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腎内科クリニック世田谷患者会講演会・坂井瑠実先生講演
『透析医療40年を経て見えてきたもの』
『長時間透析は有用か?』

2014.6.9

文:よしいなをき

2425

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2014年3月16日(日)開催の腎内科クリニック世田谷外部サイトへ患者会講演会にて、坂井瑠実クリニック理事長坂井瑠実先生の講演が行われました。2部構成で、数多くの質問も寄せられ2時間に及んだ本講演について報告します。

坂井瑠実先生 坂井瑠実クリニック理事長

坂井瑠実(さかいるみ)

1965年 岐阜県立医科大学卒業
1966年 神戸大学医学部第二内科入局(腎臓内科)
1973年〜79年  腎友会病院 院長
1979年〜98年  五仁会住吉病院 院長
1998年 坂井瑠実クリニック院長
2001年 医療法人社団坂井瑠実クリニック理事長
2005年 医療法人社団芦屋坂井瑠実クリニック院長
2013年 医療法人社団本山坂井瑠実クリニック院長

1995年阪神淡路大震災を経験し、震災に強い施設と設備を兼ね揃えたクリニックを作りたいと坂井瑠実クリニックを開設。一番の震災対策は患者さんの自立、「自分の身は自分で守るしかない」と考え自立をキーワードとした医療を心がけている。患者さんができることは極力患者さんにしてもらおうと、ボタンホールを取り入れ、可能であれば自己穿刺を指導している。透析の合併症は、透析をしているから起こるのではなく、”透析不足による合併症”と提唱している。

医療法人坂井瑠実クリニック外部サイトへ

腎内科クリニック世田谷 菅沼信也院長挨拶

坂井瑠実先生講演の前に、腎内科クリニック世田谷外部サイトへ菅沼信也院長の挨拶の中で透析時間と高効率透析についての説明がありました。

菅沼先生は、第9回長時間透析研究会(2013年)で発表に用いたスライドから、まず透析時間についての説明をされました。

透析医としての経験から

「日本の平均透析時間ですが、現在234分で4時間を切っています。当院もがんばって平均透析時間が250分を超えるようになりました。名古屋の城北クリニックは透析歴44年の方がいらして、平均透析時間は276分です。援腎会すずきクリニックが294分で、どちらの施設も年間で亡くなられる方が非常に少ないと情報公開しています。グラフからも時間が長い程、死亡リスクが低いと出ています」

次に標準化透析量(Kt/V)について説明されました。

「Kt/Vは値が大きい程、透析量が多く効率も良いとされる指標ですが、グラフからもKt/Vの高い方が死亡リスクは低くなるということが分かります。効率を上げるには血液流量(QB)を増やしたしり、血液浄化器(ダイアライザやヘモダイアフィルタ)の膜面積を大きくする必要があります。

透析時間を長くすると共に、Kt/Vが高くなる高効率透析をするのが良いと私は思います」


第1部:透析医療40年を経て見えてきたもの

神戸大学医学部第二内科の時代

「医者になったばかりの頃(昭和41年)、それこそ人工腎臓はありませんでした。この頃は女性の医師が少なく、卒業後にどこの科に入るか悩み、小児科に行こうかと思いましたが小児科の医局長に『女の医者はいらん』と言われ、眼科にしようかと思いましたがそこでも『女医さんはすぐに辞めるからいらん』と言われました。神戸大学の第二内科に腎臓で世界的に有名な辻昇三先生がおられました。『当直せんでもいい、飾りでもいいから』と言われまして入ったのが腎臓専門の病院でした」

当時はまだ透析が無い時代で、病棟では尿毒症の患者さんが多く、高カリウム血症で亡くなられる方が大勢いました。この時の高カリウム血症の治療は、瀉血(しゃけつ)をして新鮮な血液を輸血するくらいが精一杯だったそうです。

「昭和43年春、待ちに待った人工腎臓が設置されます。この人工腎臓の威力は、今までの尿毒症の治療をはるかに超えるものでした。既に昏睡状態で痙攣が始まっている患者さんの意識が戻り、食事ができ、歩くようになり、透析毎に元気になるさまを目の当たりにした時の感動は今でも忘れられません。助からなかった尿毒症の患者さんが助かる。退院することも働くこともできるという強烈な事実は、どんな重労働もどんなに長い拘束時間も苦労ではなく、嬉々として人工腎臓に関わることができました」

