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透析の友・本の紹介【3】
春口洋昭著・『透析ケア別冊 わかりやすいゼミナールシリーズ② 透析ナースのためのバスキュラーアクセス
春口ゼミ』

2014.7.8

文:よしいなをき

2425

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透析とともに生きる 春口洋昭著・メディカ出版(本体:2,400円+税)

今回紹介するのは、現在当サイトで「自分のシャントをよく知ろう!飯田橋春口クリニック・春口洋昭院長の解説とお悩み相談」を連載中の春口洋昭先生が書かれた、バスキュラーアクセス(シャント)に関する本です。

春口先生は日々さまざまなシャントの診察を行い、そのトラブルを治療する中で培った経験を透析スタッフに届けたいと本書を執筆されました。タイトルに「透析ナースのための…」とある通り透析医療に関わるスタッフ向けに書かれた本ですが、透析患者さんでも読みやすく、読み進めるうちに少しずつ知識や考え方が蓄積されるように工夫されています。

本書の特徴ですが、なんといっても読みやすく作られていることです。

シャントやシャントに伴う症例に関する図やイラスト、写真などが実に豊富です。また、「1日目」「2日目」…と章立ててあり、7日間で無理なく読み終えるような構成になっています。「1日目」から順に読み進めると理解しやすいと思います。

文章はベッドサイドティーチングの設定となっていて、登場人物である透析ナースと先生との会話形式で書かれています。患者さんと透析ナースの対話劇を見ているようで読みやすく、難しい説明でも取っ付きやすいと思います。

特にこれから透析医療に関わる方は是非読まれると良いですね。目には見えないシャントのことを触診や聴診からどのように情報を集め、自分が持つ情報と照合しながらどのように考えていくかという、シャントへの取り組み方の勘所が書かれています。既に経験を積んでいる方でも、知識の定着の為に読まれると良いかと思います。

各章では「シャント閉塞」や「シャント狭窄」「再循環」など、これらの症例にかかった患者さんと透析ナースの会話から始まる構成で、どのようにして症例が明らかになったかがリアルに書かれています。

例えば、本書に書かれていることを少し紹介すると…。

斉藤さん:

最近ちょっと食欲がなくて、体調があまり良くないんですよ。

あや子:

あら? 最近ちょっと寒いので風邪を引いたのかもしれないですね。

斉藤さん:

そうだといいのですが…。なんかちょっと違うような感じで、そうそう透析療法を開始する前の調子に似ていますね。

あや子:

そうですか?

ゆみ子:

どうかしたの?

あや子:

斉藤さん体調不良があるようで、一緒にみていただけますか?

ゆみ子:

たしかに元気がないですね。
(検温をして脈をとっている)
発熱はありませんね。ちょっと脈が遅いようだけど。先生に相談したほうがよさそうね。

H先生:

(斉藤さんの話を聞いて、全身を診察した後、シャントのスリルをとって、首をかしげている)


あや子さん、斉藤さんの最近の血液データを持ってきてもらえますか?
(血液データを見て)データが良すぎるな!
あや子さん、よう子主任を呼んできてもらえますか?

あや子:

わかりました。

H先生:

(よう子主任に)斉藤さんの透析後のデータが良すぎるようなんですけれど。

主 任:

(データをのぞきこんで)確かに透析後のBUN、Crの値がとても低くなっていますね。でも透析前のデータはむしろ悪化しています。再循環かもしれません。

「3日目 シャントの静脈圧と再循環 データが良すぎる!?」 より)

本書は透析ナースやスタッフの方のみならず、透析患者さんにもとても参考になると思います。少し解剖学的な難しい言葉も出てきますが、全体的に読みやすいので一通り読んでみることをお勧めします。 私は以前シャントトラブルが多く、「シャント狭窄」「シャント閉塞」「再循環」も経験しています。過去にシャントトラブルを体験している人でしたら、読み進んでいくうちに「あの時のトラブルの原因はこういうことだったのか」と思い当たることがきっとあるはずです。

また、病院やクリニックの主治医やスタッフが普段使っている「脱血不良」「閉塞」「狭窄」「静脈圧」などの言葉の意味が理解できるので、実際にシャントにトラブルが起こったときに、速やかに主治医やスタッフに相談できると思います。

この本を読むことで、患者さんも触診や聴診の勘所を身につけると良いでしょう。いち早くシャントのトラブルを発見するには、患者さん自身が普段から触診や聴診を行うことで「いつもとは違う感じがある」ということに気が付くことがやはり一番です。

透析患者にとってはとても身近なシャントですが、皮膚の下にあり見ることはできません。これをどうやって視るか、知るか、そしてトラブルを解決していくかが書かれた本です。是非ご一読ください。

【この本に書かれていること(目次より)】

  • カラーで見るアクセストラブル
  • 1日目 シャント狭窄・閉塞の病態 シャント閉塞は突然やってくる!
  • 2日目 シャント狭窄・閉塞の診断 スリルはいいのに?
  • 3日目 シャント静脈圧と再循環 データが良すぎる!?
  • 4日目 シャント瘤 この瘤、放っておいていいの?
  • 5日目 静脈高血圧症とスチール症候群 指が痛くなってきた!
  • 6日目 バスキュラーアクセスの感染症 感染はコワイ
  • 7日目 最終講義 いちばん大切なこと

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よしいなをき

よしいなをき
透析はしていますが普段はスポーツ自転車に乗って 体を鍛えています。
仕事は、平凡なサラリーマンですが、透析の時間を利用して、ブログを書いたり、小説を書いたりしています。

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