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わたしとの対話~わたしの道しるべ

【第5回・最終回】
すべては今のわたしになるために必要だった

2022.4.25

文:もあぞう

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趣味のペーパークイリング

1本の大きな樹との出逢い

透析再導入を告げられ、わたし自身と落ち着いて向き合いたいとき、よくひとりで海へ行き泣いていた。
海はいつもそこにいて、わたしを穏やかな気持ちにしてくれた。すごく悩んでいたことさえも、ちっぽけだと思えるほど海の広さが、波の音が、心を楽にしてくれた。

その海を眺め泣いていると、いつもどこからともなく1匹の白い犬がやってきて、わたしが泣きやむまでそばにいてくれた。わたしはその白い犬にもなぐさめられ、励まされているように思えた。

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職場も離れ、家にいることが多かったわたしを、ある日友人がドライブに誘ってくれた。
その時に訪れた雄島で、わたしは1本の大きな樹と出逢った。
その樹は、土から水を、栄養分を吸い取ろうと太い根を張りめぐらせ、枝や葉も光合成をしようと上に伸び、太い幹で堂々とそこにいた。その姿は、樹は自分のために樹らしく生きているんだと言っているようで、強い生命力を感じた。

その樹を見て、「あっ、わたしもわたしで生きていていいんだ」
すべての疑問が解決した瞬間だった。わたしはわたしのために生きている。わたしはわたしのために生まれてきた。わたしはわたしのために生きていく。わたしはわたしでいいんだ。

樹があるから、海があるからわたしがいる。地球ができて海ができ山ができ植物が育ち、生き物が生まれ、人類が始まり、とてつもない時間をかけてやっと生まれたわたしがいる。なんてすごいのだろう。

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そう気付いたらすべてのことがわたしの心の中に素直に入ってきて、目に見えるすべてのものが愛しく思えた。すべてのものに感謝した。どんなものでもこの世に必要だから存在するんだと大切に思えた。

わたしはひとりではなく、たくさんの命あるものに支えられ生きているんだと、とてもありがたいことだと心から思った。今までマイナスでしか考えられなかったことが全てプラスへと向かった。「誰からも必要とされないなら自分が自分を必要とすればいい、わたしにはわたしにしかできないことがあるんだ」という考えに変わっていった。


東京での入院生活での出逢い

東京の病院に入院中は、わたしと同じ腎臓病の人も、他の病気を患っている人も、いろいろな人がそれぞれの生き方をしていて、自分の病気を受け入れながらも自分の生活を楽しんでいた。

病院で「わたしはわたし」という姿勢で、自分の考えをしっかり持ち自分のことは自分で決めることの大切さを知った。ここでは、わたしにとっては治療だけでなく、生き方を学ぶ場所でもあった。

病院で、ある患者さんと仲良くなった。母くらいの年齢で、一緒に外出したり、お散歩したり、家に招待してくれたりして、わたしを娘のように気遣ってくれた。わたしが先に退院する時、その人が別れ際に「落ち着いたら電話するね」と言い、エレベーターの扉が閉まった。でも、その後なかなか連絡がなく、どうしたのだろうと思っていたら共通の知人よりその人が亡くなったことを知った。今度なんてない、今は今しかない。今を大切にしようと思った。

また、わたしと同じ病室に、検査のために入院してきた患者さんがいた。乳がんの可能性があるという。
「もし、検査してガンだったら治療しない道を選ぶわ」って笑って話してくれた。
検査が終わり退院した後、後日再入院してきた。末期のガンだったという。しかし、その患者さんは生きる道を選んだ。
「全身の痛みが酷いけど、この痛みがあるのは生きている証拠。痛いけれども嬉しい」と言っていた。

家族の支えや、何か大切なことに気づく出来事があったのだろうか?治療しない道から生きる道を選んだ理由をわたしは知ることはできなかったが、わたしの中で生きることを考えさせられる出来事であった。
生きるって楽しいことばかりではなく、苦しいこと、悲しいことなどを含めて「生きる」なんだと思った。


今の気持ち、これから

現実は決して甘くなく、これから先もいろいろあると思うけどわたしは大丈夫だ。
今、自分という人生の途中。わたしらしくあるために試行錯誤しながら生きている。

納得のいかない状況で透析再導入になったが、その現実から逃げたくなかった。人間不信になったこともあったが、また人を信じてみたいと思った。すべてを失ってもその中から学び得るものがあるのだと、わたしはわたしから学んだ。

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病気のことで傷つく言葉を受けることもあった。でも、その言葉があったからこそ病気でもひとりの人間として生きていけると証明したい気持ちが強く働き、今までやってこられたのだと思う。その人達にも成長させてもらえたことを感謝している。

今は、自分の好きなこと、やりたいことをしながら、仕事や絵本を出したり、最近はペーパークイリングにハマったりして今を楽しんでいる。いろんなことがあったが、すべては今のわたしを作るための、生きている素晴らしさを知るための材料だと思っている。

学校や仕事、病院など、この病気になったからこその出逢いもたくさんあり、わたしは生きてこられた。たくさんの人に言葉をもらった。

「医療は日進月歩だ。今、治らない病気でも10年後には治っているかもしれない。生きることを諦めるな!」
「人事を尽くして天命を待つ」
「医者は神様ではない。医者は患者さんの生きる手助けをしているだけ。病気を治す力はあなたが持っている。自分の体は自分で守りなさい。」
「太く短くではなく、細く長く生きる」

その時わからなくても、心に残っている言葉がある。その言葉を思い出し理解できたいま、伝えたい。わたしに出逢ってくれたすべての人達に心からのありがとうの感謝の気持ちを込めて―。この当たり前の美しすぎる世界に、わたしは今ここに生きている。

いろんな事 たくさんあったけど
こう見えても 私
今まで歩んできた 自分の人生
けっこう 気にいってるんだ。

(文芸社『ぞうに咲くひまわり』より)

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もあぞう

もあぞう
小学3年生で透析導入し、中学1年で献腎移植を東京で受ける。移植後10年で透析再導入になり今年で25年。自分がされて嬉しかったことを患者さんにしてあげたいと看護師の資格を取得。
2002年詩集『ぞうに咲くひまわり』、2012年絵本『もあのきもち』、2014年詩集『ぞうの恩送り』書籍出版。看護師として働いたのち、現在会社員。余暇はペーパークイリング、自然を眺めたりしながら、創作活動に励んでいる。

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