人工腎臓にかかるのは宝くじに当たるより難しいと言われた時代。透析を受けられる条件は、医療費の支払い能力を大前提として、15歳から45歳の働き盛りで全身性の合併症を持たない精神的に安定した男性で、女性が人工腎臓に掛かれるのは至難でした。

「この宝くじに当たってもラッキーとは言えないのです。透析の医療費は高額で、当初は『経済的には大丈夫』と言っても、死ぬまで終わらない治療に土地を売り、田畑を売り、『このままでは一家心中だ。治療を止めて欲しい』と懇願し、主治医を困惑させることも茶飯事でした」

自分の治療費を工面する家族の姿を見るに見かねて、病院を抜け出す患者さんもおり、タイムリミットに怯えながら捜索に警察が動員されたこともありました。

また、当時の人工透析は週2回、1回8時間で1キロ近くの水を抜くのがやっとで、水分制限は想像もできないほど過酷でした。冷蔵庫に鍵を掛け水道の元栓を閉める家族や、本気で鍵のかかる部屋に入れて欲しいと懇願する患者さん、氷枕の水ですら全部飲んでしまう患者さんもいたそうです。

「『コップ一杯の水をごくごくと飲んで死にたい』とシャントを外した患者さん。すべてが人間の我慢の限界を超えていました」


現在の人工透析の状況

「現在の日本の透析医療は、週3回、1回4時間がスタンダードと言われていて、日本の透析は世界一良いと言われています。それでも合併症の問題は大きい。合併症を防ぎ、生命予後を改善するためには尿毒素をたくさん取り除く必要があります」

通院時間や穿刺待ちの時間、透析中の血圧低下のトラブル、終了後も不調が残るなどして、週3回、1回4時間の血液透析でも長く感じる患者さんは大勢います。透析は自己管理が大切だと言いますが、透析時間が長いと「あの人は自己管理ができない」とか、時間が短いと「自己管理ができている」とか思われることがあります。でも、時間が短くて良いという事は全くないそうです。水、塩分の管理をしっかりすれば中2日空きでも大丈夫かもしれませんが、それでも毒素はしっかりと抜く必要があります。

普通の人の腎臓は24時間しっかりと働きます。それを透析患者さんは週12時間で済ませていますがそれではとても足りません。血流を上げる、大きな膜にする、時間を延ばすといった工夫が必要だと坂井先生は述べ、また、脚がつるような無理な透析はせず、ゆっくりと時間をかけて透析をするのが良いとおっしゃいました。

「当初は非常に効率の悪い人工腎臓でしたが、現在は週3回、1回4時間の血液透析が可能になりました。でもβ2-ミクログロブリン(β2MG)の除去効率を除いて透析量は当初から変わっていないのです。週3回、1回4時間の透析というのは、厳しい節制をしたうえで命にかかわらない必要最低限の透析なのです」


透析医としての経験から

「私は、早くから昼間働く患者さんのために夜間透析をしてきました。体重増加の多い人は、ベッドが空いていれば、早く来て終了時間まで長く透析を行うことはOKとしてきました。そういう透析を受けてきた人たちはずっと元気ですね。40年透析ができた人はきちんと食べられて、それに見合う透析をしてきた人です」

「普通、自己管理と言えば食事の管理を指します。リンが高いのは良くないと蛋白質を減らしたりする。でも蛋白質を悪者にする食事制限などないのです。食事の管理をしっかりした人たちが本来一番元気で長生きしなければならないのですが、現実には栄養障害になり早く亡くなることがあります」

高血圧だとか口腔乾燥、味覚異常、食欲低下、痒みと透析にまつわる症状はさまざまありますが、これらは全て透析不足に起因するものです。非常に辛い痒みも、充分な時間をかけて透析をすればきちんと解消できると説明されました。

透析医としての経験から 透析医としての経験から

「長時間透析へ移行した患者さんの声を聞いても、足がムズムズするといった症状は透析を充分にすると治まります。効率を上げることは良いことですが、人間の体は急激な変化についていけません。ゆっくりと長く透析をする方が楽だと思います。短い透析の後にしんどくなるよりは2時間増やして楽な透析をして、帰りに買い物ができるくらいが良いでしょう」


