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慢性腎臓病(CKD)と社会を動かす力「アドボカシー」
2025.12.15
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この記事のポイント
- 慢性腎臓病(CKD)の社会的課題は多岐にわたり、構造的な問題がある
- 他の病気ほどは進んでいない、CKDにおけるアドボカシーの必要性・重要性の再確認
- アドボカシーとは誰にでもできる社会参加、すぐに、簡単にできることもある
「アドボカシー(Advocacy)」という言葉をご存知ですか?
どこか専門的で、“政策”とか“社会運動”のような堅くてとっつきにくいイメージがあるかもしれませんが、本来の意味は、もっとシンプルで身近です。
簡単に言うと、「こえをあげて、状況をいい方向に動かすこと」です。
たとえば、
「もっとCKDを早期発見できるようになればいいのに」
「CKDでも治療と仕事を両立しやすい社会になってほしい」
「CKDに対する誤解や偏見をなくしたい」
こうした気持ちの延長線上にアドボカシーがあります。
他の病気では、ほどほど進んでいる「こえの力」
たとえば糖尿病、がんの分野では患者会・支援団体・政策提言などがすでに強く、社会の理解も広がっています。
- テレビ・雑誌で大きく扱われる
- 一般向けの啓発月間や募金キャンペーン
- 患者会が厚生労働省に意見書を提出
- 職場支援制度が比較的整っている
一方でCKDは、「地味だけど、本当は社会的な支援がとても必要な病気」と言えるでしょう。
- 患者数は非常に多い(成人の5人に1人程度と言われています)
- でも認知度は糖尿病やがんより圧倒的に低い
- 自覚症状が出にくく「気づかれにくい病気」
- 治療と生活が密着しているのに、サポートが足りない
だからこそ、CKDでのアドボカシーの価値は大きく、いま動き出せば、未来の当事者の助けとなるでしょう。
この記事が、医療におけるアドボカシーの現状や、CKDに関する実際の取り組みを知るきっかけとなり、CKDをもつ方がより生きやすくなるにはどうすればよいかを、皆さんと一緒に考える機会になればと思います。
アドボカシーってなに?
―難しくない、“社会をちょっと良くするしくみ” ―
医療におけるアドボカシーは、「当事者や周囲の人がこえをあげ、よりよい医療・よりよい社会を作ること」です。
- 困っていることを言葉にする
- 気づいたことを周りに伝える
- 自分の経験や思いを共有する
- 仲間とつながる
- 当事者だけではなく医療者とも一緒に考える
- 誰もが安心して自分の「こえ」を伝える場づくり
- 行政や医療につながる改善案を示す
これらはアドボカシーの一部ですが、今すぐにでも取りかかれるものもありますね。わざわざ団体を作る必要はありませんし、SNSで「こんな失敗をした」「こんな制度があって助かった」と共有することなども、立派なアドボカシーです。
CKDにアドボカシーが必要な理由
CKDが他の病気に比べてアドボカシーが進みにくい理由には、構造的な背景がありそうです。思い当たることを挙げてみます。
- ①症状が出にくく、危機感が共有されにくい
- 痛い・苦しいといった急激な症状がないため、話題になりづらい。
- ②患者数が多いにも関わらずバラバラになりやすい
- 生活習慣、高血圧、糖尿病の延長線上にあり、「腎臓病」としてのつながりが弱い。
- ③誤解や偏見が根強い
- 透析になったら終わり、などの誤った情報が未だに多い。
- ④制度や支援の情報が複雑でたどり着きにくい
- 医療費、高額療養費、栄養指導、就労などについて、知っておくと助かる制度があるのにみんなに届かない。
これらから、アドボカシーの必要性が生まれます。
実際に起きている日本の「CKDアドボカシー」の動き

日本医療政策機構(HGPI)の政策提言
HGPIは、CKDの早期発見と受診行動の改善を目指し、科学的根拠に基づいた受診勧奨のしくみづくりを提案しています。
- 健診結果を受診につなげるしくみの不足
- CKDリスクを見逃さないための基準づくり
- 医療・行政・保険者の連携体制の推進
- 長期データの整備で、重症化予防を強化
特に、「CKDは受診につながりにくい」という構造的課題を社会レベルで解決しようとしているのが特徴です。
なお、HGPIの患者当事者支援プロジェクトにおいては、じんラボ所長の宿野部武志がアドバイザリーボードメンバーとして参画しています。
【政策提言】腎疾患対策推進プロジェクト「慢性腎臓病(CKD)対策の強化に向けて~CKDにおける患者・当事者視点の健診から受療に関する課題と対策~」(2025年7月9日)
