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慢性腎臓病(CKD)とフードファディズム【第2回】
フードファディズムの問題点
2023.8.21
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前回のフードファディズムの基本的な知識に引き続き、今回は実例と何が一体問題なのかについてお話します。
フードファディズムの実例
3つのタイプ別に実例を新旧取り混ぜていくつかご紹介します。
1)健康への好影響をうたう食品の爆発的な流行
グルコサミン、コラーゲン、水素水など
これらは成分の有効性のデータが十分とは言えないにもかかわらずブームになったり商品がヒットしているものです。例えば、コラーゲンは摂取しても消化されて体内に入らず増えるわけでもありません。また、配合化粧品に関しても、肌表面を潤わせているだけに過ぎません。
納豆
納豆に強力なダイエット効果があるとTV番組が放映したところ社会現象となり納豆が品薄になりました。さらにその後の調査でダイエットの効果と使われた写真は無関係なもので、アメリカの大学教授の字幕が捏造だった、実験データも測定しておらず、捏造であることが発覚しました。コロナ禍でも「ビタミンK2が豊富な納豆はコロナに効く」と注目を集めたものの消費者庁は「根拠が乏しい」と予防効果を否定しましたが、品薄状態となりました。
2)食品・食品成分の“薬効”強調
玉ねぎで血糖値が下がる
玉ねぎから分離・抽出したSMCS(S-メチルシステインスルホキシド)という天然アミノ酸の一種を45日間、糖尿病ラットに投与したら血糖値が低下したという1995年の論文から「タマネギで血糖値が下がる」と言われるようになったものの、体重50kgの人間の摂取量を換算すると生の玉ねぎ50kgを接種するということになります。つまり、血糖値を下げる量を食べるのは到底無理なんです。
3)食品に対する期待や不安の扇動
近代菜食主義
菜食主義とは言わずとしれた「ベジタリアン」のことですが、時々その菜食に関する論旨に首を傾げざるを得ないものがあります。19世紀はじめに菜食主義の詩人が、人間の身体的道徳的堕落は不自然でひどい食習慣が原因であると考え「人間と人間が社会的に感染させた動物(家畜のこと)だけが病む」と論じました。全粒粉のグラハムクラッカーで有名なシルヴェスター・グラハムは、動物を食べると動物的な傾向が悪化して食欲と性欲が増加するとし、自分が考案した菜食の食事療法を教えていました。
グルテン
「グルテンフリー」をうたった食品をよく見かけますが、グルテンは誰にとっても悪者というわけではありません。グルテンフリーはグルテンに対する免疫反応が引き金となって病状を引き起こすセリアック病という自己免疫疾患に対する食事療法ですが、「小麦は食べるな・パンを食べるな」という、グルテンが慢性病を引き起こしかつ病状を悪化させる、などとした書籍が大流行し、グルテンが悪者に仕立て挙げられてしまったからです。グルテンアレルギーと診断された人以外への健康被害は認められていません。
フードファディズムは何が問題なのか
食品ロス
特定の食品が流行ってしまった場合、増産で過重労働を招いたり、集中的に生産するようになって流行が終わると商品がダブついて売れ残りとなり、まだ食べられるのに廃棄される食品(食品ロス)が出てしまいます。
悪い噂が流れれば、当然その商品は売れ残り、これもまた食品ロスを引き起こします。
適切・適当な食事から遠のいてしまう
基本的に腎臓病を持っている場合、全ての慢性疾患に言えることかもしれませんが、生活習慣の改善、療法、食べる量を抑えるなどを組み合わせてじっくりと治療に取り組む事が前提です。ちょっと変わった食品や食事方法を取り入れる「だけ」ですぐに結果が出るはずもありませんし、「塩分は悪い(怖い)」と思い込み食事を控えすぎて他の栄養が摂取できない方の話も聞いたことがありますが、これも一種のフードファディズムではないでしょうか。
ひとつ言えることは、年齢や体質、病気の有無などで食べ物や成分を摂取する適量は違いますが、いずれにせよ「食べ過ぎ」「食べなさ過ぎ」は良くない、ということでしょう。
おまけ:食生活指針
食生活指針は、2000年に文部省(当時)、厚生省、農林水産省が連携して策定された、国民一人ひとりの健全な食生活の実践を図ることを目的としたガイドラインです。
