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透析から移植へ 〜戦いは終わらない〜

【第4話】腎臓移植に向かって ~大腸がんとの闘い①~

2021.3.22

文:OZMA(オズマ)

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臓器移植との出会い

北海道大学前で薬局を経営していた頃、肝臓移植や腎臓移植、骨髄移植の患者さんたちと接していた。ある時、肝臓移植の患者さんと話をしていると、「元気になったのでタクシーの運転手を始めた」と教えてくれた。重症の肝硬変で、先生から「肝臓移植をしないと、あと3か月の命だ」と告げられ、弟さんから肝臓の提供を受けて肝臓移植ができたそうだ。
当時、北海道大学の外科では、アメリカ・ピッツバーグ大学から肝臓移植の権威である藤堂教授(当時)が赴任し、肝臓移植を行っていた。この患者さんは仕事を始めてからも藤堂先生にタクシーを使ってもらい、感謝しているとのことであった。先生はいつまでもその人を応援しているのだ。

肝臓移植の患者会は“ベンツの会”と称して活動している。開腹部分のY字の傷がベンツの「スリーポインテッド・スター」に似ていることがその名前の由来だという。術後も患者会と医師や移植コーディネーターは交流がある。手術して終わりではなく、一生関わっていくのである。医師は患者の人生を左右する治療を行って、その予後も担っているのだと、非常に感銘を受けた記憶がある。

この患者さんとは、家族ぐるみでお付き合いさせていただきながらずっとお世話になっている。残念ながら現在はコロナ禍で皆さんと顔を合わせていないが、臓器移植は人生を劇的に変えることもできると思う。

後に薬剤師会で藤堂先生にお会いした際、移植医療の講演をお願いした。臓器移植ネットワークのこと、アメリカでは臓器移植は通常の医療になっていることなど多くの事をお話しいただいた。日本は“臓器移植の後進国”であると力説し、「臓器移植ネットワークが広がるなら、何でも積極的に行っている」とのことであった。この時は微力ながら、薬剤師会会員薬局に臓器提供カードを配布し、啓蒙に協力させていただいた。

現在の献腎移植は、臓器移植ネットワークに登録してもするまで15年近く待つという。ネットワークは忖度なしに順番を決めるシステムだが、それにしても長すぎる。幸いにして私は妻がドナーとなって生体腎移植をしてもらうことになったが、そうならない人たちも大勢いることは理解している。海外では臓器移植の法律を改正して提供率を上げた事例ある。日本もいろいろな意味で、移植医療が早く普通の医療になってほしいと願っている。


妻との話し合い

薬剤師という仕事の性質上、結婚当初から臓器移植のドナーの件に関して妻とかなり議論してきた。夫婦ともに臓器移植カードには提供の意思は示してあった。
薬局で患者さんと交流があること、前述の臓器移植患者さんとの出会いなどがあり、臓器移植に対する拒否反応は二人ともなかった。ある患者さんは、妻から腎臓をもらうなんて考えられないと言っていたが、多くの移植後の患者さんの生活は明らかに良い方向に向かっている。

第1回話でも触れたが、私は救急車で運ばれ、突然透析導入になった。妻は担当医師に「本人はを考えていると思いますので、それを妨げない治療をしてください」と言ったそうだ。担当医は面食らったのではないだろうか? 何故なら一般の病院ではなかなか臓器移植の話はしないからである。

しかし妻が生体腎移植のドナーになると話は少し違う。妻には妻の考えがあり、それは尊重しなければならない。結婚はしているものの別人格である。また、傷は小さいとは言え健康な体に傷を付けるのである。妻は了承しても、妻のご両親はどうだろうか? 賛成していただかなければ事は進まないのである。

妻は、「仕事さえ問題なければ腎臓の一つは提供するよ」と言ってくれた。妻のご両親は、夫婦二人でよく話し合ったなら構わないとと快諾いただいた。
外堀は埋まったが、は一筋縄ではいかなかった。これからが大変だった。


手洗いとマスク

をするためには、ドナーは健康でなければならない。腎臓を提供しても日常生活に支障がないことが原則だ。またレシピエントも、腎臓移植後の生活に適合するかさまざまな検査が必要である。腎臓移植後は、一生免疫抑制剤を服用して拒絶反応を抑えて生活していかなければならない。肝臓移植など一部では、免疫抑制剤を止めても問題ない方もいるがそれは稀なことと考えたほうが良い。

