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透析から移植へ 〜戦いは終わらない〜

【第13話・最終回】腎臓移植後から始まる新たな戦い②

2022.9.26

文:OZMA(オズマ)

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術後1年の制約

家では柴犬を飼っていたが、腎臓移植手術から1年以内は触れることができなかった。医師から動物との触れ合いは禁止されていたのである。
犬や猫の唾液にはパスツレラ菌という細菌がおり、ペットから人に感染する代表的な感染症「パスツレラ症」を引き起こす恐れがあるためだ。パスツレラ菌は通常、体内に入っても免疫細胞が働くため問題ないが、免疫機能が低下している人は敗血症などを起こし、最悪の場合死亡する可能性がある。私は免疫反応を抑える免疫抑制剤を服用しているため、敗血症になるリスクを考えなければならなかった。

また刺身などの生ものや焼き鳥のレバー、ステーキの焼き加減などにも注意している。健康な人には何でもないことが、免疫抑制剤を服用しているために重大な感染症をもたらすこともあるのだ。
術後1年間は刺身を食べないよう医師から指導を受けたが、6年が経った今でも細心の注意を払い、ほとんど食べない。菌やウイルスは目に見えないが日常生活のあちこちに潜んでいるのである。

術後1年頃、腎臓の機能や拒絶反応を検査するため「移植腎生検」を受けた。
検査は1泊入院で行う。私は金曜日の10時に入院し、14時ころ腎臓から組織を採取した。翌日は服用している免疫抑制剤の血中濃度を測定した。現在服用してる薬がこの用量で良いかなど、今後、外来受診時の血液検査における薬物濃度の判断材料にするのだ。

免疫抑制剤の量は年々減らすことができる。中にはタクロリムスのように腎臓の機能を悪化させるリスクを含む薬もあるため、できる限り量を減らしていくのが良いだろう。私は1年目に3mgから2.5mgまで減らすことができた。たったこれだけでヘルペスの出現は激減した。
このように、術後1年間は生もの(刺身)を食べられないとかペットに触れることができないなど、いろいろな制限がかかってくるのである。


私の使命は移植腎を良い状態で保つこと

術後3年ほどが経過するとだいぶ体調は安定してくる。
しかし2020年11月の受診で、クレアチニンが0.97mg/dLから1.2mg/dLまでいきなり跳ね上がった。主治医は腎生検を再び行うか、腎毒性があるタクロリムスを減らすかの判断で後者を選び、タクロリムスを2.5mgから2mgへと減量した。

このときの検査で、タクロリムスの血中濃度は高い値を示していたため、減量に踏み切ったのである。代わりにセルセプトは血中濃度が低かったため一日500mg増量することになった。

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この処置から1カ月後の検査では、クレアチニンは1.08mg/dLとほぼ正常値まで戻った。
数値の羅列になってしまったが、薬の微妙な調整を行わないとドナーから頂いた腎臓にダメージを与えてしまう。「薬さえ飲んでおけば大丈夫」とはいかないのだ。主治医はこれからもこの方針で行くと力強く言っていた。しかしこの先は何があるか分からない、それは百も承知である。

私の使命は移植腎を良い状態で保つことである。それがドナーへの感謝の気持ちでもあり、また自分の命をつなぐためでもある。

他人から見ると窮屈な生活だと思われるかもしれない。しかし、この状況を楽しんでこれからも生活していくつもりである。いろいろな先生との出会いがあり、皆に支えられて現在がある。


戦いは終わらない

腎臓を移植したからそれで完治、というわけではない。
そこからの薬や病気のコントロールこそ戦いで、これをおろそかにするとあっという間に腎臓が元のような状態に陥ってしまう。これではドナーに申し訳がない。腎臓移植後は、それまでとは違う新たな戦いの始まりなのだ。

最近はゴルフを1ラウンド歩いて回れるようになった。アップダウンのあるところを4〜5時間で計2万歩ほど歩くのである。皆さんからは「病気には見えないよね」と言われるが、気持ちは常に病気と戦っている。妻から頂いた腎臓をどれだけ良い状態に保つか。それのみを考えて生活しており、これは一生続く。

これからも新たな戦いをしなければならないかもしれない。透析が必要になったときの気持ち、腎臓移植が成功した時の気持ちを忘れずに精進していくのが、これからの私の人生である。
まだ戦いは終わらないのだ。

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OZMA(オズマ)

OZMA(オズマ)
1961年2月生まれ。
59歳。埼玉県所沢市出身、札幌市在住。
糖尿病性腎症で54歳に透析導入。2年2ヵ月後、妻から腎臓移植。
仕事は、外資系製薬会社に13年勤務、営業、管理薬剤師、開発、広報などを経て1998年より薬剤師として勤務。2001年に独立して薬局経営。現在、新しい薬局の開設準備中。

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