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基礎知識

透析患者さんの検査

2013.4.1

文:じんラボスタッフ

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望ましい透析の条件と、自分がどのような透析を受けているか、自分の疾患を知ることは、合併症の防止、QOL(生活の質)の向上にも役立ちます。つまり、透析患者さんが元気に長生きするために非常に大事なことです。
透析がうまくいっているか、生活習慣の管理と食事療法などで水分や塩分のコントロールができているか、健康の状態などは、定期日の血液検査から知ることができます。
※以下の目標値は、透析施設に週に3回通い、1回の治療時間が4〜5時間程度の血液透析(HD)を行う方を想定しています。週あたりの透析の回数が多い方、在宅血液透析(HHD)の方など透析を受けるさまざまな条件や、病態など個人差があるため、目標値はそれぞれ異なります。

透析がうまくいっているかわかる

週3回の血液透析で、どのぐらい体内にたまってきた老廃物を取り除く事ができたのかの治療の目安として標準化透析量(Kt/V)がよく用いられますが、これは低分子の尿素窒素のみを用いた指標です。そのため、例えば尿素窒素より大きい中分子の尿毒素であるβ2-ミクログロブリンの除去効率や、透析時間、血流量、透析後の体重など、さまざまなデータから全体的にとらえ、評価することが大切です。

透析時間の長さ

目標:頻回または長時間

日本透析医学会の統計調査報告での、2008年12月31日時点の施設血液透析の透析条件の実態は、透析回数は平均週2.95回、1回の透析時間は3.92時間でした。割合で見ると、回数では週3回が95.3%、3.5時間以上4時間未満が9.2%、4時間以上4.5時間未満が66.5%、4.5時間以上5時間未満が5.2%で、多くの患者さんが週3回の4時間程度と比較的同じ条件で透析を受けていることが分かります。 一方、在宅血液透析を受けている患者さんでは治療の自由度が高く、長時間または頻回短時間透析が可能で、生命予後が良いという報告があります(在宅血液透析について 参照)。つまり週あたりの総透析時間が長いと、長生きできると言えます。

標準化透析量(Kt/V)

目標値:男性1.8以上、女性2以上

血液透析(HD)や腹膜透析(PD)において、尿素などの低分子の老廃物がどれくらい除去されたか、つまりどれくらい血液をきれいにできたかを示す指標です。透析前後の体重、尿素窒素の値、透析時間から算出します。
Kは尿素のクリアランス(透析によって一定時間あたりに完全に尿素が除去された血液の量)、tは透析時間、Vは体液量(体重の約60%)を指し、単位体液量あたり1回の透析で尿素を取り除く事ができた体液の延べ総量を表します。値が大きい程透析効率が良いと言えます。
さまざまな透析量と生命予後を検討した研究がありますが、日本透析医学会の統計調査報告ではKt/Vの増加にともない生命予後が良いことがわかっています。

尿素窒素(BUN)

目標値:20〜70mg/dL

蛋白質が分解されるときにできる老廃物で、肝臓で合成されます。腎臓の機能が低下すると尿素窒素の血中濃度も増加するので、腎臓の障害の程度をみる指標として使われています。
通常尿素窒素は腎臓で濾過されて尿中へ排泄されますが、急性や慢性の腎不全などで腎臓の機能が低下すると、濾過しきれない分が血中に残ってしまい、尿素窒素の値が高くなります。また蛋白質の摂り過ぎ、大量の消化管出血、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、脱水症状、透析量の不足の場合も数値は上昇します。
逆に数値が低い場合蛋白の摂取不足が考えられます。その他尿素のほとんど全てを作っている肝臓の働きが悪い場合、すなわち重症肝障害、肝不全などでも数値は低くなります。

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水分や塩分のコントロールができているかわかる

腎不全が進むと、尿量が少ない、または出ない状態となるため、体の中に水分が溜まりやすくなります。また水分や食塩を摂り過ぎて体液量が多くなると、心臓に過大な負担がかかって高血圧や心不全の原因となります。透析患者さんが体重や水分の管理が重要と言われるのはこのためです。水分や塩分状態がわかる指標を体液量のコントロールに役立てましょう。

ナトリウム(Na)