食生活の改善など生活習慣を見直すことで疾病の発症や合併症の予防、食品廃棄など食生活をめぐる解決に向けて策定されました。病気の有無に関わらず、食生活および生活の質(QOL)に普遍的に関わる指針です。
食事を楽しみましょう。
- 毎日の食事で、健康寿命をのばしましょう。
- おいしい食事を、味わいながらゆっくりよく噛んで食べましょう。
- 家族の団らんや人との交流を大切に、また、食事づくりに参加しましょう。
1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを。
- 朝食で、いきいきした1日を始めましょう。
- 夜食や間食はとりすぎないようにしましょう。
- 飲酒はほどほどにしましょう。
適度な運動とバランスのよい食事で、適正体重の維持を。
- 普段から体重を量り、食事量に気をつけましょう。
- 普段から意識して身体を動かすようにしましょう。
- 無理な減量はやめましょう。
- 特に若年女性のやせ、高齢者の低栄養にも気をつけましょう。
主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
- 多様な食品を組み合わせましょう。
- 調理方法が偏らないようにしましょう。
- 手作りと外食や加工食品・調理食品を上手に組み合わせましょう。
ごはんなどの穀類をしっかりと。
- 穀類を毎食とって、糖質からのエネルギー摂取を適正に保ちましょう。
- 日本の気候・風土に適している米などの穀類を利用しましょう。
野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて。
- たっぷり野菜と毎日の果物で、ビタミン、ミネラル、食物繊維をとりましょう。
- 牛乳・乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などで、カルシウムを十分にとりましょう。
食塩は控えめに、脂肪は質と量を考えて。
- 食塩の多い食品や料理を控えめにしましょう。食塩摂取量の目標値は、男性で1日8g未満、女性で7g未満とされています。
- 動物、植物、魚由来の脂肪をバランスよくとりましょう。
- 栄養成分表示を見て、食品や外食を選ぶ習慣を身につけましょう。
日本の食文化や地域の産物を活かし、郷土の味の継承を。
- 「和食」をはじめとした日本の食文化を大切にして、日々の食生活に活かしましょう。
- 地域の産物や旬の素材を使うとともに、行事食を取り入れながら、自然の恵みや四季の変化を楽しみましょう。
- 食材に関する知識や調理技術を身につけましょう。
- 地域や家庭で受け継がれてきた料理や作法を伝えていきましょう。
食料資源を大切に、無駄や廃棄の少ない食生活を。
- まだ食べられるのに廃棄されている食品ロスを減らしましょう。
- 調理や保存を上手にして、食べ残しのない適量を心がけましょう。
- 賞味期限や消費期限を考えて利用しましょう。
「食」に関する理解を深め、食生活を見直してみましょう。
- 子供のころから、食生活を大切にしましょう。
- 家庭や学校、地域で、食品の安全性を含めた「食」に関する知識や理解を深め、望ましい習慣を身につけましょう。
- 家族や仲間と、食生活を考えたり、話し合ったりしてみましょう。
- 自分たちの健康目標をつくり、よりよい食生活を目指しましょう。
文部省決定、厚生省決定、農林水産省決定
平成28年6月一部改正
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参考
- 高橋 久仁子「フードファディズム―メディアに惑わされない食生活」中央法規出版 (2007/10/1)
- アラン・レヴィノヴィッツ (著), ナカイサヤカ (翻訳)「さらば健康食神話: フードファディズムの罠」地人書館 (2020/5/13)
- 高橋,久仁子「乳・乳製品をとりまくフードファディズム」誌名ミルクサイエンス = Milk science、日本酪農科学会 57巻3号 2009年1月p. 135-138
- 厚生労働省「食品の安全に関するリスクコミュニケーション」(2023/7 アクセス)
- NHK放送文化研究所「『発掘! あるある大事典II』でねつ造 関西テレビ,番組を打ち切り」(2023/7 アクセス)
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