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血圧と血糖の先にある臓器 ― 腎臓はあなたの毎日を覚えています:慢性腎臓病(CKD)と健康の話
2026.2.10
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もくじ
1. 時代とともに変わってきた「健康」の意味
健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。
― 世界保健機関(WHO)憲章
健康で穏やかに生きたい、という願いは誰にとっても自然なものです。WHOが示したこの定義は、健康を単なる「病気がない状態」ではなく、生き方全体の豊かさとして描いた理想です。ただ現実の私たちは、加齢で体は変化し、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を抱えながら生活している人も少なくありません。もしこの理想だけを基準にするなら、多くの人は最初から「健康ではない」ということにされてしまいます。
そのため現代では、健康を「完璧な状態」としてではなく、「今の体と環境の中で日常を営めていること」と捉える考え方が広がっています。
人は誰でも、健康と不調のあいだを行き来しながら生きています。大切なのは病気をゼロにすることよりも、変化する体と折り合いをつけながら日常を営めているかどうかです。高血圧や糖尿病があっても、それを理解し、つきあいながら生活できているなら、それも十分に健康の一つのかたちです。
巻末に「健康を考えるためのキーワード集」をまとめました。 あなた自身の「健康ってなんだろう」を見つめるヒントとして、気軽にのぞいてみてください。
2. 腎臓は「健康」の積み重ねが表れやすい
健康は目に見えない概念のようでいて、体の中にはその積み重ねを正直に映し出す場所があります。その代表が腎臓です。
腎臓に変化があっても、痛みや強い症状としてすぐに現れるわけではありません。だからこそ、日々の生活や慢性疾患の影響が、静かに長い時間をかけて記録されていく臓器でもあります。腎臓を知ることは、「これまでの生活・健康」を読み解き、「これからの生活・健康」を考える手がかりになります。
3. 腎臓が生活の影響を受けやすい理由
腎臓は、体の中でも特に血管が密集した構造をもっています。この構造が高性能なフィルターとして機能し、血液をろ過して余分な水分や老廃物を取り除きながら、体のバランスを整えています。まさに「血管の塊(かたまり)」とも言える臓器なのです。
このような特徴があるため、血圧や血糖の状態が腎臓に直接影響を与えます。高血圧が続くと、細い血管に常に強い圧力がかかり、血管は少しずつ傷ついていきます。また、高血糖の状態が続くと、血管の壁が厚く硬くなるなどして、フィルターとしての機能が低下してしまいます。これらのダメージは、長い時間をかけて確実に積み重なっていきます。
腎臓は「沈黙の臓器」と言われています。機能がかなり低下するまで自覚症状がほとんど現れないため、生活習慣や持病の影響が“気づかないうちに進行してしまう”臓器でもあるのです。
4. 高血圧・糖尿病は、腎臓と関連が深い病気です
高血圧と糖尿病は、慢性腎臓病(CKD)の大きな原因です。どちらも血管に負担をかけ続ける病気であり、その影響をもっとも受けやすい場所の一つが腎臓だからです。
腎臓の機能は、いきなり落ちるわけではありません。少しずつ機能が落ち、その状態が長く続くことをCKDと呼びます。CKDは特別な人だけがなる病気ではなく、高血圧や糖尿病と共に生きる多くの人にとって、現実的なリスクです。しかし同時に、早い段階で気づき、生活や治療を整えることで進行を緩やかにできる病気でもあります。だからこそ腎臓を知ることは、「怖がる」ためではなく、「これからを守る」ための知識です。
5. 高血圧・糖尿病をもっている場合、腎臓についてどう気をつければいいの?