目標値:137〜145mEq/L

人体に必要かつ重要なミネラルのひとつで、細胞、神経、筋肉の働きを正常に保つために必要な物質です。血中のナトリウム値によって体液と食塩摂取量のバランスを知ることができます。日本透析医学会の統計調査報告では透析前のナトリウムの値が低いほど生命予後が悪いことがわかっています。
ナトリウムは食塩として摂取されますが、透析患者さんにおいてはナトリウムの摂取は体重増加に直結するため生命予後に関わる重要な項目です。
ナトリウムは、主にナトリウムイオンとして細胞の外側を取り囲んでいる体液に多く含まれており、カリウムとバランスを取りながら体液の調整をします。浸透圧の維持などの働きをしているほか、神経の刺激伝達、筋肉の収縮、特に心筋の収縮を調整する働きもあります。量が過剰になると高血圧になったり、筋肉がけいれんすることがあります。水分や食塩の摂取に注意しましょう。

カリウム(K)

目標値:4〜5.5mEq/L

腎不全が進むとカリウムの排泄が行われなくなります。カリウムは野菜や果物に多く含まれ、カリウムの排泄が行われない透析患者さんが野菜や果物を食べ過ぎると、血中のカリウムの濃度が高くなりすぎた状態の高カリウム血症となり、不整脈を起こしたり心臓停止する危険があります。高カリウム血症の透析患者さんは、透析量の増加、高カリウム血症改善剤の内服、カリウムの制限が非常に重要です。
食事が摂れなくてカリウム摂取量が減ったり、利尿剤の使用などで尿へのカリウム排泄が増えると、低カリウム血症となり筋力が低下したり、けいれん、麻痺、不整脈などを起こします。日本透析医学会の統計調査報告では透析前のカリウムの値が高くても低くても生命予後が悪い傾向があることがわかっています。
カリウムは人体に必要なミネラルの一種で、成人の体内には約120gから200gが含まれています。遊離イオンやリン酸塩、蛋白質との結合体としてそのほとんどが細胞内にありますが、ごく一部は血液やリンパなどの体液(細胞外液)や骨にも含まれています。
カリウムは、細胞内液の浸透圧を調節して一定に保つ働きがあります。また神経の興奮性や筋肉の収縮に関わっており、体液のpHバランスを保つ役割も果たしています。ナトリウムを身体の外に出しやすくする作用があるため食塩の摂り過ぎを調節するのに役立ちます。

透析前体重増加率

目標値:4〜6%

※上記の目標値は、週初め(前回から2日以上空けてからの透析)です。前回から中1日空きで透析を行った場合の目標値は2〜4%です。

透析前の体重とドライウェイトと透析間の日数から算出する、前の透析から次の透析までの間(透析間)に増える体重の割合です。尿が出ない状態の方は、摂取した水分が体に溜まり続けその分体重が増加します。体の中の水分が適正な状態の体重、つまりドライウェイトを基本にして透析で体に溜まった余分な水分を取り除きます。
慢性的に体液量が多い状態が続くと高血圧の原因となります。高血圧は血管を傷つけるので脳卒中や動脈硬化や心臓病を引き起こします。透析間の体重増加が多いと、体液量が多くなり心臓に過大な負担がかかって心不全となります。
透析患者さんの死亡原因は依然として心不全が1位です。つまり体重コントロールが生命予後の鍵を握るとも言えます。

推定塩分摂取量

目標値:(ドライウェイト(kg)×0.15)g/day以下

食塩を多く摂り過ぎるとのどが渇き水分が欲しくなります。「体重管理=水分管理」です。透析生活を続けていくための食事療法の中でも、水分や食塩の摂り方は自己管理の上でも非常に重要です。
適切な体液量を管理するため1日の食塩の摂取量に気をつけましょう。体液量の管理が必要な腎不全の患者さん以外にも、食塩の摂取量を減らすことは左心室肥大という心臓の病気の程度を軽くしたり、動脈の柔軟性を高めたり、降圧薬の効果を高めたり、ナトリウム排泄に使われるカリウムが失われるのを防ぐなどのメリットがあります。

