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知っておきたい「治験」のこと
〜新しいくすりが生まれるために
【第3回】
治験のギモン、よくあるQ&A

2018.6.4

文:所長

99

監修:シミックヘルスケア株式会社

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第1回「治験とは〜新しいくすりが生まれるまで〜」では治験の概要を、第2回「治験に参加する場合の手順と治験のメリット・デメリット」では治験に参加する場合の具体的な流れについて学びました。
最終回は、治験に関する疑問や質問、不安などのアレコレをQ&A形式でまとめました。


Q1:治験は安全ですか?

A1:多くの人が不安を抱く「安全性」に対して、最も注意が払われています。

既存のものと同様に開発中のくすりに副作用が無いとは言い切れませんが、海外で既に広く使われているものが多く、日本においては健康な成人に行う第1相臨床試験や、くすりによっては比較的少人数の患者さんに行う第2相臨床試験までクリアしており、安全性については確認されています。

投与量や服用方法の決定については、まず健康な成人に「くすりのタマゴ」を段階的に服用してもらうことで、体に取り込まれる速度や体から排泄される速度を慎重に調べています。その後、確認された安全な用量で効果的な服用方法を推定し、患者さんのご協力のもと適切な用法・用量を決めていきます。

治験中は通常よりもこまめで綿密な診察・検査が行われるとともに、患者さんはいつでも担当医師や治験コーディネーターなどに相談できるようになっており、副作用が発生した場合でもすぐさま対処できる体制が整っています。また、治験を行う病院は「医療設備が十分に整っている」「緊急の場合には直ちに必要な治療・処置が行える」などの要件を満たした病院に限定されているので、万が一の場合でも安心と考えてよいでしょう。


Q2:治験に参加するのは難しいですか?

A2:難しくありません。第2回「治験に参加する場合の手順と治験のメリット・デメリット」の手順をご覧ください。

ただし、治験に参加するということは、患者もくすりの開発に加わるということになりますので、病気のことや「くすりのタマゴ」のことを正しく理解しなければなりません。そうすることでより良いデータを得ることができ、延いては将来多くの患者さんが服用する際の有用な情報になるのです。


Q3:治験では通常の診療とは違うことを行うのですか?

A3:通常の診療とそれほど大きな違いはありませんが、症状などを細かく確認します。

治験で服用するのは「くすりのタマゴ」なので、患者さんの症状などを細かく確認し、効果と副作用を慎重に調べなければなりません。そのため定期的な服用、検査、医師による問診が行われます。治験に参加した方のデータやわずかな変化は、将来多くの患者さんが服用する際の非常に貴重な情報になります。


Q4:治験を途中でやめることはできますか?

A4:参加する人の自由意思により、いつでもやめることができます。

いつでもご自身の考えで治験をやめて、普段の診療に戻ることができます。参加をやめたことにより不愉快な思いをしたり、その後の治療に不利益を受けることはありません。治験をやめたいと思ったら、治験担当医師や治験コーディネーター(CRC)などに申し出てください。
ただし、くすりによっては患者さんの症状をみながら慎重に服用をやめる必要がある場合があります。必ず医師の指示に従ってください。


Q5:治験に参加することで、自分の病気のことを他人に知られてしまうことはないですか?

A5:治験に参加する人のプライバシーや人権は厳重に守られることが、薬事法やGCPなどによって定められています。

医療機関および製薬会社には法律で守秘義務が課せられています。治験が正しく行われているか製薬会社や厚生労働省がカルテや検査データなどを確認することがありますが、氏名や住所などの個人情報は公開されません。いかなる場合もプライバシーは守られ、個人を特定されることはありません。


Q6:治療費などの支払いはどうなりますか?

A6:治験中の検査代など、製薬会社で負担するものもありますが、その他は通常と同様に支払いがあります。

初診料や再診料は、通常の診療と同じように自己負担です。また、通院のための交通費なども自己負担になります。これらの自己負担を軽減するために「負担軽減費」が支払われる場合が多く、同一医療機関での一般診療と比べて自己負担が少なくなります。
治験薬代や治験に関する検査費は、治験に参加する意思を示す同意文書にサインした時点から基本的に無料になります(製薬会社負担)。詳しくは治験担当医師や治験コーディネーター(CRC)などに尋ねてください。


Q7:治験終了後も、引き続きその治験薬を処方してもらえますか?

