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基礎知識

災害時と透析:災害時の薬・食事の管理

最終更新日

2021.3.8

文:じんラボスタッフ

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東日本大震災の発生から、今月(2021年3月)で10年です。自然災害は地震に限らず、近年では大雨や台風などの風水害も頻発し、甚大な被害が発生しています。災害の発生で十分な透析治療が受けられない場合を考え、災害下における薬や食事の管理について今一度見直しましょう。


1. 薬の管理

災害時でも薬は服用しなければなりません。しかし災害時にはいつも服用している薬がすぐに入手できるとはかぎりません。そのため平常時から薬を整理し、すぐに持ち出せるようにしておきましょう。お薬手帳のコピーと一緒に、服用しているお薬を1週間分ほど、緊急災害時の持ち出し品として準備しておきましょう。また、外出時に万が一災害に遭うことを考えて、3日分ほどをいつも携帯しておくとよいでしょう。

薬には数日間飲まなくても、すぐには身体に影響が出ないものと、飲まなければすぐに影響が出るものがあります。平常時から主治医の先生に飲まないと早期に身体に影響を及ぼす薬について確認しておき、日ごろから意識して、継続して飲むようにしましょう。

欠かさずに飲まなければ早期に身体に影響を及ぼす薬

  • 心臓の薬(ニトログリセリン製剤)

  • インスリン

  • カリウムを下げる吸着剤(イオン交換樹脂など)

  • 降圧薬(災害時のストレスや、不規則・不十分な透析で血圧が不安定になる可能性があります。)

糖尿病の方

糖尿病の方は、災害時のストレスや不規則な食事などのために血糖コントロールが難しくなります。災害時も、主治医、もしくは避難所の医師に相談しながら、以下の点に注意して、自己管理に努めましょう。

  • インスリン治療中の方は、災害時もインスリン注射を中断してはいけません。血糖自己測定機器は常に携帯し、血糖値を測定してインスリンの量を調節しましょう。70mg/dL以下の低血糖であれば、すぐに糖分を含んだ食品を摂取しましょう。

    • Ⅰ型糖尿病の方

      中間型インスリン・混合型インスリン・持続性インスリンは、食事に関係なくインスリン基礎分泌量を補うために使う物なので、食事がまったくできない場合でも、いつもどおりインスリン注射が必要です。

    • Ⅱ型糖尿病の方

      食事が全くできなくても、普段の1/2程度の量を注射しましょう。ただ、食事ができない場合のインスリンの量は個人差があるので、平常時に主治医に確認しておきましょう。

    • 災害時は、インスリン製剤と注入器が一体になっているプレフィルドインスリン製剤が便利です。予備のインスリンや器材を自宅や勤務先に準備しておきましょう。災害時、針が不足している場合は、自分の針に限ってなら複数回使っても大丈夫です。

  • 糖尿病の薬を内服中の方は、薬を減量または中止するのはやむを得ないこともあります。食事ができない場合の糖尿病の薬の飲み方は、平常時に主治医に確認しておきましょう。災害時も主治医や避難所の医師に相談しながら服用しましょう。状態によっては薬を服用して低血糖になってしまう場合があります。

  • 低血糖に備えて、キャンディやチョコレートなど、糖分を多く含む食品や飲料を常備しておきましょう。


2. 食事の管理と注意点

災害時には、透析が受けられなかったり透析の回数や時間が減ったり、薬が入手困難であったり、食糧が不足したりなどということが想定されます。特に透析量が減少すると水分やカリウム、老廃物の除去量が減るため、むくみや高カリウム血症尿毒症を招く可能性がありますし、透析を受けられない場合は命に関わる恐れもあります。
しかし、そのような状況でも、食事と水分の量を厳格に自己管理して過ごすことで乗り切れる場合があります。

災害時に透析患者さんが食事面で意識するべき点

  • 塩分・蛋白質・カリウム・リンを平常時より大幅に制限する
  • 1日の水分量は「尿量+300~400mL以下」に抑える
  • エネルギー(カロリー)をしっかり確保する

平常時と災害時における1日の栄養量の比較
(尿量0で体重50kgの週3回の血液透析を行っている透析患者さんの場合、災害時はいつも通りの透析を継続して受けるのが難しい場合)

平常時 災害時
エネルギー 1500~1750kcal 1200~1400kcal以上
蛋白質 45~60g 30~40g
カリウム 2000mg 500~1000mg
飲水量 750mL 300~400mL
塩分 6g以下 3~4g以下

平常時は「一般社団法人 日本腎臓学会『慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」」より作成、飲水量のみ「ドライウェイト×15mL+尿量」で計算、災害時は「東京都福祉保健局 透析患者用マニュアル(防災の手引)」より引用

塩分の制限は水分量コントロールに直結するため非常に大切です。平常時よりも塩分量を控え、水分は飲み水だけでなく食べ物に含まれる水分量にも配慮しましょう。逆に水分量が少なすぎると、エコノミークラス症候群や深部静脈血栓症などを発症し命に危険が及ぶこともあります。適正な水分摂取を心がけましょう。

カリウムが多く含まれる生野菜や果物、海藻、蛋白質が豊富な肉や魚や卵などは災害直後に入手が難しくなるものの、バナナや野菜ジュースなどの支援物資にはカリウムが多く含まれます。また、果物や野菜などを簡単に調理した炊き出しには、カリウム・蛋白質・塩分が多めに含まれていることがあるため注意が必要です。
カリウムの摂りすぎは脱力感、唇や手足の痺れ、不整脈などを引き起こす高カリウム血症の原因に、蛋白質の摂りすぎは頭痛や吐き気、倦怠感などの症状を引き起こす尿毒症の原因になります。