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健康(栄養や筋肉量)の状態がわかる

透析生活を続けて行くためには、しっかり食べて、しっかり動いて、しっかり透析が必要です。透析時間、回数が多いのはもちろんのこと、栄養状態が良く筋肉量が多い方が長生きできるからです。 また長い間透析をしていると骨密度が低下しますが、その骨を守る筋肉を維持することも重要です。

アルブミン(Alb)

目標値:3.6g/dL以上

透析患者さんには栄養不良が見られることがあります。栄養状態を判断するのに血中のアルブミンの値を見ます。さまざまな調査で、透析前のアルブミン値が高い(栄養状態の良い)方がそうでない方に比べて生命予後が良いことがわかっています。
アルブミンは血中に存在し、最も多く含まれる蛋白質の一種です。血液や筋肉など体中に広く分布していて、細胞の働きを助ける機能をもっています。食事から摂取した蛋白質などを材料として主に肝臓で作られ、肝臓障害、栄養不足、ネフローゼ症候群などで減少します。透析患者さんにおいては、透析が充分に行われず尿毒症状態が続くと蛋白異化が起こり減少します。
栄養状態が悪いと体調が良くない状態が続いたり、体力が落ちさまざまな感染症にかかりやすく重症化しがちです。
充分なアルブミンは適当な水分を血管内に保持します。これを膠質浸透圧と言います。血中のアルブミンの低下により膠質浸透圧が低下し、細胞間質から血管内へ水を引っ張ってくることができなくなってきて、逆に細胞間質の方へ水が移行してしまい、むくみが出てきます。

%CGR(%クレアチニン産生速度)

目標値:110%以上

%CGRは、透析前後の体重、クレアチニンの値、透析時間から算出するクレアチニンの産生状態を見る指標です。同性同年齢の健康な人の値と透析患者さんの値を比較し、健康な人の筋肉量の何%の筋肉量をもっているかを表します。値が高いほど筋肉の量が多く100%以上ある人は平均以上筋肉がある事を示しており、この値が大きい程生命予後が良いことがわかっています。
クレアチニンは筋肉が活動することによって作られる血中に存在する老廃物の一種です。そのため筋肉量が多い程クレアチニンの産生速度も大きくなります。低い場合は充分な透析、充分な栄養、運動が不足していると考えられます。
筋肉が落ちたり体力が低下するのを防ぐため、しっかり透析してしっかり食べる以外に、腎臓の機能に悪影響を及ぼさない程度の適度な運動を心がけましょう。

GNRI

目標値:92以上

身長とドライウェイトアルブミンの値から算出する栄養状態を評価する指標のひとつです。透析患者さんは、尿毒素の蓄積などで食欲が低下します。さらに食事療法において水分や食塩、カリウムリンの摂取などさまざまな制限を受けます。
そのため蛋白エネルギー栄養障害(PEM)、つまり蛋白カロリー栄養不良が患者さん全体の1/4〜1/3と高い頻度で見られます。透析患者さんは年々増加しているため、栄養障害に陥っているまたは陥る可能性のある患者さんを簡易的・効率的に見つけ出すことは非常に重要です。透析患者さんの栄養評価には一般的には身体測定や検査データ、病歴などを複合的に見るSGA(subjective global assessment)の正確性が比較的高いと評価されていますが、検査に時間がかかるという欠点があります。
その他栄養状態を評価する方法はたくさんありますが、GNRIを透析患者さんに当てはめた結果、最も簡便かつ正確性が高く有用であることがわかっています。GNRIはもともと高齢者の入院患者さんを栄養学的に余命のリスクを評価する方法として考案されました。

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合併症の心配がないかどうかわかる

透析療法を続けていると血液透析腹膜透析が体の負担となってさまざまな原因で合併症が起こることがあります。透析導入の始めに起こるもの、透析を長く続けているために起こるものなど、合併症の種類は多岐に渡っています。 正しい知識で予防に努めQOL(生活の質)の低下を防ぎましょう。

ヘモグロビン(血色素量 Hb)