阪神淡路大震災を経験して

阪神淡路大震災のとき坂井先生は被害の大きな地域のクリニックに勤めていました。その病院には自家発電があり、水も40トンは備えていたそうですが、震災で自家発電が機能せず、地下にあった水を引き上げるためのパイプも途中で折れてしまい、汲み上げることができなかったそうです。

「紹介状を書く余裕もなく、前の日の透析記録で他の病院に対応してもらうことにしました。患者さんには他の92の施設に行ってもらうことになりました。自衛隊に掛け合いトラックで患者さんを他の施設まで運んでもらい、歩いて行ける人には8時間かけて歩いて行ってもらいました」

多くの死を目の当たりにした震災の経験から、潰れない施設、潰れない設備を作ろうと新しい病院をオープンしたそうです。しかし、一番の震災対策は患者さんたちの自立だと気づき「自分の身は自分で守るしかない」と考え、現在は「自立」をキーワードにした診療への取り組みを行っています。

「透析を受けることも同じで、合併症の出ない透析は自分で選択する必要がある。自分に合った時間や回数を自分で考えていただきたいと思います」


第2部:長時間透析は有用か?

セルフケア(自己管理)とは

「自分の透析をどうしたいか考えることが命を守ることになります。透析をする上で自己管理は大事だと言いますが、水を飲むのを控えるだとか食事の量を減らすということだけではなくて、自分の人生をどう生きたいかということを考えることが自己管理だと私は考えています」

現在、坂井瑠実クリニックでは週3回、1回4時間の透析施設から転院して来た患者さんが多く、この方たちにはすぐに5時間の透析に切り替えてもらっているそうです。しかし4時間から5時間への切り替えのみでは食べる量が改善されるくらいで、データ的にはあまり変わることはありません。そこで透析効率を上げていきます。その方法は血流を上げる、膜を大きくするなど色々とありますが、どれがその人の体に合うかが問題で、選択の際には年齢や血管の柔らかさも考慮すべきだとおっしゃいました。

また、目安として透析前のクレアチニン値が12mg/dLを超えたら透析時間を延ばした方が良いと説明されました。

「当院では1時間あたりの除水量を患者さん固有に決めています。増加分を時間除水で割り、その日の透析時間を決める。体重が増えすぎた場合はその都度、患者さんに聞いて、『時間を延ばすかな』とか『明日もう一度やるかな』と決めてもらっています。こうしたことも患者さんの自己管理です」


長時間透析をどのように過ごすか

「一番はどこで透析をするか。寝ている間、お仕事をしながら、趣味の間に、家族と一緒に等が挙げられますが、時間を有効に使えれば長くとも苦にはならないと思います。透析だけをしているというのはとても大変です。血圧が下がったりしては「ながら透析」どころではありませんが、血液透析はまず無症状に行うことが大事で、そうすれば透析の時間を有効に使うことができます。透析の時間に勉強して社労士の資格を取った患者さんもいらっしゃいます」

長時間透析をいつやるのが良いかということに関しては、次のとおり説明されました。

「一番は睡眠時に透析の時間を当てるのが良いでしょう。6〜7時間の寝ている間に透析を受けるのはあまり苦にはならないし、これで充分な透析時間が得られます。充分な血液透析をすると何が違うかというと、頭が非常にシャープになる。そして、良く眠れるようになります」

尿毒症、腎臓病の厄介なところは、透析時間を延ばして初めて症状が良くなるということが実感できることです」

4時間我慢するのが精一杯という患者さんには、「ジャンケンしましょう」と提案するそうです。先生が勝てば3ヶ月間時間を延ばしてもらう。負けても結局はやってもらうのですが、期限を設けることで納得してもらい、とにかく経験してもらいます。その後、一度長い時間を経験した患者さんは誰も元に戻して欲しいとは言わないそうです。


