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私は諦めない~障害と難病が教えてくれたこと~

【第3話・最終回】推しの背中

2020.10.19

文:徳井希望

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新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が発令され、勤め先の大手雑貨店では正社員以外のスタッフは全員休職になりました。 非常勤スタッフの私は、時間ができたため公務員採用試験の勉強と小説の執筆に励みつつも、心の中ではいつもこう思っていました。

「いつになったら、元の生活に戻るのだろうか?」


緊急事態の中での決断

世間的に不安が続く中、私にとって重大な場面が2つありました。
まずは、6月にと決定していた扁桃腺摘出手術が緊急事態宣言の関係で延期になったこと。もう一つは小説スクールの新しいコースに進むかどうかでした。

新型コロナウイルスの影響で、新しいコースの授業がいつ始まるか全くわからず、腎臓病を抱えたまま次の段階へ進むべきなのか、自問自答を繰り返しました。「コロナ禍でも公務員採用試験は必ずある。小説家の夢を追いかけるのは一度休止して、腎臓病の治療と勉強に絞ってみてもいいのでは?」と、思うようになっていたのです。

迷った私は、男性ダンスグループ好きなメンバーさんのインタビュー記事を読んで決断しました。そのメンバーさんは18才からダンスを始め、ずっとダンスに集中して続けてきています。だからこそ、今の輝かしい結果があるのだと納得したのです。

今、集中するべきことは公務員採用試験の勉強と腎臓病の治療だと決めた私は、小説スクールの先生に電話し、新しいクラスには進まず勉強と治療に励みたいと伝えました。先生は電話口で残念がっていましたが、私の意思を尊重してくれました。
勉強と治療に集中するうち緊急事態宣言は解除され、仕事が再開されました。今度は、仕事と治療と勉強の3つを両立させる日々が始まったのです。


小説執筆を休止して生まれた変化

仕事の再開でコロナ禍前のような慌ただしい生活に戻っていく中で、さまざまな変化が生まれました。

勉強面では、小説の執筆を休止したことで公務員試験対策の時間をじっくりとれるようになり、苦手科目対策を徹底するようになりました。そして生活面では、家事やみだしなみに気を使う精神的余裕が出て、周囲から「徳井ちゃん、変わったね」と言われるようになったのです。忙しかった時は自分自身を振り返る余裕がなかったので、余裕を持つことは大切なのだと思いました。

6月に入ると主治医から連絡をもらい、延期された手術を8月末に行うことが決まりました。

公務員試験受験を始めた当初は東京の受験を希望していましたが、両親と障害者支援センターの担当職員さん、主治医との話し合いで関西方面へ志望変更することになりました。夢と真剣に向き合い、そして新型コロナウイルス感染症の状況と関西に住む両親のことを真剣に考えた末の結論です。若い時は自分自身の気持ちだけで突っ走っていましたが、年を重ね、そして病気と障害を経験したからこそ少し成長できたのだと思います。


いよいよ迎えた手術、そして公務員試験の決断

人生初の術前PCR検査と手術を控え、緊張しながら入院準備をしました。PCR検査は陰性で、入院・手術許可が出たので治療スタートです。

入院当日、緊張する私に対して主治医の先生と看護師さんが「手術はすぐに終わりますよ」と励ましてくれました。しかし手術前日は、ご飯はなんとか食べられたものの緊張状態でした。面会は禁止だったこともあり、心細さも感じていました。

緊張したまま迎えた手術当日、母と叔母夫妻が待機してくれていました。全身麻酔が切れて目が覚めたら手術は終わっていて、あっという間だったように感じます。しかし、麻酔が切れてから襲ってくる喉の痛み、そして術後の絶食で、辛い、痛い、悲しいーの三重奏でした。

手術翌日には喉の痛みとの戦いつつ公務員試験の勉強を再開。4日目の流動食から徐々に通常食になりました。食事を食べ終えたのは病棟で1番乗りという名誉(不名誉?)な記録をもらいましたが、体力・心ともに少しずつ余裕が出てきて5日目、6日目からは普通の生活を送れるようになりました。

しかし、ステロイドパルス療法の開始前に、今年の公務員試験を見送るようにドクターストップがかかりました。体調、そして新型コロナウイルスの感染状況を踏まえたことが理由です。その後、リモートで精神科の先生と支援員さんも加わり、話し合いの末に今年の公務員試験は見送ることが決定しました。

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今回の手術と治療で、私の腎臓の状況もわかり、どう対策したらいいのかもようやく見えてきました。慢性腎臓病(CKD)のステージG1A3が私の今の状況です。体を大事にしなければ、と強く思いました。

周りの人々に支えられながら手術を経て、感謝の気持ちを持って「ありがとう」「ごめんなさい」が素直に言える温かな人間でいたいと思いました。

両親は、仕事が忙しいのに遠い隣の市の病院まで着替えや差し入れをほぼ毎日交代で届けてくれました。職場の方々は私の分の仕事(掃除、販売、商品メンテナンス)もこなしながらお店を守ってくれ、感謝の気持ちしかありません。

職場の方々や両親に何があった時は力になりたいので、皆さんに恩返しして行きたいと思っています。身体を大事にしながら、これからも頑張っていきます。

最後になりますが、この連載を支えていただいた「じんラボ」の皆様、読んでくださった方々、そして大好きな男性ダンスグループのメンバーさん、両親に感謝します。
皆様、コロナ禍が続く中、お身体をくれぐれも大切になさってください。私も来秋の公務員採用試験に向けて頑張ります。今まで本当にありがとうございました。

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徳井希望

徳井希望
1982年11月生まれの37才、兵庫県在住。
34才で発達障害(自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動症)、36才の昨夏にIgA腎症(保存期)と診断される。
趣味は水泳、読書、ライブ&ドラマ鑑賞、ピアノ。特技はピアノ演奏。
現在は障害者雇用で雑貨店の販売員として働きながら、公務員と作家を目指して奮闘中の日々を送っている。

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