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食生活研究室

腎臓病・透析をしている方にも知っていただきたい、視覚障害と食について
【第7回】視覚障害者が陥りやすい偏った食生活と「録音雑誌」を活用した食事の準備

2023.4.24

文:ミーナ

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チキンライスを調理中

視覚障害のある方の食にまつわる本連載は主に視覚障害者の方の話が中心ですが、腎臓に関する話も時折織り込まれています。

透析をしている方は腎性網膜症や糖尿病性網膜症などによって視力が低下する人が少なくありません。この連載では視覚障害のある人がどのような食問題に陥りやすいのか、またどのように対応していくのかについてもお伝えするほか、病気と向き合って生きていく心構えなどもたくさんお話しいただいていますので、視覚障害の有無に関わらず自分に置き換えて読んでいただけると嬉しいです。

第7回はミーナさんの知り合いの話やご本人の話を基にした、視覚障害者が陥りやすい偏った食生活と、視覚障害がある方むけ情報サービスや「録音雑誌」を活用したエピソードです。なお、本連載に登場する人物の名前はすべて仮名、背景情報も個人が特定されないように配慮しています。

(じんラボスタッフ)

チキンライスにケチャップ1本!?
陽子さん・正一さん夫婦の塩分過多な食生活

陽子さんと正一さん(いずれも仮名)はともに弱視の50代夫婦です。盲学校の同級生で、2人の子供にも恵まれました。

日中、正一さんは会社、子供は学校へ行くので、家事は陽子さんが1人で行うことが多いのですが、料理の味付けがいつも濃いめなのです。例えば子供たちの大好きなチキンライスを家族4人分作るのに、なんとケチャップ1本を使ってしまいます。
4人分のチキンライスにケチャップ1本なんてどう考えても多すぎですが、どうしてそんなにたくさん使ってしまうのでしょう…。

弱視の陽子さんは、いわゆる調味料の“目分量”というものを把握するのが難しく、味がちゃんとついているかどうか心配になり、ついつい多めに調味料を入れる癖がついてしまったのだそう。ポテトサラダにもマヨネーズ1本使うと言っていました。


視覚障害がある方は知らず知らずのうちに塩分を摂りすぎてしまう

目が悪いと調味料のかかり具合がわからずについかけ過ぎてしまう話(「透析と視覚障害【第6回】目に頼らない透析の自己管理について その2」)や、刺激を求めてついつい調味料をドバドバかけてしまう話(「腎臓病・透析をしている方にも知っていただきたい、視覚障害と食について【第3回】視覚障害者の塩分過多と野菜の摂り方について」)は以前お伝えしましたが、日頃から調味料をたくさんかける癖がついてしまうと、濃い味でないと満足できなくなってしまう人もいます。

陽子さん一家はまさにそんな状態に陥ってしまい、毎日塩分過多な食生活を続けていたせいで夫婦ともども高血圧になり、子供たちはスナック菓子などのしょっぱいお菓子が大好きになりました。
子供たちには今現在は視力などへの影響はないようですが、このままこのような塩分過多な食生活を続けていれば、若くして生活習慣病予備軍になってしまうかもしれません。このご夫婦は自分たちの健康のためにも、子供たちの未来のためにも、濃い味付けの食事を控える習慣と、調理をするときに調味料をかけ過ぎないような工夫が必要ですね。

知らず知らずのうちに濃い味付けになってしまう理由の一つに、味見のし過ぎも考えられます。私も経験がありますが、味見を何度も繰り返すと、舌がその味に慣れて味が薄いと感じるため、追加する調味料の量が増えてしまうのです。

また、料理の温度によっても味の感じ方は違いますよね。塩味はあつあつの状態よりも少し冷めた状態の方がよりはっきり感じられます。あつあつの物をいくら味見したところで、食卓に出されるときは少し温度が下がっているわけですから、ちょっと薄いかなと思うくらいがちょうどよかったりするものです。

