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【第12話】糖尿病以外の理由で目と腎臓が悪くなった人の話③~兆候はあったのに、“突然”透析導入に?~
2025.12.1
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この連載では、一つの病気がきっかけで別の病気を引き起こす「病気の連鎖」について、実例を交えながら考えてきました。最後となる3回目は、やはり糖尿病ではない理由で目と腎臓を壊している私自身について話します。

透析に至った、いくつかの理由
私が透析に至ったはっきりした原因は、実はよくわかっていません。しかし、いくつかの要因が重なったのではないかと考えています。
緑内障の治療薬の影響
もともと患っていた目の病気である緑内障の治療薬に、腎臓に負担をかける利尿剤が含まれていました。
この薬には電解質バランスが崩れる副作用があり、添付文書にも「急性腎不全の患者には投与できない」と書かれています。重度の腎障害でなくても、腎臓の機能が低下している患者さんへの投与には慎重な判断が必要とされているものです。
服用前、眼科医に腎臓病はないか聞かれましたが、当時は腎炎をはっきり指摘されてはいなかったため、「ないです」と答えてしまいました。
服用期間は数ヵ月と短かったのですが、おそらく既に発症していた慢性腎炎に追い打ちをかけた形になったのかなと思います(私が記憶していないだけで、子供の頃にも飲んでいた可能性もありますが)。
実際に、服用中に副作用の一つである低カリウム血症の症状が出て、体調を崩すことがありました。ちなみに私の場合、だるさや四肢のしびれなど、一般的に高カリウム血症に見られる症状でした。
難病・先天無虹彩症の合併症
私の緑内障を引き起こしている難病が、先天無虹彩です(私が透析を導入した2017年に難病指定されました)。この病気の合併症には、腎臓がんや腎泌尿器異常が出てくることがあるとされており、知らないうちに合併症として腎炎を発症していた可能性もあります。
兆候と、うやむやになった検査・通院
振り返れば、小学生の頃から学校の検尿で蛋白尿陽性となり、小児科で再検査を受けていました。病院で尿検査と血液検査をしても蛋白尿以外に大きな異常は見つからず、それでも毎年のように蛋白尿が続くため、一時は大学病院の腎臓内科も紹介されました。しかしそこでも原因はわからず、医師の態度も「どこも悪くないのに何しに来たの?」といった冷たいものに感じられ、通院のモチベーションは全くあがらず、色々なことがうやむやになっていきました。
やがて10代後半から20代くらいにかけて、徐々に頻尿気味になり、尿の色が濃くなったり、ビールのように泡立つようにもなっていきました。今考えると、典型的な慢性腎炎の保存期の症状ですよね。
突然の透析導入
利尿剤を服用した20代前半頃から、体のだるさ、疲れやすさ、息切れ、食欲不振など、なんとなく元気がない日が増えていきました。当時は「薬の副作用だろう」とそれほど気にはしていませんでした。内科での血液検査や尿検査で腎機能を中心に全身状態をチェックしてもらってはいましたが、蛋白尿と低カリウム血症以外、特に目立った異常もありませんでした。
2017年6月、高熱や風邪のような症状をきっかけに一気に体調が悪化し、そのまま透析を導入することとなりました。26歳のことでした。医師からは「年齢が若く体力と予備力があるためにクレアチニンも尿素窒素もギリギリまで上がらなかったのではないか」と言われ、突然の透析導入に私はびっくり仰天してしまいました。
当時は、腎機能がかなり低下しないとクレアチニンなどの数値は上がらない、ということも知りませんでした。
経験から学んだこと

緑内障も腎臓病も、治療が長期にわたる慢性疾患です。どのような病気も早期発見・早期治療が大切ですが、慢性疾患の治療は病気を治すことがゴールではないため、通院も「予約が入っているから行く」という漫然としたものになってしまうことがあります。
しかし、ただぼんやりと病院に行っているだけでは、自分の健康を守ることはできないのです。患者さん自身も、自分の病気や薬について勉強したり、生活の中でできることをしたりと、治療に参加する必要があるのだと思います。
ミーナも遅まきながら、透析になってそのことがやっとわかってきました。
今回は糖尿病以外の理由で目と腎臓が悪くなった人の話を書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。
慢性疾患を抱えていると、健康な人とは異なる生活習慣、薬や治療の副作用、もともとある病気の合併症などで、別の病気にかかるリスクは大きいです。
新たな病気の発生を防ぐためにも、自分の病気について学び、ライフスタイルを見直すなど、患者さん側でできることを行って、治療に参加していくことが重要と言えるでしょう。
補足:先天無虹彩症について
これまで、私は自分の眼の病気を「先天性緑内障」と説明してきましたが、正確には「先天無虹彩症」に合併した「続発先天緑内障」です。
先天無虹彩症は非常にまれな眼の先天異常で、生まれつき虹彩(茶目)が一部またはすべて欠損しています。虹彩は瞳孔の大きさを変えて眼に入る光の量を調節する部位ですが、私の目は虹彩がないため、ずっと瞳孔が開きっぱなしのような状態で、常に強いまぶしさを感じています。代表的な合併症は緑内障、白内障、角膜混濁(黒目が白っぽく濁る状態)などがあります。緑内障や白内障の方が直接視力に影響し、認知度も高いので、今まではいつも「緑内障」と説明していました。ですが、難病指定もされたことですし、これからはこの病気をもっと多くの人に知ってもらいたいので、「無虹彩による緑内障・腎炎」と自己紹介で言ってもいいのではないかと思っています。
幸いなことに、眼の病気は、腎臓病と違いぱっと見でわかるものです。私の両目は生まれつき虹彩(茶目)がないため、「この人病気かな?」とわかってもらいやすいです。
左目は、茶目がない分黒目が異様に大きく見え、緑内障による高い眼圧と、角膜混濁によって青白い瞳をしています。右目の方は、角膜混濁がかなり進んで真っ白に変色した黒目に、不正な血管が入り込んだせいで瞳がピンク色になっています。子供の頃はコンプレックスでしかなかった見た目ですが、今は病気をわかりやすく説明するための道具にできそうだなと思っています。それにブルーとピンクの瞳を持っている人間なんて、地球上を探してもそうそういるもんじゃあないですからね(笑)。
先天無虹彩症についての詳しい情報は以下をご覧ください。
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