また現在コロナ禍で、マスク、手洗いなど感染症対策の重要性が叫ばれているが、移植患者はこれが一生続く。薬局には毎年何人かインフルエンザの患者さんが来局される。それでも私が感染しないのはマスクと手洗いのお陰だと思っている。薬局では一行動一手洗いを心掛けるため、勤務時間中に15~20回は手洗いをする。この習慣は4年目に突入している。


移植前検査

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ドナーである妻は提供を決めたら猪突猛進。検査も短期間で終了させた。
もともと健康でどこも悪いところはなかった上、積極的に病院に行ったため検査はあっという間に終了した。移植医から「こんなきれいな検査値は最近見たことがない」と言われ、喜んでいた。また腎機能の指標である推算糸球体濾過値(eGFR)はなんと100mL/min/1.73m2を超えていた。健康は大切である。

私の検査は順調に進み、最後に胃カメラ、大腸カメラ(大腸内視鏡検査、以下CF)を行うことになった。移植する大学病院は予約が3か月先になるため、胃カメラとCFは近くの胃腸科で検査することになった。

外来を予約し、いよいよ受診。仕事も勘案して胃カメラ、CFの日程を調整するものと思っていた。しかし受診時、「今日は食事していませんか?」「ええ、していません」「じゃあすぐ胃カメラやりましょう」という流れで、外来だけだと思っていたのが、すぐ胃カメラを行うことになった。
先生は外来をしているのにどうするのだろう? 違う先生が行うのかな? と思いながら、着替えやのどの麻酔などの準備をしてベッドに横たわり待っていると、外来の担当医が来た。外来と検査を同時に行うとは、なんと効率の良い病院なのだろう。

そうこうしているうちにカメラが目の前に来て飲み込んだ。検査は5分くらいだろうか? 結果は「薬の影響で少し赤くなっていますが、問題ありませんよ」と主治医。よし次のステップだ。

CFは予約しなければならない。ご存じの方も多いと思うが、CFは前処置が必要である。腸の中を空っぽにするために、一日前から繊維成分を抑えた低残渣食にして、下剤を飲む。当日も2Lの下剤を服用し、便が透明感のある液体にならないと検査が出来ない。

準備万端で病院に向かいCFをおこなった。結果はポリープ3個。「ポリープはとれば大丈夫ですよね」と聞くと、主治医は「一つが大きいし顔つきが悪いので、取った後に組織検査に出しますよ」とのこと。この時まではこの先も順調にいくと思っていた。

後日ポリープを切除するのに2泊3日の入院をした。今にして思えば、大きなポリープの一つはかなり深くまで取らなければならなかったのだろう。万が一を考えての2泊だったのだと理解している。身体にはダメージはなく、これで移植を行えるのだと確信していた。

一週間後、組織検査の結果を聞くために先生と対峙した。その時「一番大きいポリープの顔つきが気になっていたけれど、やはりがん化していた」と。
「がん??? そんな馬鹿な!」しかし動揺している余裕はない。これからの事を考えないと。すぐに思い直した。主治医に「がんのステージは?」「これからの方針は?」と矢継ぎ早に質問する。
「ステージ1ですが、万が一リンパ節に転移していた場合は3です」「をするなら上行結腸を切除する必要があります」とのことだった。

ポリープを切除したがステージ1なため、腸の切除が必須であるとの宣告。またリンパに転移していたらステージは上がるとのこと。消化科病院から帰る途中、歩きながら移植コーディネーター電話した。

「上行結腸にがんが見つかったので、すぐにはできなくなりました。がんを切除して、また連絡します。しばらく移植は無理かも知れません」と。コーディネーターはこちらの一方的な言い方にも関わらず「OZMAさん、大丈夫ですか?」と聞いてくれた。
この時は考えなかったが、身体面、精神面のどちらを大丈夫なのとか問われていたのだろうか。少なくとも精神的には問題なかった。これから腎臓移植をすると強い思いがあったからだ。ただ前に進むだけであった。

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OZMA(オズマ)

OZMA(オズマ)
1961年2月生まれ。
59歳。埼玉県所沢市出身、札幌市在住。
糖尿病性腎症で54歳に透析導入。2年2ヵ月後、妻から腎臓移植。
仕事は、外資系製薬会社に13年勤務、営業、管理薬剤師、開発、広報などを経て1998年より薬剤師として勤務。2001年に独立して薬局経営。現在、新しい薬局の開設準備中。

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