高血圧や糖尿病があるからといって、将来必ず腎臓が悪くなるわけではありません。大切なのは「すでにリスクがある」という事実を知ったうえで、日々の選択を少し整えることです。腎臓のケアは特別なことではなく、血圧や血糖を整える日々の管理と重なっています。
まず基本になるのは、血圧と血糖のコントロールです。これは腎臓のためだけでなく、心臓や血管、全身を守る土台でもあります。通院を続け、薬を自己判断でやめないこと。検査の数値を単なる点数としてではなく、体からのメッセージとして受け取ることが重要です。
次に、毎日の生活習慣です。塩分の摂りすぎを控えること、適度に体を動かすこと、睡眠を確保すること、禁煙すること。どれも聞き慣れた内容かもしれませんが、すべて腎臓を保つことにつながります。一度に完璧を目指す必要はありません。できるところから少しずつ整えていくことが、長い目で見ればもっとも確実な方法です。
そしてもう一つ大切なのが、定期的な腎臓チェックです。血液検査や尿検査の「数値」は、腎臓の状態を早い段階で教えてくれます。症状がないうちに気づけることが、CKD対策では何よりの強みです。
6. もしCKDと診断されたら
CKDは気づかないうちに進行しやすいのが特徴です。しかしその一方で、日々の暮らしの工夫と適切な通院によって、腎臓の機能を長く保つことは十分に可能です。たとえCKDと診断されても、早めに情報を集め、相談できる場所を整えておくことで、安心して次の一歩を踏み出すことができます。
必要以上に怖がらず、「焦らず、慌てず、放置せず」の姿勢が大切です。
付録:健康を考えるためのキーワード集
健康と自分の内面
- 健康生成論(Salutogenesis)
- 健康は育てていける
病気の原因を探るのではなく、健康をつくり出す要因に目を向けて、それを育てること。 - ウェルビーイング
- 自分らしく満たされて生きる
単に病気がない状態ではなく、自分らしく満たされて暮らせている状態のこと。慢性疾患があってもウェルビーイングは成立する。 - QOL(生活の質)
- どんなふうに生きられているか
ただ生きながらえているということだけでなく、日々をどう過ごせているかを大切にする考え方。 - レジリエンス
- 折れない心の育て方
困難や病気に直面しても、適応して生きる力。回復と調整のプロセス。 - 一病息災
- 病気が教えてくれる健康
「無病息災」に対し、1つくらい病気があった方が、より健康を意識して生活を整えるため健康でいられる、という考え方。 - アダプテーション
- 変化に合わせて生き方を調整する
体の変化に合わせて暮らし方を「適応」させること。慢性疾患と共に生きるうえで大切な知恵。
健康と自分の行動
- セルフマネジメント
- 自分の体を自分で守る力
日常の中で、自分の健康のために服薬・食事・運動・通院などを整えて管理すること。 - ヘルスリテラシー
- 健康情報を使いこなす力
健康や医療に関する正しい情報を入手し、評価・理解して活用する能力のこと。 - シェアード・ディシジョン・メイキング(共同意思決定)
- 医療は一緒に決める
治療は医療者任せではなく、納得できる医療につながるように、本人と医療者が話し合って選ぶこと。 - ナラティブ・アプローチ
- 病気も人生の物語の一部
病気を数値などの科学的根拠や客観的な証拠だけでなく、その人の主観的な経験の語りや物語として理解する視点。 - ICF(国際生活機能分類)
- 健康状況を見える化して役立てる
病名だけでなく、「生活のしやすさ」や「できること」に注目して健康を考えるための共通の枠組み。
健康と自分を取り巻く環境
- ソーシャル・キャピタル
- 人とのつながりが薬になる
信頼できる人との関係や支え合いが、健康を守る力になるという考え方。 - ピアサポート
- 同じ経験をした仲間の支え
病気・障害など、同じような体験や悩みをもつ人同士の助け合い。孤立を防ぎ、共感や安心を生む。 - ホリスティックヘルス
- 体・心・暮らしはつながっている
健康を身体面だけではなく、精神的、社会的な側面まで含めて包括的に見る考え方。 - バイオ・サイコ・ソーシャルモデル
- 病気は体だけの問題じゃない
健康は、身体・心・社会の影響が重なって決まるという考え方。治療も生活も、全体で支えるという視点。 - サステナビリティ
- 無理なく続けられる健康
一時的な頑張りではなく、長く続けられる生活こそが体を守るという考え方。
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