自治体の取り組み
さまざまな地域で、各々の実情に合わせた取り組みが進められています。
■東京都「ほっとけないぞ!CKD」
東京都は、一般市民向けにわかりやすく CKD を説明する啓発ウェブサイト・リーフレット「ほっとけないぞ!CKD」を展開しており、CKDが最初に理解しやすい構成になっています。
■鹿児島市 CKD予防ネットワーク(重症化予防・医療連携)
鹿児島市ではCKD予防ネットワークとして、地区単位での医療機関、保険者、専門医、薬剤師等のネットワークを構築し、重症化予防を目指した連携体制を運用しています。このネットワークモデルは、単なる啓発に留まらず、実際に医療現場と結びついた具体的な施策として注目されています。
■徳島県のCKD総合対策(連携体制強化)
徳島県は長年にわたりCKD関連の死亡率が高く、県として包括的な対策を進めています。加えて、徳島県庁のライトアップや啓発動画放映など、社会的な注意喚起の場も設けています。
■香川県:啓発イベントの実施
香川県は、イオンモールなどのスペースで、“世界腎臓デー”に合わせた啓発イベントを開催しています。「あなたの腎臓、気にしたことありますか?」といったキャッチコピーで、一般市民にCKDを身近に感じてもらう活動を行っています。
日本腎臓病協会(JKA)の活動
JKAは、①疾患認知度向上、②一般向け普及、③専門家育成(腎臓病療養指導士制度)の3本柱で、CKDにおけるアドボカシーを進めています。
特に 腎臓病療養指導士制度は、「CKD療養の専門家」を育てる貴重な資格制度で、患者さんの生活支援の質を底上げするしくみとして注目されています。
アドボカシーがつくる未来のあたりまえ

アドボカシーの最終的なゴールは、CKDをもつ方が、普通の生活をあたりまえに続けられる社会をつくることです。
目指す「あたりまえ」例:
- 健康診断でみんなが腎臓をチェックするのがあたりまえになる
- CKDの治療と仕事の両立があたりまえになる
- 家族や周囲の人がCKDを理解し、自然に寄り添える
- CKDに対する誤解や偏見がなくなる
- 必要な時に必要な支援にみんながつながる
このような小さな“あたりまえ”の積み重ねが、未来を根本から変えていきます。
アドボカシーとは、大きなこえをあげることでも、難しい運動を始めるなど、大層なことではありません。
この記事を読んで、「CKDって社会的にこんな課題があったんだ」「こんな取り組みがあるんだ」などの小さな気づきが、アドボカシーの最初の一歩です。誰にでもできる、社会参加のひとつのかたちなのです。
最後に:あなたにもできる「CKDアドボカシー」の例
①体験を言葉にして発信する
ブログやSNSで、旅行や日常生活での工夫・困りごと・気づきをシェアする。
例:「CKDのための旅のチェックリスト」「薬を忘れたときの対処法」など
自分でブログなどをやっていなくても、例えばじんラボの体験談で共感したものがあれば、その体験談をSNSで紹介してもいいですね。
②患者会や地域のイベントに参加・協力する
地元の腎友会や医療機関が主催する講演会、座談会に参加してみる(はじめは話せなくても、話を聞くだけでも大丈夫)。
体験をみんなと共有したくなったら、名乗り出て話すのももちろんOK!
③行政や医療機関にフィードバックを届ける
医療機関や市区町村の健康課に、改善してほしい点や提案を伝える。
例:「治療と仕事の両立支援や、行政サービスの情報がもっと探しやすいと助かる」など
④仲間とつながる場を利用する
オンラインで小さな交流会やLINEオープンチャットなどで情報交換の場に参加する。
じんラボのしゃべルーム※への参加ももちろんOK!
透析の話題が多い印象ですが、透析をしている人たちはCKDの先輩です。CKDや生活、仕事についての悩みなどを書き込んでみてもいいでしょう。
※会員登録(無料)が必要です。
参考
- 日本医療政策機構(Health and Global Policy Institute; HGPI)
(2025/12 アクセス) - NPO法人 日本腎臓病協会 | Japan Kidney Association
(2025/12 アクセス) - 東京都「ほっとけないぞ!CKD」
(2025/12 アクセス) - 鹿児島市「慢性腎臓病(CKD)予防ネットワーク」
(2025/12 アクセス) - 徳島県「正しく知って,正しく予防!あなたの腎臓は大丈夫ですか?~徳島県の慢性腎臓病(CKD)対策~」
(2025/12 アクセス) - 香川県「世界腎臓Day2025 inかがわ ~あなたの腎臓、気にしたことありますか?~」
(2025/12 アクセス)
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