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透析患者さんの夏の適切な水分摂取方法

2021.8.16

文:s.yuri

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じりじりと焼けるような暑い夏は、透析患者さんにとって特に水分管理が難しい季節です。冷たい水をグイっと飲んでしまうなど、つい水分を摂りすぎてしまう方がいる一方、心配のあまり水分を控えすぎて脱水症状に陥る透析患者さんもいます。いま一度、夏の適切な水分の摂り方を見直してみませんか?


水分の過不足で生じる体への影響

水分を摂りすぎた場合

透析患者さんが水分を摂りすぎた場合、余分な水分を尿として排出できないため体内に水分が溜まります。その結果、体重増加や血圧の上昇、むくみ、心不全、息ができなくなる肺水腫などが表れる恐れがあります。
また、増加した分を透析で取り除く必要があります。急激な除水は、透析中の血圧低下や足のつり、耳鳴りなどを招きます。

夏に水分を摂りすぎてしまう理由とその対処方法は以下の通りです。

①水分量が多い食品を食べる機会の増加

夏に旬を迎える野菜や果物はが水分を多く含みます。また、夏は麺類やかき氷、アイス、ゼリーなどを食べる頻度が増えますが、麺は塩分や水分が多く、かき氷やアイス、ゼリーなどは水分量が多いので注意が必要です。水分量が多いものを食べた場合は、その分飲水量を減らしましょう。

②塩分の過剰摂取

熱中症対策として、漬物や梅干し、塩飴など塩分の高いものを摂るなどの方法が一般的ですが、塩分制限が必要な透析患者さんは意識して摂取する必要はありません。

夏の激しいスポーツ、炎天下・高温下での肉体労働や農作業(庭仕事)などで大量に汗をかく方は例外ですが、普通に過ごした場合での汗で排出される塩分は多くないのです。
日本人の食塩摂取量の平均値は10.1g(『令和元年国民健康・栄養調査』より)であり、厚生労働省が定める1日の塩分摂取目安量(男性7.5g未満、女性6.5g未満)を大幅にオーバーしています。季節を問わず基本的に塩分摂取量は控えることが大切です。

熱中症対策としての塩分補給は不要? 汗と塩分の関係

汗に含まれる塩分濃度は0.3~0.9% ほどで、汗のかき方によって大きく異なります。
夏の炎天下では10分歩くと約100mLの汗をかくと言われており、例えば夏場に外を30分歩いて300mLの汗をかいたとすると、排出される塩分量は単純計算で約0.9~2.7gとなります。

一見するとそれなりの塩分量を排出している計算ですが、汗を作り出す汗腺には流れ出た汗からナトリウムを再吸収する仕組みがあります。特に汗が少量の場合は再吸収されやすく、実際の汗に含まれる塩分濃度は低くなります。食塩摂取量が多い現状を踏まえると、大量に汗をかく仕事などに携わっている方を除き、日頃の食事量を維持できていれば夏だからと意識して塩分補給をする必要はありません。

透析患者さんの中には透析歴が長くなるにつれて発汗量が減り、ほとんど汗をかかない方もいます。汗のかき方は個人差が大きいので、夏場の適切な塩分・水分摂取量は自己判断せず、必ず主治医に相談しましょう。

水分を控えすぎた場合

多量の発汗や下痢、嘔吐などで体液が失われると、体内の水分や細胞の浸透圧などを調節する電解質が不足します。この水分と電解質が失われた状態を脱水といい、頭痛やめまい、脱力、食欲の低下などの症状が表れます。血管内の水分が失われると、血栓ができやすくなるためシャント閉塞につながります。

透析患者さんの場合、水分管理を意識するあまり、水分摂取量が不足して脱水状態に陥る恐れがあります。特に高齢の方は体内の水分量が減る上に食事量が少なく、喉の渇きを感じにくくなるため特に注意が必要です。

じんラボの「夏の水分摂取に関する悩みアンケート」より
  • 喉が渇かないように塩分を抑えているので、あまり水分を摂りたいとは感じないが、汗をかかないので熱がこもる感じになり、どの程度の水分補給が必要か悩むことがあります。(50代女性/東京都/透析歴1~2年)
  • 透析歴33年なのに水分制限は辛いです。うがいでしのいでいますが、意思が弱いためついつい飲んでしまいます。週末でなんとか調整してドライウェイトにしている状態です。(60代女性/神奈川県/透析歴31年以上)
  • 暑がりなので冷たい飲料が欲しくなってしまう。(50代男性/北海道/透析歴1~2年)