目標値:10〜12g/dL

※比較的高齢で活動量の少ない方は10〜11、比較的若年で活動量の多い方は11〜12を目標としましょう。

血中のヘモグロビンの値で貧血かどうかを判断します。
腎臓はさまざまなホルモンを分泌しています。そのひとつに赤血球を作るはたらきを促すエリスロポエチンというホルモンがあります。腎臓の機能が低下するとエリスロポエチンの分泌が減り赤血球を作るはたらきが落ちるため、腎性貧血という強い貧血が起こります。徐々に進行するため自覚しにくい貧血です。
透析患者さんはエリスロポエチンの分泌の低下以外に、尿毒素による造血障害や透析による血液の損失などによってますます貧血が進行します。
ヘモグロビンには呼吸によって取り込まれた酸素を全身の組織や細胞に運ぶ重要な役割を担っています。貧血になると身体の各組織や細胞に十分な酸素が供給されなくなるため、さまざまな症状が現われます。皮膚や唇や爪が白くなる、疲れやすい・息切れ・立ちくらみ・めまい・動悸なども、貧血が原因で起こる場合があります。

リン(IP)

目標値:3〜5.5mg/dL

腎臓の機能が低下すると血中にリンが溜まる高リン血症になり、その結果カルシウムがリンと結合して動脈に石灰化して溜まり、心筋梗塞や脳梗塞の危険性が高まります。また副甲状腺ホルモン(PTH)というホルモンが分泌されてリンやカルシウムが骨から溶け出て骨が弱くなったり、腎臓の機能がさらに悪化したりする原因になります。また、長い間透析をしていると骨強度や骨密度が低下することがありますが、その骨を守る筋肉を維持することも重要です。そのため、高リン血症の透析患者さんは、透析量の増加、リン吸着薬の使用、食事での制限が必要です。
リンは人体に必要なミネラルの一種で、骨や歯や筋肉を形成するほか体内のさまざまな細胞に存在し、カルシウムに次いで多く、成人の体重の約1%を占めています。その85%は骨や歯にリン酸カルシウム・リン酸マグネシウムとして存在しています。残りの15%は蛋白質や脂質と結合し細胞膜や核酸の構成要素として体内の細胞に存在するほか、エネルギーを発生させる化合物の構成成分ともなっています。また細胞のpHバランスや浸透圧を保つ働きをするなど、体内でのいろいろな重要な働きに関わっています。

β2-ミクログロブリン(β2MG)

目標値:25mg/L以下

長い間透析をしている患者さんに頻発する血液透析固有の合併症に透析アミロイドーシスがあります。β2-ミクログロブリンが排泄されなくなって血中に溜まり、やがて骨や関節に沈着することによって痛みとともに機能障害を起こす治療が難しい合併症です。
長期透析患者さん以外に透析開始時の年齢が高い患者さん、純度の低い透析液や体への適合性の低い透析膜を使っての透析で発症のリスクが高いといわれています。この合併症の原因物質のβ2-ミクログロブリンをなるべく透析で取り除くことが基本的な予防方法となります。日本透析医学会の統計調査報告では透析前のβ2-ミクログロブリンの値が高いほど生命予後が悪いことがわかっています。
β2-ミクログロブリンとは99個のアミノ酸からなる、血液の中にある蛋白質の一種です。細胞が壊れると血中の濃度が上昇します。糸球体で濾過された後、主として近位尿細管でその99.9%が再吸収され残りが尿中に排泄されます。腎臓の尿細管に障害があると再吸収できないため尿中の濃度が上がります。

Intact PTH(副甲状腺ホルモンintact)

目標値:60〜240pg/mL

血中のカルシウムが低くリンが高い状態が長く続くと副甲状腺がだんだん大きくなりホルモンを必要以上に分泌するようになります。この状態になると過剰に分泌された副甲状腺ホルモンによって骨が溶け骨折しやすくなったり、骨や関節が痛くなったりします。また骨から溶け出したカルシウムがリンと一緒になって血液の壁に付着し強い動脈硬化を引き起こしたり、血管、心臓の弁、関節などに付着し心不全・脳出血・脳梗塞・心筋梗塞などといった重大な心血管系合併症の原因になります。そのため副甲状腺ホルモンのひとつであるIntact PTH骨代謝の指標として通常3か月に1回測定します。
血中のカルシウムが低くリンが高い状態が続かないように、カルシウムが低い場合は薬(主に活性型ビタミンD製剤)で調整できますが、リンをコントロールするには透析量の増加、リン吸着薬の使用、食事での制限が必要です。
Intact PTHは副甲状腺から分泌されるホルモンのひとつです。甲状腺から分泌されるカルシトニンというホルモンやビタミンDとともに、血中や体液中のカルシウム濃度を一定に保っています。常に血中のカルシウムの値を監視していてカルシウム濃度が低下すると分泌が高まり、骨に含まれているカルシウムを取り出し腸からのカルシウムの吸収を促進することによって血中のカルシウムを増やす働きをします。