A7:終了後は治験薬をもらえない場合がほとんどです。

進行性の病気や生命に関わる病気などの治験の場合、倫理的配慮から治験の期間延長の意味合いで継続使用できる場合もまれにあります。
また、治験終了後も引き続きその病院に通院するか、以前通院していた病院に戻るかについても、治験担当医師に相談が必要です。


Q8:「プラセボ」とは何ですか?

A8:くすりの効果や副作用を正しく判断するために使用する「偽物のくすり」でのことです。

「くすりのタマゴ」の有効性や安全性を正しく評価するために「プラセボ」を使う場合があります。プラセボは見た目や味などは治験薬と全く同じながら、効果や副作用をもたらす化学的な成分は含まれていません。
昔から「病は気から」と言われるように、有効成分が含まれていないプラセボでもかなりの割合の人の病状が改善されることがわかっています。「新しい効果がある薬だ」という思い込みや「薬を飲んだから大丈夫だ」という安心感から、数値で表せない痛みや症状の軽減などからです。
「くすりのタマゴ」はプラセボと比較してはっきりと上回る効果が認められて、初めて「薬」として認められます。

現在のところ、「プラセボを使用した二重盲検法」がくすりの有効性と安全性を科学的に比較する方法として唯一世界的に認められている方法です。
※プラセボを用いた治験は、あくまで倫理的に問題がない場合にしか用いません。がん等、病気や薬の状況により、プラセボを用いないケースもあります。

プラセボを用いる治験 プラセボを用いない治験
  • 必要な基礎治療を行った上で、プラセボまたは治験薬を服用する場合
  • 軽度の病気で、治療が受けられなくても医学的に重大な結果を起さない場合
  • 進行性の病気の場合
  • 重症の病気の場合

シミックヘルスケア株式会社資料より引用


Q9:実際に行われている治験や、もっと詳しい情報を知りたい場合は?

A9:日本国内では主に以下3ヶ所で現在行われている治験の情報が公開されています。

また、それらの情報が1ヶ所で検索できるサイトもあります。

その他、それぞれの薬剤を開発している製薬会社のホームページや医療機関にて実施中の治験を紹介していることもあります。

「治験」についてもっと詳しく知りたい方は、日本製薬工業協会(製薬協)「治験について > 治験の疑問に答えます」に掲載されていますのでご参照ください。


「患者の幸せ」は自分たちで創る

この全3回の連載を通じて、以下の3つをご理解いただけたと思います。

  • 治験はすべての薬が患者の手に渡る過程において、必ず必要なこと
  • 治験は国が定めた厳しいルールのもとに行われること
  • 治験では「安全性」と「人権」を最優先に配慮されること

「自身の治療、そして医療について、まず学び、自分自身で考え選択し、行動する」ことは、何より大切なかけがえのない命を守るためにもとても重要なことです。
それが自分自身を大切にすることになるのはもとより、より良い医療を創り上げることに繋がります。
つまり、患者が医療に積極的に関わっていくことが、未来の医療をより良くするのです。
「治験」を正しく理解し、参加することもそのひとつと言えますね。

これからは、皆さんもぜひ「治験」を「自分ごと」として捉え、機会があれば参加を検討してみませんか。私は積極的に考えていきます。

「治験」への正しい理解が広く進み、より良いくすりが世に出て患者の幸せにつながることを心から願ってやみません。

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所長

所長
一般社団法人ペイシェントフッド代表理事。社会福祉士。透析歴31年。
14年間勤めた一般企業を退職後、福祉職を経て、2010年9月に株式会社を設立し、2018年4月からは一般社団法人ペイシェントフッドに法人格を変更。
長い年月にわたり「治療を受ける」という「受け身の立場」で医療と関わってきましたが、腎臓病を経て、透析を受ける当事者として、その経験・想いを「腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのために」役立てられないかと一念発起し、起業しました。
「じんラボ」はみなさんと一緒につくりあげていくコミュニティです。
「ひとり一人の「生きる力」が、医療を支える、希望ある社会」の実現に皆さんと共に歩んでまいります!どうぞよろしくお願いします!

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