夏でも水分を適切に摂るための対策

自分に合った適切な水分量を把握する

水分の摂りすぎや脱水を防ぐためには、ドライウェイト、尿量、体重増加量から水分量を調節しましょう。起床後・外出前・外出後・就寝前など1日の中で体重をこまめに測ることで体重の増減の把握が可能です。透析が中1日の場合はドライウェイトの+3%未満、中2日では+5%未満の増加に抑えることが好ましいとされています。

透析患者さんでも、運動などで汗を大量にかいたときは相応の水分補給が必要です。運動や作業前後の体重差が汗をかいた量です。その量を補給すれば良いわけです。

飲みすぎ・摂りすぎ防止!水分補給の工夫

さらに、上手な水分摂取の工夫をご紹介します。

  • 飲み物は冷やしすぎず、できる限り常温に近い温度で飲む
  • 一気に流し込まず一口ずつ飲む
  • 甘味の強い飲み物や菓子類を避ける
  • 冷たい飲み物を飲みたいときは氷(一個あたりの水分は約20mL)を舐める

同じ飲み物でも、冷たいと飲みすぎにつながります。また、冷たい飲み物を一気にたくさん飲むと 、胃が冷えて消化不良や下痢の原因にもなるため、できるだけ常温に近い飲み物を少しずつ飲みましょう。

喉の渇きは塩分を多いものや甘いものを食べた後に強く感じるため、食事で塩分を控えるのはもちろん、飲み物や間食で甘いものを控えることも有効です。

じんラボの「水分摂取の工夫に関するアンケート」より
  • 飲む量を毎回計量し、飲んだ量をメモしている。(40代男性/広島県/透析歴31年以上)
  • 少しずつ飲むのはよりつらく感じるため、飲みたいときに一気に飲んで後は我慢しています。(50代女性/東京都/透析歴11~20年)
  • 一回に飲む量をペットボトルに入れて冷やしておく。それを10口に分けて飲むと満足感が得られる。(50代男性/東京都/透析歴31年以上)
  • 摂取した水分量を、持ち歩き用ノートに記載している。(40代男性/東京都/透析歴6~10年)
  • 冷たい飲み物ばかりでは体がダルくなったり胃がやられたりするので、エアコンが効いた部屋では白湯を飲んだりして体温調整してます。(50代女性/鹿児島県/透析歴21~30年)

【執筆後記】

透析をしている方にとって、水分は摂りすぎても不足しても大きく命に関わります。気をつけなければならないことが多いと億劫になりますが、年々厳しさが増す夏を元気に乗り切るためには、飲水量だけではなく、食べ物の塩分・水分量の確認、こまめな体重測定などを総合的に心がけましょう。


本記事を監修いただいた、南青山内科クリニックの鈴木孝子先生による『「生涯現役」をかなえる在宅透析』が2021年7月に出版されました。
日本で透析をされている方のほとんどが医療機関で透析を受けていますが、本書では透析をしていない人に近い生活を送れる「在宅透析」に着目し、在宅透析の知識やメリット、家庭でできる慢性腎臓病のケアなど、在宅透析や慢性腎臓病について幅広く解説しています。ぜひご一読ください。

『「生涯現役」をかなえる在宅透析』の出版にあたって

いつも、患者さんに元気になっていただきたいと思って診療させていただいております。その思いを皆様に少しでもお役に立てていただきたく、このたび、南青山内科クリニックの開業10年の記念として本を出版いたしました。

腎臓について気になったり、腎障害がかなり増悪して悩んでしまったり、腎代替療法をしなければならなくなったり、と考え込んでしまう患者さんは多いかと思います。
この本は、

  • 腎機能の低下が認められ、その増悪を防止するためにどうしたら良いか悩んでいる
  • 腎代替療法(透析療法や腎移植)を開始しなければならなくなり、どのような選択をしていけば良いか、思い悩んでしまっている
  • 透析療法を行っている方や腎移植後の方でも迷いや悩みや不安が出てきた

そのようなときに、ぜひ読んでいただき、少しでも皆様のお役に立てればと願っています。この本で、少しでも皆様が御元気に充実した人生をお過ごしになれたら、本望です。

南青山内科クリニック 鈴木孝子

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s.yuri

s.yuri
じんラボのライター。大学卒業後、地元紙で主に教育や警察、司法、スポーツ、地域ネタを追いかける社会部記者として働き、その後夫の転勤に伴いゆるいフリーランスでライター・編集者として活動してきました。
学生時代から医療福祉に関する執筆に関わりたいと思っていたのが、十数年の時を経てじんラボでご縁をいただました。透析や腎臓病の勉強を重ね、少しでも元気の出る情報をお届けします。

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