透析前HCO3-濃度

目標値:19.6〜24.6mEq/L

※上記の目標値は、週初め(前回から2日以上空けてからの透析)です。前回から中1日空きで透析を行った場合の目標値は20.8〜25.8です。

腎臓の機能が低下し酸を処理する能力が衰えると、血液が酸性に傾いた状態である代謝性アシドーシスになります。その状況把握のための重要な酸塩基平衡の指標が透析前HCO3-濃度です。血液ガス分析を測定する機会は極めて少ないため、透析前のリンナトリウムクロールの値を用いて日常の診療で使用しやすいように簡略化した推定式を用いて計算します。
目標値より低値の場合は代謝性アシドーシスや透析量の不足等を疑います。代謝性アシドーシスは軽い場合は症状がないこともありますが、通常は吐き気や嘔吐、疲労感が生じます。悪化に伴って、極度の脱力感と眠気を感じはじめ、意識がもうろうとして吐き気が強くなり、やがて血圧が下がりショック、昏睡、死に至ります。

補正カルシウム濃度

目標値:8〜9.5mg/dL

血中のカルシウムの約半分は血中の蛋白質(特にアルブミン)と結合しています。残りの半分は生理的作用を持つイオン化カルシウムです。
血液検査で測定しているのはカルシウムの総数なので、アルブミンが低値の場合はアルブミンと結合したカルシウムが減り測定結果のみでは低カルシウム血症と判断されますが、生理的作用を持つのはイオン化カルシウムだけなのでイオン化カルシウムの値が正常であれば見かけ上の低カルシウムを気にする必要はありません。
透析患者さんは食事制限や透析によってイオン化カルシウムが喪失したり、また高齢者は食事量が少ないためアルブミンが低値となることがあるため、血液検査で測定されたカルシウム値をアルブミンで補正した補正カルシウム濃度の値が用いられています。透析前の補正カルシウム値が高いほど生命予後が悪いことがわかっています。低カルシウムでは筋けいれん、つり、神経症状、不整脈など、高カルシウムでは血管の石灰化や動脈硬化の原因となります。

Non HDL-C

目標値:150mg/dL未満

※上記の目標値は、虚血性心疾患の一次予防の値です。二次予防の場合の目標値は130未満です。

メタボリックシンドローム中性脂肪が高い場合などにおいて、有用な第2の脂質代謝を示す虚血性心疾患(狭心症と心筋梗塞の総称)の指標です。総コレステロール値から善玉コレステロールのHDLコレステロール値を引いた値で表されます。
脂質異常は心血管疾患、特に心筋梗塞の原因となります。日本透析医学会の統計調査報告ではLDLコレステロールNon-HDL-Cを低下させることが有効であると考えられ、その際低栄養にならないように注意することが重要とされています。
私たちの血中のコレステロールは単独で血中に溶け込むことができないため、蛋白質と結合してリポ蛋白という形で存在しています。動脈硬化の主な原因であるLDL-C以外に、超低比重リポ蛋白(VLDL-C)や中間比重リポ蛋白(IDL-C)といった物質も動脈硬化を引き起こす作用が強いことがわかってきました。LDLコレステロール虚血性心疾患の指標にすることに変わりはありませんが、LDLコレステロールは比較的低くてもVLDL-CやIDL-Cが増加していて血管疾患を発症する人もいます。

LDLコレステロール(LDL-C)

目標値:120未満

※上記の目標値は、虚血性心疾患の一次予防の値です。二次予防の場合の目標値は100未満です。

脂質異常は心血管疾患、特に心筋梗塞の原因となります。日本透析医学会の統計調査報告ではLDLコレステロールNon-HDL-Cを低下させることが有効であると考えられ、その際低栄養にならないように注意することが重要とされています。
LDLコレステロールは肝臓でつくられたコレステロールを各臓器に運ぶ働きをしている低比重リポ蛋白のことです。「悪玉コレステロール」とも呼ばれ、細胞内に取り込まれなかった余分なコレステロールを血管に補給し虚血性心疾患を引き起こす原因となります。対して血管の壁などに余計に付着しているコレステロールを回収する働きをするHDLコレステロールは、「善玉コレステロール」と呼ばれています。

