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【第40回】
シャントトラブルを招かないために 〜ある患者の経験〜

2019.10.1

文:アスペクト比P

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朝起きたら、腕のシャントの部分が痛い、熱を持っているような気がするので聴診器でスリル音を聞いてみたらまったく音がしない…。シャントの閉塞です。考えたくないですがそうなった時、あなたはどうしますか?

今年で17年目の透析生活の間に、左手側で10回の閉塞と右手側で6回という具合にシャントトラブルには泣かされてきました。シャント再建手術のための入院が長引いて、仕事を辞めざるを得ないこともありました。こんな私の経験をほんの一部ですがご紹介します。


私の場合その1:一番きつかった体験

まずシャントトラブルの中で一番きつかった体験です。
左側のシャントの血流抑制のため血管を縛る手術を受けました。血圧が高いまま手術を行ったため血管が風船のように膨らんでしまい夜中に破裂しました。緊急手術で、左手を止血して利き手である右手側に新たなシャントを作りました。

あの時は自分が入院中で対処が早かったことを本当にラッキーだと思いました。ちなみに穴が空いてしまった左側の旧シャントは閉じたのですが、その時に感染を起こしてしまいました。毎日透析を受ける病院に通院し、血管から出る膿を排出して消毒しました。そして、全身に感染症の影響が出る恐れもあるということで、血管ごと切除して取り出しました。

この一連のトラブルによって入院が長引いた事で当時勤めていた某公社を退職、その後1年近く無職の状態でした。求職するも履歴書を出す前に「透析患者」というだけで門前払いされるということも何度も体験しましたが、当時通っていた病院の先生からのご紹介で新たに透析を始める病院で看護助手を勤めるという僥倖に恵まれました。


私の場合その2:閉塞に継ぐ閉塞

その後も何度かシャント閉塞で緊急経皮経管的血管形成術(PTA)などを経験しましたが、昨年10月のシャント閉塞からの再建入院が最新のトラブルです。

ドライウェイトがかなり厳しい設定されていて、心胸比(CTR)が41%まで落ちていたので、仕事中にも血圧が下がって転倒して点滴を受けたりしていました。ある日、帰宅中のバスの中で立ち上がろうとしたときに意識消失してしまい、救急車を呼ばれそうになりましたが断って帰宅。

次の日に起きたら右手シャント側の違和感で「ああ、またかぁ。」とため息をつきながら聴診器で音を確認しましたが血流の音はなし。スリルも感じないためシャントが閉塞したと判断して、入院に必要なものをバックに詰めてから「シャントから音がしないので、閉塞したと思います」と透析を受けている病院に電話連絡して、指定の時間に病院に向かいました。

えーまず自分で自分にツッコミを入れると、シャントの閉塞が慣れっこになっていて、普通なら大パニックになってもおかしくない状態でも落ち着いているのがおかしいですね。17年間で20回以上もシャントが閉塞してPTAやシャント再建手術を受けているので、かなり感覚が普通の透析患者さんとは違うとは思います。

この時は緊急PTAで血管内の詰まりが取り除けず、次の日にまた閉塞してしまいました。そこで一番狭くなっていた吻合部を切除して取り除き、人工血管に置き換えました。ところが手術から半日後にはまたしても閉塞。
ついには首に透析用カテーテルを刺したままタクシーに乗って大病院に転院、4時間かけてシャント血管と付近の血管にびっしりと詰まった血栓を取り除きました。ゴリゴリと血栓を押し出す痛みに悲鳴を上げ、その後に新たな部分で血管を再接続したのが今使っているシャントです。人工血管は感染の恐れがあるので右手側にそのまま留置ということになりました。

こうやって思い出すと、結構紙一重な危ない体験しているなぁと我が事ながらヒヤッとしてしまいます。こんな私からの、シャントトラブルを招かないための確認方法を、特に大切な2点に絞ってご紹介します。


シャントの日々のチェック方法

シャントの音を聞く

朝と寝る前などに聴診器で血管の中で血液を流れる音を聞きます。聴診器が無い場合は、耳をシャントに近づけて聞いてみてください。「ゴーゴー」という音が聞こえているならまずは大丈夫です。閉塞が進行していたり、血管の中に血栓が出来ていたりすると、音が変わって「ヒューンヒューン」といった高い音が聞こえてきます。その場合は主治医やスタッフに報告してください。

シャントを触る

シャントの血管部分を触って弾力を確かめてみましょう。これが硬いと詰まりかけている可能性もありますし、石灰化が進行しているかもしれません…。
触ったら熱があるように感じるときもあります。その場合は、シャント部分が感染を起こしている可能性もありますので、病院でチェックしてもらいましょう。


シャントは大切なパートナー

シャントは透析を続けて日々の生活を送るための大切なパートナーです。病院のスタッフ任せにはせず、自分自身でのチェックを日々の習慣とすることで異常も見つけやすくなります。
異常や気になる点があった場合は、主治医やスタッフに直ちに相談することが一番大切なことです。シャントエコーなどの検査を勧められた際には受けるようにしてくださいね。

「閉塞を広げるPTAは痛いのでイヤ!」という方も多いのですが、シャントが完全に詰まってからの血栓除去手術はとても大変です。血管の中にある血栓を薬である程度は柔らかくしても、結局は血管の中にある血栓を器具を使って力技でゴリゴリと掃除するので痛みもものすごく、出来れば皆さんに経験してほしくありません。

シャントの日々の自己管理を具体的にまとめた「シャントは大切な相棒! 〜日常生活での守り方」もぜひご覧ください。
私の体験を思い出して、シャント閉塞やトラブルのないように日々のチェックを心がけてください。

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アスペクト比P

アスペクト比P
中国地方に住むオタク系透析患者。 20歳の時にIgA腎症と診断され、忙しさにかまけて6年間ほぼ治療をしないまま放置してしまい、27歳の時に透析導入。今年で透析導入16年目、透析病院での仕事と透析に趣味に透析患者会のお手伝いと走り回っています。

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