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糖尿病性腎症は超ハイリスク! 足を守ろう!
〜足の血管再生治療【前編】

2019.5.27

文:所長

99

監修:シミックヘルスケア株式会社

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じんラボは、末梢動脈疾患(PAD)を含む足病変フットケアなど、透析患者さんと足の健康についての記事をこれまで数々ご紹介してきました。
今回は、末梢動脈疾患(PAD)の中でも特に重度で、安静時の痛みや潰瘍・壊疽を起こしている状態の「重症下肢虚血」に着目して、その症状や治療法について前後編に分けてご紹介します。

ここでは末梢動脈疾患(PAD)と閉塞性動脈硬化症(ASO)を同義とします。


末梢動脈疾患(PAD)とは

主に手足の動脈を「末梢動脈」と言います。動脈硬化になると、この末梢動脈が詰まったり狭くなったりすることにより、手足に血行不良が起こり末梢動脈疾患(PAD)と呼ばれる病気になります。しびれや痛み、悪化すると潰瘍や組織欠損となり、放置すると足の切断にまで発展する恐れがあります。
また、末梢の動脈硬化は全身的に進行しますので、狭心症や心筋梗塞、脳卒中などを発症する危険性が高まります。末梢動脈疾患(PAD)を重症化させないためには、早期発見・早期治療が重要です。


末梢動脈疾患(PAD)の主な原因

糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満といったいわゆる生活習慣病が動脈硬化の危険因子となり、末梢動脈疾患(PAD)にかかりやすくなります。また喫煙やストレスも重要な危険因子です。そして、高齢になるほど(特に65歳以上)罹患率は上昇します。
透析患者は異所性石灰化や動脈硬化になりやすいことから、さらに注意が必要です。


末梢動脈疾患(PAD)の主な症状と分類

Ⅰ度:冷感・しびれ感

  • 手足が冷たい
  • 手足がしびれる
  • 手足の指が青白い
I度:冷感・しびれ感

Ⅱ度:かんけつせいこう

  • 一定の距離を歩くと、主にふくらはぎなどが締めつけられるように痛くなり、休まなければならない(数分で回復)
  • 階段をのぼるのは特につらい
II度:間歇性跛行

Ⅲ度:安静時疼痛

  • じっとしていても手足が痛み、夜もよく眠れない
  • 刺すような痛みが常に持続している
III度:安静時疼痛

Ⅳ度:潰瘍・壊死

  • 手足に治りにくい潰瘍ができる
  • 壊死部は黒くなる

科研製薬株式会社「閉塞性動脈硬化症 情報サイト - 閉塞性動脈硬化症ってどんな病気?」より引用して改変


重症下肢虚血(CLI)とは

血管の閉塞により下肢の筋肉に血液が適切に供給されず、下肢の血行が悪くなることで、安静時に痛みがでることがあります。さらに重度になると、足の傷が治りにくい、ただれている、腐って黒く変色している(潰瘍、壊疽、組織欠損)状態になることもあります。これらの重篤な状態を重症下肢虚血(CLI)といいます。適切な治療を施さず、病気が進行するとやがて足の切断が必要となることがあります。

重症下肢虚血(CLI)


病院での検査

診察室ではまず、以下の診察を行います。

問診 いつから、どんな症状があったのか、合併疾患、既往症等について確認します
視診 皮膚の色調 肢、足趾のやせ、爪の発育不良、潰瘍・壊疽の有無等を調べます
触診 実際に足に触れて、動脈硬化の有無、動脈拍動、皮膚温等を調べます
聴診 下肢、頸動脈の血管雑音、心音を調べます

続いて検査を行います。


血流の検査

足首の血圧と腕の血圧の比(足関節上肢血圧比(ABI:Ankle Brachial Pressure Index))を測定します。通常、仰向けに寝た状態で血圧を測定すると足首の方がやや高い値になりますが、動脈に狭窄部や閉塞部があるとその部分の血圧は低下するため、下肢と上腕の血圧の比を測定することで狭窄や閉塞の程度を表すことができます。

ABI(=足首の最高血圧÷上腕の最高血圧)が1.0〜1.3の間であれば正常、0.9以下の場合は足に動脈硬化が起きている可能性があります。

通常はABIの測定を行いますが、罹患期間の長い糖尿病や透析患者の場合、石灰化の影響でABIが基準値の範囲内となって病変を見逃す可能性があります。そのため、石灰化を免れることが多い足趾(そくし)と腕の血圧の比(足趾上肢血圧比(TBI))を測定することがあります。

さらに血流不全が重症化していると考えられる場合は、レーザーによって血管内の血球の速度と血流量を測定する皮膚灌流圧(SPP)という方法を用いて測定します。


画像検査

末梢動脈疾患(PAD)が認められる場合は他の部分にも動脈硬化が進行している可能性が高いため、心臓の病気や脳血管障害の有無を調べることも大切です。全身の血管や血流の状態を検査(超音波検査、コンピューター断層血管撮影(CTA)、磁気共鳴血管画像(MRA)、動脈造影検査等)することによって、どこが狭窄・閉塞しているのかを知り、治療方針を決定していきます。


早期発見・早期治療のために、定期的な検査を受けましょう

潰瘍や壊疽を起こす重症下肢虚血(CLI)にならないように日々の観察や早めの受診は言うまでもありませんが、糖尿病患者や腎不全患者は医療施設で定期的に検査を受けることが大切です。 ちなみに、現在私が通院している透析施設では、定期的な足の観察によるチェックとCAVI(動脈の硬さを反映する指標)という検査で、動脈硬化、足の血管の詰まりを測定しています。検査毎にそれまでの経過が分かるグラフで表された検査結果が渡されます。 私は今のところ足に大きな問題はありませんが、これからもしっかり自己観察し、検査を受け続けようと思います。

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所長

所長
一般社団法人ペイシェントフッド代表理事。社会福祉士。透析歴31年。
14年間勤めた一般企業を退職後、福祉職を経て、2010年9月に株式会社を設立し、2018年4月からは一般社団法人ペイシェントフッドに法人格を変更。
長い年月にわたり「治療を受ける」という「受け身の立場」で医療と関わってきましたが、腎臓病を経て、透析を受ける当事者として、その経験・想いを「腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのために」役立てられないかと一念発起し、起業しました。
「じんラボ」はみなさんと一緒につくりあげていくコミュニティです。
「ひとり一人の「生きる力」が、医療を支える、希望ある社会」の実現に皆さんと共に歩んでまいります!どうぞよろしくお願いします!

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