また、上記「平常時と災害時における1日の栄養量の比較」にはありませんが、リンにも注意が必要です。カップラーメンなどには食品添加物として無機リンが多く含まれています。支援物資でカップラーメンが出た際は、麵のゆで汁は捨てて、新しいお湯でスープを作るといった工夫で無機リンを減らすことができます。

最後に、エネルギー(カロリー)についてです。十分なカロリーが摂れなければ、体は筋肉を分解してエネルギーを作り出します。筋肉が分解されると蛋白質やカリウムが作り出され、尿毒症や高カリウム血症を引き起こしやすくなります。主食をしっかり摂る、保存の利くお菓子を活用するなどでエネルギー補給を意識しましょう。


透析患者さんが用意したい非常食

非常食として用意するとよいものは、主に主食(炭水化物)、主菜、お菓子類、その他、栄養補助食品類の4種類です。


主食(炭水化物)

白米のアルファ米やレトルトパウチの白粥のように、味付けされていないものを選びましょう。その他、缶入りのパンや乾パン、無塩クラッカーもおすすめです。


主菜

塩分や蛋白質をできるだけ抑えたもの、そして長期保存が利く缶詰製品を選びましょう。食べ切りやすい小さい缶詰を選ぶことで、開封後食べ物が傷みづらく、さらに食べる量を調節しやすくなります。
※栄養成分表示には塩分量が「食塩」または「ナトリウム」で表示されています。ナトリウム(Na)の食塩相当量は、食塩(g)=Na(g)×2.54で計算します。


お菓子類

エネルギー補給に有効です。特にマシュマロは無塩かつ低蛋白・高エネルギーなので、透析患者さんにとって非常時のカロリー補給に適しています。その他、塩分に配慮すれば飴やゼリーも低蛋白・高エネルギーでおすすめです。


その他、栄養補助食品類

災害下では食材や食品が不足し、ビタミンや食物繊維、カルシウムなどが摂りづらくなります。不足しやすい成分が含まれる食品の準備が大切です。

例)
①「カロリーメイト」のようなバランス栄養食品
調理が不要でエネルギーやカルシウム、ビタミン、食物繊維等が気軽に摂れ、塩分や蛋白質、リン、カリウムの摂取量を比較的抑えやすいなどのメリットがあります。栄養成分表示を見て、ナトリウムやリンの含有量に気を付けて選んでください。
参考:カロリーメイト(ブロックタイプ:1箱4本入り)の場合、いずれもカロリーは400kcal、カルシウム200mg、食物繊維2gです。その他の成分は味によって差がありますが、いずれも蛋白質約8~9g、カリウム約90~100mg、リンは約80~100mg、食塩相当量は約0.7~0.9gです(大塚製薬「カロリーメイト」より)。
②低リン乳
一般的な牛乳よりもリンの値が少ないミルクで、製品によってはビタミンが含まれているものもあります。粉末タイプだと携帯しやすく、長期保存も可能です。
③氷砂糖や粉飴
食事に加えることで簡単にエネルギー補充ができます。粉飴は砂糖よりも甘さが控えめで米飯に加えても甘くなりすぎず、食べやすいのが特徴です。

非常食は最低3日~1週間分程度の備えが必要といわれています。しかし、一度にまとめて数日分の非常食を持ち出そうとすると、荷物が重く避難が遅れる可能性があるため、必要最低限の物資を入れる「一次持ち出し袋」に1日分の食料を、状況が少し落ち着き安全を確認した際に自宅に戻って持ち出す「二次持ち出し袋」に数日の食料を入れるとよいでしょう。

非常食として用意した食材は、賞味期限切れを防いで備蓄内容を見直すためにも、定期的に「食べる・使う」「補充する」を繰り返す「ローリングストック」という方法を活用しましょう。

ローリングストック

成分・栄養調整食品をローリングストックしておくと、災害時でも食べ慣れたものを食べられて安心ですね。

参考:腎臓病・透析患者さんのための食品〜成分・栄養調整食品一覧〜


避難所で救援物資や食事の提供を受ける際の対応

避難先で提供される救援物資や食事は、塩分が高いものが多いなど普段とは異なる食事内容になるため注意が必要です。参考にしていただきたい仙台病院の『災害時の食事管理ガイドブック』は、東日本大震災の際に得たスタッフの方々の経験・知識が詰まった、本当によくできたガイドブックです。特に40ページの「東日本大震災後に提供された食品や炊き出し料理のエネルギーおよび各栄養素」は、プリントアウトして緊急災害時の持ち出し品とすることをおすすめします。

避難先で炊き出しがある場合は、透析治療を受けているため水分やカリウムなどの摂取制限が必要であることを必ず伝えましょう。制限すべき内容を具体的に伝えるために、あらかじめ下図のようなカードを作っておいてもよいかもしれません。

摂取制限を伝えるカード

かかりつけ透析施設以外の施設での透析に備えて持っておきたい、保険証、身体障害者手帳のコピー、災害時要援護者透析カードなどと一緒に携帯すると安心ですね。

そのうえで、塩分を最低限に抑えるため、塩分の高いおにぎりの具や弁当はおかずは残すなどの自己管理も必要です。おかずを減らした分、カロリー不足にならないように主食をしっかり食べたり、お菓子類でエネルギー補充を心がけましょう。


日頃から災害時の備えを

厚生労働省によると、東日本大震災発生後の救援物資は地域によって大きな格差があり、震災後3週間たっても食料の支給は1日1食おにぎりのみという地域もありました。日本はいつどこで災害が発生してもおかしくない災害大国です。自分を守るために平常時から災害対策を心がけましょう。

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