HDP(Hemodialysis Product)とは

透析量の指標にHDPと呼ばれるものがあります。何時間の透析を週何回やって、という計算は面倒なので、
1回の透析時間 ×(週の透析回数)2
で計算します。

1回5時間の透析を週3回しているのではあれば、HDPは、
5時間 ×(3回)2 = 45
です。

1回4時間ならば、
4時間 ×(3回)2 = 36
になります。

「フランスのある病院では40年近く週3回、1回8時間の透析をしています。HDPは72です。フランス人の体格だとか色々な条件は日本とは違いますが、でもここのデータは移植に負けていません」

「長時間透析を受けた患者さんからは、『厳しい食事制限から解放された』とか『降圧剤やESA(赤血球造血刺激因子製剤)がいらなくなった』などの声が寄せられていますが、こういうことを実感するには、ある程度長い時間で透析を受けることが良いと思います。ただ、食べられない人が透析時間を長くすると、透析によって抜けすぎるものがある。体を作るのにとても大事な蛋白質やアミノ酸も抜けます。抜けた分をオンして食べないといけません。それぞれに見合った透析の量が大事です」


患者さんの自立を目指して

「阪神淡路大震災の後、どんなことがあっても震災で潰れない建物が必要だと思い開設したのが坂井瑠実クリニックです。その後、患者さんには自立してもらいたいという思いで作ったのが芦屋坂井瑠実クリニックで、オーバーナイトや隔日透析もしています」

施設透析の患者さんでもやりたい人には機器のセットやプライミングに参加してもらうそうです。また、在宅血液透析(HHD)をしている人だけではなく患者さんの7割が自己穿刺です。どんなに穿刺のうまいスタッフでも痛いことはありますが、ボタンホールの導入で太い針でも痛みがない。痛くないのであれば、と自己穿刺を希望される患者さんが増えています。

自立への取り組み 透析の準備など 自立への取り組み 透析の準備など


在宅血液透析(HHD)の取り組み

坂井瑠実クリニックでは在宅血液透析(HHD:Home Hemodialysis)にとても力を入れており、HHDに取り組んでいる患者さんは全部で50名いらっしゃいます。

HHDのメリットとして坂井先生は次のように述べました。

「HHDは好きな時にできるし、家族と一緒にいられるということもすごく良いことだと思います。小さなお子さんがいても、お母さんは家を留守にせず、子供のそばにいて血液透析をすることができます。患者さんがHHDを選択する理由には、仕事を十分にしたい、質の高い透析を行いたいといったことが挙げられます。働きたいがために腹膜透析(PD)を選んだ人たちは、在宅血液透析で大丈夫だと思います」

HHDを選択した理由 HHDを選択した理由

「HHDを行うにあたり当院での約束事は、透析中に何かあれば直ちに終了する、中2日空きを作らない、週3回4〜5時間の透析なら勧めないといったことが挙げられます」

坂井瑠実クリニックの約束事 坂井瑠実クリニックの約束事

現在、米国やカナダでは透析導入時からHHDや連日透析が基本になっており、米国ではHHD専用で操作が簡単にできるコンソールが出ています。透析をしている妊婦さんは普通は羊水過多になることが多いのですが、カナダの病院ではたくさんの赤ちゃんが生まれている実績があります。カナダの妊婦さんは7時間の透析を週6回実施するのでHDPは252になります。ここまでの透析をすると全く腎臓が悪くない人と同じ健康状態です。


最後に

「残念なことに透析にはどうしても時間が必要です。日本の標準的な血液透析では、週3回、1回4時間が9割です。その中で効率を上げていくことができなければ、後から合併症がいっぱい出てきます。若くて血管が柔らかい時は効率よくガンガンやっても良いのですが、条件が変わればゆっくりと時間を延ばしてやるのが良いでしょう。時間をどのように延ばし効率を保つかが重要になります。

良くなってきたという実感が湧かないと、『なんでこんなしんどいことをしているのだろう』と思われるかもしれませんが、期間限定でも構わない、お試しで3ヶ月だけ6時間にしてみてください。ダメだったらまた元に戻せば良いのです。当院での患者さんはHHDもオーバーナイトの人もどんどん増えています。良くなったという実感があるからこその選択だと思います」


坂井瑠実先生に寄せられた質問

講演の後、会場の患者さんからたくさんの質問が寄せられました。ここではその一部を紹介します。

【質問1】
自転車に乗って体を鍛えるということをしていますが、土日の中2日空きの後はかなり体がだるく感じます。スポーツを我慢することは自分でも辛いのですが、この先どういった方法で透析とスポーツのバランスを取れば良いのでしょうか?

