員を目指し、東京都台東区に就職、保健所管理栄養士として着任。子どもから高齢者まであらゆる世代を対象とする地域保健の第一線において栄養相談や講習会などを通して、人々の食生活改善に尽力を注ぐも2000年に透析導入。週3回4時間の夜間透析をしながら37年間常勤として勤務。2019年退職。

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