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石油不足は腎臓の治療にどう影響するのか ― 透析だけではない医療への波紋
2026.4.3
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もくじ
腎臓の治療は透析だけではない
石油不足と聞くと、ガソリンや電気の価格上昇を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、医療、とくに腎臓に関わる治療は、私たちが思っている以上にエネルギーや物流に支えられています。
近年、中東情勢の影響などを背景に、石油由来の原料であるナフサの供給不安が指摘され、透析医療への影響を懸念する声も出ています。ただし、その影響は透析に限られるものではありません。慢性腎臓病(CKD)の進行を抑えるための治療や、さらにその手前にある高血圧や糖尿病の管理にも、静かに及ぶ可能性があります。
そこで、石油不足が腎臓の医療にどのような形で関わっているのかを、段階ごとに整理してみます。
腎臓に対する医療は「連続した医療」
CKDは突然始まるものではなく、日々の積み重ねの中で進行していきます。多くの場合、その背景には高血圧や糖尿病があり、これらの管理が腎臓の状態に大きく影響します。
つまり腎臓の医療は、以下のような連続した流れの中で成り立っています。
- 高血圧・糖尿病の管理
- 腎臓の機能低下(CKD)のフォロー
- 透析や移植などの腎代替療法
石油不足の影響を考える場合も、この「連続性」を前提に捉える必要があります。
透析はなぜ石油に依存しているのか
透析は、特にエネルギーや物流への依存度が高い医療です。
- 透析液の製造と輸送
- 大量の水を使う水処理設備
- 機器を動かす電力
- 通院(送迎や交通)
これらはいずれも、石油や電力と密接に関係しています。そのため、エネルギー供給が不安定になると、透析医療は比較的早い段階で影響を受けやすい領域といえます。
透析にとどまらない影響
薬の供給への影響(高血圧・糖尿病を含む)
腎臓の治療や、その原因となる高血圧や糖尿病の管理には、多くの薬が使われています。
- 降圧薬
- 利尿薬
- 腎性貧血の薬(ESAなど)
- 免疫抑制剤(移植後)
- 糖尿病治療薬(インスリンや経口薬)
- 脂質異常症の薬
これらの薬は、原料の製造や加工、輸送の過程で石油化学や物流に依存しています。
そのため、供給の遅れや価格の上昇といった影響が出る可能性があります。
医療資材(医療材料・消耗品)への影響
医療現場で日常的に使われる多くの資材も、石油由来です。
- 注射器やチューブ
- カテーテル
- 検査用の容器やキット
- 滅菌資材
CKDの管理は、定期的な検査とモニタリングに支えられています。これらの資材の供給が不安定になると、診療の継続にも影響が出る可能性があります。

検査・診断への影響
腎臓の状態を把握するためには、定期的な検査が欠かせません。特に重要なのは以下の2つの検査です。
- 尿検査(尿蛋白)
- 血液検査(eGFR等)
さらに、その手前の段階では以下の基本的な検査も重要です。
- HbA1c(血糖の指標)
- 脂質検査
- 血圧測定
検査に使われる試薬や機器の維持、物流が影響を受けると、検査の頻度や精度に変化が出る可能性があり、結果として、腎臓の変化に気づくタイミングが遅れることも考えられます。
通院と在宅医療への影響
石油不足は、移動にも直接影響します。
- 通院のための交通手段
- 訪問看護や在宅医療の医療者の移動
- 在宅腹膜透析(PD)の物資配送
これらが制約を受けると、定期的な診察やフォローアップが難しくなるかもしれません。
特に、すぐに症状が現れにくいCKD、高血圧や糖尿病においては、受診間隔が空いてしまうと、変化が見過ごされる恐れがあります。
見えにくい影響:生活と予防の変化
生活環境の変化が腎臓に与える影響
エネルギー価格の上昇は、食品価格や流通にも影響します。
- 食品価格の上昇
- より安価な加工食品への依存
- 食事内容の変化
これにより、以下のような変化が起こる可能性があります。
- 塩分管理が難しくなる
- 血糖コントロールが乱れる
予防医療の弱体化が招くこと
医療資源が限られてくると、重症度の高い患者が優先されやすくなります。
その結果、以下のような変化が起こることがあります。
- 健診の機会が減る
- 軽症の方のフォローが後回しになる
腎臓病は早期発見・早期治療が重要な疾患です。その発見のきっかけが減ることで、将来的に重症化する人が増えることも考えられます。
最後に:石油不足は「医療の連続性」に影響する
腎臓の治療は、透析だけで成り立っているわけではありません。その手前には、高血圧や糖尿病の管理といった長期的な医療があります。石油不足は、こうした医療のすべての段階に影響を及ぼす可能性があります。
それは、医療そのものが止まるというよりも、診療の継続性やアクセス、変化に気づくタイミングに影響する問題といえるでしょう。
腎臓の健康を守るためには、個々の治療だけでなく、それを支える社会のしくみやインフラにも目を向けることが重要です。

私たちの医療は、エネルギーや物流といった社会インフラに支えられています。医療を支える社会のしくみについて、以下の記事もぜひご覧ください。
参考
- ロイター『ナフサ不足で医療機器が出荷困難の可能性、透析・手術用の品目 4━8月にかけて=関係者』(2026/4 アクセス)
- Logistics Today『透析34万人の命綱、樹脂が届かない』(2026/4 アクセス)
- 保団連(全国保険医団体連合会)による2026年3月25日のXへのポスト(2026/4 アクセス)
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