【回答1】
どんなスポーツをされても基本大丈夫だと私は思います。データを診てみないことには分かりませんが、何かを我慢するよりも透析を増やすことを考えていくのが良いと思います。例えば在宅血液透析(HHD)をされることも含めて検討されてはいかがですか。やるのであれば施設透析でやる以上のことをやらないともったいないですね。何よりも大事なのは回数を増やすことです。BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)という心臓への負荷のかかり方を示す指標がありますが、月、水、金の透析を受けられている患者さんの金曜日の後と月曜日の後のBNPの値は違いが出ています。そういう観点では中2日空きを作るのは体には良くないです。普遍的に体に楽なのはやはり中2日空きを作らないことです。

【質問2】
私は腎内科クリニック世田谷の患者ではないのですが質問させてください。透析歴12年と9ヶ月です。最初の9ヶ月は腹膜透析(PD)をしていました。施設透析に移ってからの12年は血流量200mL/minの4時間で透析を受けています。 昨年の春、急性心筋梗塞で入院して、6月には冠動脈の手術を受けました。それらの疾患があるのですが、この場合、長時間とか血流量を増やすことで心臓に負担はかからないでしょうか?

【回答2】
心臓への負担とのことですが、ズバリありません。血流からお話しすると普通の状態でシャント内には900〜1000mL/minの血液が流れています。バイパスを通って250mL/minにしようが300L/minにしようが心臓に負担がかかることはありません。ただ、血流を上げて急に効率を上げたりするとデータが急に良くなって、不均衡症候群のようなことがあります。効率を上げることはいくらでもできますが体がついていきません。ですから少しでも時間を長くするということを検討されるのが良いと思います。PDをされていたのでしたら在宅血液透析は難しくないと思います。やってみてはいかがですか。


【研究員:よしいなをき所感】

坂井瑠実先生の講演の前半では今から40年前の腎臓病や尿毒症患者さんの様子が語れています。透析装置も無く猛威を振う尿毒素の恐ろしさが伝わります。今では透析技術の向上や効率向上の工夫が行われ、元気な患者さんが増え、せいぜい中2日空きの後に体がだるいくらいで済んでいますが、実は初期の人工腎臓の頃と透析量は大きく変わっていないと坂井先生はおっしゃいました。透析治療黎明期の尿毒素本来の恐ろしさを知る坂井先生だからこそ、「ゆっくりと時間をかけた体に優しい透析」を勧めるのだと感じました。できる限り体の毒素を抜き去り、不調を感じず合併症も起こらない透析がやはり正しいのだと実感しました。

坂井瑠実クリニックでの隔日透析やオーバーナイトによる施設透析のことを病院関係者に話すと、「そんなことどうやったら実現できるのだ」と返ってきます。その答えは患者に自己穿刺をさせたりプライミングをさせたりと、患者の「自立」を目指したところにあるのでしょう。発想そのものが違うのです。医療関係者や患者すらも考えられなかった方法で、「こんなことはできない」を変えていく。坂井先生自身の押しの強さもあるのかもしれません。 実は講演会最後の質問会で最初の質問(本レポート【質問1】)をしたのは私ですが、先生から在宅血液透析を勧められ心動いているのが現状です。

少し前まで私も週3回、1回4時間の透析が普通なのだと思っていました。そのことに疑問を持つようになると、「どうして透析はみな同じ条件で行われるのだろう」とか「もっと自分の体に合った条件の透析はないのだろうか」と思うようになりました。坂井先生の講演を聴いて「ほら、こんなやり方だってある。これだってできる」と色々な方法を示してくれていることが、患者として心強く感じました。そして「中2日空きは体に良くないわよ」という言葉は、私の体が求める実感として伝わっています。自分にとって最良の答えを自分自身が選び求めていかなくてはならない。それが患者としての自立だと感じました。

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よしいなをき

よしいなをき
透析はしていますが普段はスポーツ自転車に乗って 体を鍛えています。
仕事は、平凡なサラリーマンですが、透析の時間を利用して、ブログを書いたり、小説を書いたりしています。

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