視力が低下してきたら、一般的な減塩調味料を使ったり(ただし減塩調味料の多くは塩化カリウムで塩味を代用しているため、カリウム制限が必要な方は注意が必要です)、鰹節や昆布など旨味成分を活用して減塩するなどの対策のほか、調味料の量を把握できるよう視覚障害者向けの調味料入れを使ったり、お弁当についているような小袋のソースや醤油などを使うようにするといいでしょう。
皆さんも目が悪くなってくると、知らず知らずのうちに味付けが濃くなってしまうことがあるので気を付けてください。


火も包丁も使わずにチキンライスを作ってみた~雑誌「ホームライフ」のお料理コーナーより~

チキンライスのイメージ

続いては、私が1人で留守番をした日に準備した昼食のエピソードです。

前日の夜に、いつも「サピエ図書館」から定期配信してもらっている視覚障害者向けの生活情報雑誌「ホームライフ」を読んで(聞いて?)いたところ、お料理コーナーで火も包丁も使わずにできるというチキンライスの作り方の紹介を見つけました。

サピエ図書館については「透析と視覚障害【第3回】情報の獲得」をご覧ください。

翌日は一人で留守番ですし、冷蔵庫に必要な材料はすべて揃っていたので挑戦してみることにしました。

材料と作り方を紹介します。
※このチキンライスは火を通さないため、日持ちしません(冷蔵庫で翌日くらいまでしか持ちません)。その都度食べる分を作るので分量の記載は控えますが、ケチャップとウスターソースは4対1か3対1くらいがちょうど良いです。


材料

ミックスベジタブル、冷凍玉ねぎ、缶詰のマッシュルーム、サラダチキン(ベーコンやソーセージでも良い)、ケチャップ、ウスターソース、塩コショウ、お米

作り方

  • 塩コショウとお米以外の材料を耐熱ボールに入れて混ぜる
  • 電子レンジでチン
  • 出来上がったチキンライスの具にお米を入れて混ぜる
  • 塩コショウで味を調節して出来上がり

…という、超簡単といいますか、手抜きもいいところの大雑把レシピです。
こんなものが雑誌で紹介するような料理なのかと、目が見えてる人から見れば呆れてしまうような代物かもしれませんね。

このようなレシピが毎月のお料理コーナーで紹介されているのです。お料理コーナーは料理研究家の奥秋曜子さんという、視覚障害者に料理を教える活動をしているという方 が担当しています。料理教室で好評だったレシピを中心に、作りやすく簡単なものをたくさん紹介してくれています。

なお腎臓病などは考慮されていないため、塩分制限が必要な方は調味料の分量は適宜調節する必要があります。私は塩味はサラダチキンを活用し、最後の塩コショウは入れませんでした。


「ホームライフ」とはどんな雑誌?

「ホームライフ」は、日本点字図書館が発行している月刊誌 です。
雑誌といっても紙をめくって読む雑誌ではなく、雑誌の内容を音訳した「録音雑誌」です。録音時間は2時間程度で、お料理コーナーの他にも、様々なおもしろいコーナーがあります。
たとえば、地域のお祭りや名物を紹介するコーナーをはじめ、有名人へのインタビューや便利な日用品や家電の紹介、パソコンやスマホで使える便利な機能紹介、育児や介護、仕事や余暇について、視覚障害の女性がお話をするコーナーなど、ジャンルは多岐にわたります。

雑誌を入手するには、日本点字図書館からCDを発送してもらう方法と、サピエ図書館から毎月定期配信してもらう方法があります。いずれも利用には登録が必要ですが、視覚障害がある方、活字を読むことが困難な方であればどなたでも無料で利用できます。該当される方でご興味のある方はぜひウェブサイトを覗いてみてください。

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ミーナ

ミーナ
1990年9月生まれです。生まれつき、先天性緑内障という目の病を持っており、幼い頃から弱視で現在はほとんど見えていません。腎臓は2017年に急な体調不良から緊急透析導入となり、今に至ります。原因は不明です。視覚と腎臓の重複障害ですが、日々楽しく生活しています。
趣味は読書で、4時間の透析中に1〜3冊くらいは読んでしまうかなりヘビーな読書家です。

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