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基礎体重が適正かどうかわかる

基礎体重(ドライウェイト)は患者ごと、季節ごとに変動し、例えば食事量の減少などによって体重が減少しているにもかかわらずドライウェイトをそのままにしておくと、体内に水が溜まった状態となって心不全などの原因となります。そのためドライウェイトの増減と水分量による増減とを区別することが必要なほか、月に一度はドライウェイトの見直しを行う必要があるとされています。 心胸比(CTR)、透析前の血圧、透析中の血圧低下、尿量、透析前後の血液濃縮率(PWI)、心臓超音波などのデータから推定予測します。

血液濃縮率(PWI)

目標値:2〜4

除水量ドライウェイトに対してどの位の割合になっているか、つまり体重変化率と血液濃縮の割合を比較して判定する方法で、透析前後の蛋白質(TP)の濃度変化と透析前後の体重変化率で求めます。ドライウェイトが適切かどうか判断するための指標です。他の指標と総合的に判断する必要がありますが、通常マイナスの値であった場合はドライウェイトを下げること、高値の場合はドライウェイトを上げることを検討します。
適正なドライウェイトとは、一般的に「浮腫がなく血圧が正常、心胸郭比(CTR)50%以下で、それ以下の体液量では透析中に血圧を維持できない限界の体重」とされていますが、その設定方法に明確なものはなく非常に曖昧です。また、透析生活を通じて一定ではなく必ず変動するものです。
ドライウェイトを算出する一定の公式はなく、患者さんの体調、血圧などの臨床所見、心胸比(CTR)などの補助的な検査を参考に推定予測します。そのひとつとして血液濃縮率(PWI)が有用であることがわかっています。

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参考

  • 日本透析医学会(2009年12月31日現在)『わが国の慢性透析療法の現況』
  • 日本透析医学会(2008年12月31日現在)『わが国の慢性透析療法の現況』
  • 日本透析医学会(2007年12月31日現在)『わが国の慢性透析療法の現況』
  • 日本透析医学会『維持血液透析患者において,血清アルブミン4.0g/dL未満は長期的な予後不良因子である 透析会誌42(3):218〜221,200』
  • 日本透析医学会『維持透析患者の重炭酸イオン濃度の推定式 — 透析会誌43(11):919〜923,2010』
  • 日本透析医学会『血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン — 透析会誌44(5):337〜425,2011』
  • 日本透析医学会『副甲状腺機能の管理と骨代謝の評価 — 日本透析医学会雑誌39巻10号2006』
  • 日本透析医学会『慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン — 透析会誌45(4):301〜356,2012』
  • 日本透析医学会『慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン — 透析会誌41(10):661〜716,2008』
  • 日本透析医学会統計調査委員会、統計解析小委員会『血液透析条件・透析量と生命予後 ― 日本透析医学会の統計調査結果から ― 透析会誌 43 : 551-559, 2010』
  • 日本透析学会『除水による蛋白濃縮度の意義の検討 — 透析会誌32(7):1071〜1077, 1999』
  • 日本腎臓学会『CKD診療ガイド2012』
  • 日本腎臓学会『日本腎臓学会誌49巻8号 慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版』
  • 日本人工臓器学会『在宅血液透析の形態:現状と課題』人工臓器39巻1号 2010
  • 医歯薬出版株式会社『腎不全・透析患者の栄養障害とアセスメント — 臨床栄養 Vol.115 No.4 2009.9(臨時増刊号)』
  • 日本メディカルセンター(2007)『透析患者の検査値の読み方 改訂2版』
  • 日本メディカルセンター『腎不全医療における栄養管理の基礎知識 — 臨床透析2007 Vol23 No.13』
  • 北岡建樹(2012)『透析用語百科事典』永井書店
  • 鈴木 一之(2009)『透析医が透析患者になってわかったしっかり透析のヒケツ』メディカ出版

参考サイト

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